【第12回 タムロン鉄道風景コンテスト特別企画 Vol.2】フォトライター矢野 直美氏が伝授する「鉄道旅写真を楽しむヒント」

「タムロン鉄道風景コンテスト 私の好きな鉄道風景ベストショット」の第1回目から、広田 尚敬氏とともに審査員として参加して頂いている、「元祖・鉄子」の愛称で親しまれている、鉄道フォトライター 矢野 直美氏に鉄道旅写真を楽しむヒントを伝授していただきました。

みなさん、こんにちは。フォトライター矢野直美です。タムロン鉄道風景コンテスト、今年の〆切りが迫ってきております。もう作品をご応募いただけましたでしょうか。毎年たくさんの素敵な作品に出会えて、広田先生とご一緒に、本当に胸をときめかせながら審査をさせていただいています。

今回は私が鉄道旅で撮影をする中で、皆さんの作品づくりのヒントになると思えることを
ご紹介いたします。真夏のこの時期、窓ガラスを活用したり、曇りや雨の日に撮影することで、幻想的でしっとりと表現した写真に、少しばかりの「涼」を感じて下さい。

窓ガラスのフィルター効果

実際に鉄道旅をしながらシャッターを切っていくのが私の撮影スタイルです。季節ごとに移りゆく車窓、駅での情景、ホームでの時間など、旅で出会った風景を心のままに撮っています。列車にゆられながら窓の外を眺めていることがなによりも好きなので、私の作品にはとても車窓が多いです。

その中で今回は、窓ガラスが幻想的な雰囲気に仕立てるフィルターのような効果となった写真を紹介します。

こちらは駅舎に明かりが灯り始める夕暮れ時。列車が発車する瞬間、何度も訪れている大好きな駅に「またね」という気持ちでシャッターを切っていました。

夜の手前の、町の明かりが輝き始める時間も好きです。窓ガラスがフィルターとなって、少し不思議な色や光が交ざるのも車窓写真ならではの面白さです。

季節の風物詩と、画面比率

昔からヒマワリが大好きで、夏にはよく撮影モチーフになってもらいます。季節ごとの風物詩は撮っていて楽しい対象ですね。

こちらは画面比率1:1に変えて撮っています。最近のカメラは撮影時に画面比率を気軽に変えられるので、今、自分が見ている風景をどの画面比率で表現したいかを考えるのも楽しいです。

そして草花や木々などをモチーフにするときは決して畑やガーデンの中には立ち入らず、また、列車の安全走行の妨げになることもないよう、ルールを守って撮影をしてください。

新幹線とその沿線風景を入れ込みたかったので、こちらは16:9で撮影しています。高層ビルからの俯瞰です。俯瞰や横から前からと、撮影ポジションによっても列車の表情は変わりますね。

このように画面比率を変えて、旅写真を撮影してみると新鮮な気持ちで被写体と向き合えます。皆さんも、挑戦してみてください。

青空は嬉しくて、曇りや雨も面白い

撮影で晴れてくれると、空も大地もすべてがキラキラと輝き、とても嬉しいですよね。私はありがたいことに晴れ女なのですが、それでも年に1、2回は旅先で曇天や雨にあいます。

雨が降り続けていた日の、一瞬だけ雨が止んだ時間に撮りました。曇天や霧であっても光が失われるということはなく、霧や雲を通してのやわらかい光線も素敵に思えます。

雨の日のホームで撮りました。雨の日は光がさまざまに乱反射する楽しさがありますね。

曇りや雨の日も、普段とは違う景色を見せてくれて趣を感じることができます。
天候がすぐれていない日こそ、不思議な世界に迷い込んだような特別な写真を撮ることができます。
晴れも、曇りも、雨の日も、素敵な鉄道旅写真を撮影して下さいね。

タムロン鉄道風景コンテストの魅力は「自由さ」

今年で第12回目となりますタムロン鉄道風景コンテスト。その大きな特徴のひとつに、小・中・高校生の部と一般の部が分かれていることがあります。昨年の小・中・高校生の部の大賞はなんと6才の男の子でした! さらにユーモアフォト賞、車輌写真賞、タムロン賞といった賞も設けられています。

これはいつもお話しさせていただくことですが、鉄道写真にルールはあっても、これで良いという正解はありません。だから心のままであり、自由です。その「自由さ」を大いに楽しめるのが、タムロン鉄道風景コンテストの一番の魅力です。撮影に利用するカメラやレンズを問いません。車両が写っていなくても構いません。鉄道遊具や廃線跡など、撮影対象も自由。鉄道とその周辺が映し出された写真であれば、風景、スナップ問わず、応募することができます。

テーマはたった一つ「あなたの好きな鉄道風景」です。

今年も、みなさまの目に映った「私の好きな鉄道風景」に出会えることをとても楽しみにしています!

第12回タムロン鉄道風景コンテスト開催中!

今年もタムロン鉄道風景コンテストの応募がスタートしております。
応募につきましては第12回タムロン鉄道風景コンテスト特設サイトをご覧ください。

第12回タムロン鉄道風景コンテスト

写真家プロフィール

矢野 直美 Naomi Yano

国内外を旅しながら写真を撮り、文章をつづる「フォト・ライター」。鉄道旅をこよなく愛することから「元祖・鉄子」の愛称でも呼ばれる。写真作品とエッセイを発表しながら、さまざまなメディアに登場。講演会やフォトコンテストの審査員も務める。著書に「汽車通学」(KADOKAWA/メディアファクトリー)、「ダイヤに輝く鉄おとめ」(JTBパブリッシング)、「おんなひとりの鉄道旅」「矢野直美の駅弁旅」(小学館)、「鉄子の旅写真日記」(CCCメディアハウス)など多数。

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