【第13回 タムロン鉄道風景コンテスト特別企画 Vol.2】鉄道フォトライター 矢野 直美氏が鉄道の旅で心に残った風景写真をご紹介

タムロン鉄道風景コンテスト 私の好きな鉄道風景ベストショット」の第1回目から、広田 尚敬氏とともに審査員として参加していただいている、「元祖・鉄子」の愛称でお馴染みの、鉄道フォトライター 矢野 直美氏に鉄道の旅で心に残った風景写真をご紹介いただきました。

みなさま、こんにちは!フォトライターの矢野 直美です。今年で13回目を迎えます「第13回 タムロン鉄道風景コンテスト 私の好きな鉄道風景ベストショット」。もうご応募いただきましたでしょうか。それとも、まさに今、作品選びや撮影をされているころでしょうか。今年はなかなか外出がままならない日が続いています。だからこそ逆に、身近な風景をかけがえのないものに感じたり、久しぶりの外出で出会った光景に胸が熱くなったりしますね。

鉄道で旅をすることが好きなので、私は旅の間ずっと車窓に見入っています。この写真は自分が乗っている車両の影が稲を刈り取った後の田んぼに映っている様を車窓から撮りました。太陽の光が横から延びる朝夕の時間は、光と影が面白い光景を作ってくれます。


真冬の、雪がしんしん降り続ける日に鉄道旅をしたときの車窓です。全てが白く染まる雪景色では、「雪の反射光」とでもいうのでしょうか、大地のレフ効果で、不思議な明るさや光を感じます。


晴天の夕方、海に近い駅に降り立ち、波の音と潮風に包まれました。列車から下車したときにちょうど駅名標に夕日があたり、空には月が浮かんでいました。ただそれだけの写真なのですが、ずっと記憶に残り続ける、私の大好きな鉄道風景のひとつになっています。


妹のように思っている女性と鉄道旅したときの大好きな一枚です。Web上では分かりづらいかもしれませんが、電車の窓の向こうに彼女の姿が見えます。「タムロン鉄道風景コンテスト」は、広田尚敬先生と私が二日間にわたってみなさまの作品のすべてを手にとって見ています。「細部に神は宿る」という言葉がありますが、この写真のように主役が分かりづらい作品や写真の隅っこに感じる季節なども見逃さないよう、「細部に気持ちが宿る」という思いで審査しています。

こちらも上の女性です。満面の笑顔を撮りたい記念撮影以外では、旅先で相手に伝えるのはいつも「普通でいてね」です。「こうして欲しい、ああして欲しい」というお願いはほとんどしません。好きな人や親しい人を、自然に、素敵に撮りたいと思います。ただ、シャッターを切りながら「可愛いなぁ」「いいねぇ」というような独り言を言っているといつも指摘されます。それはとても正直な気持ちで、人を撮るときに大切にしていることです。好きな人や親しい人はもちろん、モデルさんの撮影のときも同じです。シャッターを切るときは「素敵、素敵」という相手への思いを込めています。


かつてそこに鉄道があったということを伝えてくれる廃線跡。遊歩道やトレッキングコースに利用されている場所も存在します。鉄道表示には時に、可愛いらしいと感じるモチーフがあります。


こちらも廃線跡です。「悲別駅」はテレビドラマの舞台になったときの駅名で、その時の看板がそのまま残っているのでしょうか?実際は「上砂川駅」。「上砂川」と隣駅の「東鶉」は個人的にとても思い入れのある駅名で、シャッターを押す瞬間も、こうして写真を見ているときも、駅名を見ているのか、駅のたたずまいを感じているのか、それとも、記憶をたどっているのか不思議な気持ちになります。

線路が見えないくらいの積雪の中も、北海道のディーゼルカーは力強く走ります。撮影場所はJR北海道・札沼線「豊ヶ岡駅」。撮影時は現役でしたが、2020年春、学園都市線の廃止区間に含まれて鉄道駅としての役割を終えました。


最近はカメラ機能でさまざまな効果を楽しめるようになりました。この写真は「トイフォト」効果を使っています。さまざまな表現機能を使った個性的な鉄道風景も面白いですよね。

まるで模型のような写真になる「ジオラマ」効果を使っています。写真は、正面から見るか、横から見るか、もちろん後ろや斜めなど見る角度によって違います。時間も季節も天気はもちろん、このような効果を使えると、ますます表現方法が増えますね。

写真は、撮った人の思いと同じ数だけの作品が生まれます。そして「タムロン鉄道風景コンテスト」の魅力はなんといってもとても自由なところです。毎回、新しさを感じる作品や新鮮な作品が入賞しています。今年も、たくさんの皆さまの作品に出会えることを心から楽しみにしております!

第13回タムロン鉄道風景コンテスト開催中!

今年もタムロン鉄道風景コンテストの応募がスタートしております。
応募につきましては第13回タムロン鉄道風景コンテスト特設サイトをご覧ください。

TAMRON公式Webサイト

写真家プロフィール

矢野 直美 Naomi Yano

国内外を旅しながら写真を撮り、文章をつづる「フォトライター」。鉄道旅をこよなく愛することから「元祖・鉄子」の愛称でも呼ばれる。写真作品とエッセイを発表しながら、さまざまなメディアに登場。講演会やフォトコンテストの審査員も務める。著書に「汽車通学」(KADOKAWA/メディアファクトリー)、「ダイヤに輝く鉄おとめ」(JTBパブリッシング)、「おんなひとりの鉄道旅」「矢野直美の駅弁旅」(小学館)、「鉄子の旅写真日記」(CCCメディアハウス)など多数。

この写真家の記事一覧を見る

タムロン鉄道風景コンテスト過去の受賞作品

第13回鉄道風景コンテスト特別企画

第12回 鉄道風景コンテスト特別企画

第11回 鉄道風景コンテスト特別企画

TAMRON MAGの「鉄道」レンズインプレッション記事はこちら