【第11回タムロン鉄道風景コンテスト連載企画 Vol.2】鉄道風景写真 作品作りの奥義直伝 by 広田尚敬

連載企画の第2回目は矢野直美さんと同じく、タムロン鉄道風景コンテスト第1回目から審査員として参加いただいている、鉄道写真家の先駆者、広田尚敬氏に、鉄道写真撮影の奥義を作品と一緒に語って頂いています。ぜひ、ご覧ください。

皆さんこんにちは!鉄道写真家の広田尚敬です。
今年のタムロン鉄道風景コンテストに応募する写真、決まりましたか。

毎年迷うかもしれませんが、自分が一番気に入った写真を応募しましょう。他人の意見は愛情あるアドバイスと受け止め、最終的には自分で判断することです。悩み、応募作決定、審査発表、すべての展示写真をじっくり眺める、という過程を何回か経験することで、次第に実力が身につくのです。

さて、皆さんの鉄道写真撮影の参考になるよう、私が鉄道を撮影する際の、信念や奥義をご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

奥義1:被写体に対する「思い」こそが、写真のベース


「化粧」

野中に使い古された貨車が1台放置されていました。実際は貨車の博物館の屋外展示ですが、そのように演出されていたようです。およそ貨車は生まれたときから黒一色で、文字通り真っ黒になって日夜働き通してきました。私はねぎらいの気持ちを添えて、周囲に咲いていた菜の花の黄色で化粧を施しました。望遠レンズを用い、花を手前に入れてぼかしたのです。写真はやっぱり被写体に対する「思い」こそが、ベースと心得ています。

奥義2:写真は「構図」より「思い」が大事


「立夏のころ」


「さくら」

「立夏のころ」はあるローカル線で撮影しました。線路のある丘を眺めると、雲が心地よく流れます。その大自然を大きく取り入れることで、自然に対する敬意、自然と融合する鉄道を画面構成しています。よく7:3の構図、などということを耳にしますが、写真は構図より思いが大事です。

「さくら」も同様です。きらきら光る海を大きく取り入れることで、鉄道の美しさを強調しています。今から半世紀前、1960年代の光景ですが、いわゆる構図にはとらわれていません。思いを優先しています。この2枚の写真から、構図より大事なものは何かを学ぶことができると思います。

この作品は私の名作の一枚です。

奥義3:鉄道写真は「瞬間キャッチ」が大事

いずれも高原で見かけた同じ踏切です。上の写真は数分後に現れるディーゼルカーをどう扱うか悩み始めたときの写真です。列車は右手からやってきます。見えた瞬間を狙って構成するか、去っていく後ろを狙うか、考え中でした。

踏切がなり始めました。赤いシグナルが点滅します。では、踏み切りを入れ、去りゆくところを捉えようとカメラを構えようとしたとき、めったに通ることのない車がやってきました(下の写真)。さあどうしよう、ためらいの中で数歩移動し、瞬間的にディーゼルカーは頭狙いに切り替えました。しかし残念、カメラ位置をもう少し下げるべきでした。踏み切りのクロスの表示が分かりにくいし、右手にやってきたディーゼルカーの正面も、木の葉で隠れ気味です。鉄道写真は、瞬間キャッチがいかに大事かということですね。

奥義4:予想をしていない情景をまとめる「柔軟」な能力


「霞む朝」


「春の園」

関東地方のあるローカル沿線で撮影しました。撮りたいものを頭に描いて出かけるのも大事ですが、出かけた先の状況を「いただく」ほうが適しているように感じます。上の写真「霞む朝」は朝のかすみ、下の写真「春の園」はこれも予期しなかった川辺の菜の花です。予想してない情景をまとめる「柔軟」な能力が、写真には必要です。

奥義5:写真は「配慮」も肝心


「通学時代」

人物をあしらった写真です。近頃は個人情報などで人にカメラを向けることは難しいので、失礼にならない範囲で撮影しています。上の写真、「通学時代」の定期券は、お名前などの情報が出てはなりませんので、昔の私のものにさし変えさせてもらいました。写真は「配慮」も肝心です。

奥義6:写真は「悪天候」といわれるほうが、良かったりして…


「片隅」


秋薇雨(あきついり)


「遺構」

森林軌道の廃線跡です。近頃は廃線跡を訪ね歩く人も増えました。数人で訪れると楽しいカメラハイクを堪能できます。撮影地は雨でした。そのため普段より情緒的なシーンに出会えたと思います。写真は「悪天候」といわれるほうが、良かったりして・・・。

奥義7:写真は 「既成概念」にとらわれない事も大事


「車窓の斜光」

列車内からの撮影です。一昔前までは車窓からの写真は鉄道写真ではないと思う人が多かったようですが、近頃はそのようなこともありません。積極的に撮影することを薦めます。
写真は「既成概念」にとらわれないことも大事です。

奥義8:「列車のいない鉄道風景」に、積極的にカメラを向ける


「夢の中」

踏み切りで列車が来るのを待っているときに撮影しました。ローカル線は列車本数が少ないので退屈するという人もいますがとんでもない。こうした情景に目を向けるチャンスが多いので、むしろ忙しいくらいです。皆さんもローカル線の「列車のいない鉄道風景」に、積極的にカメラを向けてください。楽しめますよ!

ご紹介頂いた奥義を参考に、この夏、タムロン第11回鉄道風景コンテストに挑戦してみてはいかがでしょうか。皆様からのご応募、お待ちしております。

第11回タムロン「鉄道風景コンテスト」:広田 尚敬氏からのメッセージ

第11回タムロン鉄道風景コンテスト開催中!

今年もタムロン鉄道風景コンテストの応募がスタートしております。
応募につきましては第11回タムロン鉄道風景コンテスト特設サイトをご覧ください。

第11回タムロン鉄道風景コンテスト

写真家プロフィール

広田 尚敬 Naotaka Hirota

1935年東京生まれ。中学時代より鉄道写真を始め、鉄道ファン同士の交流を深める。1960年よりフリーランスの写真家として活動。初個展「蒸気機関車たち」で独自の表現世界を社会にアピール。日本鉄道写真作家協会初代会長をつとめ、日本の鉄道写真界を牽引。
著作
「永遠の蒸気機関車」(日本交通公社)
「動止フォトグラフ 国鉄主要車両編」(交友社)
「ローカル線を歩く-小さな四季の旅」(小学館)など多数

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