オールドマクロレンズを楽しもう!自然写真家 石井 孝親が伝説のSP 90mm F/2.5で撮るネイチャー写真

今回の企画で使用したタムロンの初代マクロレンズSP 90mm F/2.5(Model 52B)を購入したのは、私が写真専門学校の学生だった頃なので、30年くらい前の代物となり既にオールドレンズの仲間です。久しぶりにSP 90mm F/2.5を使用してみて、まだデジタル一眼レフカメラが登場していないフィルムカメラ時代のレンズなのですが、デジタル一眼レフカメラに使用してみてもボケ味、解像感とも素晴らしく、タムロンの技術力の高さを再確認しました。

私のメインマクロレンズはタムロン90mmマクロで、初代から最新まで全モデルを使ってきましたが、ボケ味はとろけるように美しく、ピント面はシャープに解像します。温かみを感じる描写も使い続けている理由です。今回のSP 90mm F/2.5はAFもなくピントはMF。手ブレ補正もありませんから、カメラの視度補正、カメラの構え方など写真の基本を再確認して撮影しました。掲載作品は全て手持ち撮影です。

それでは、伝説のSP 90mm F/2.5で捉えた足元の小さな自然の世界をお楽しみください!

※SP 90mm F/2.5(Model 52B)は現在は販売終了しております。

オールドマクロレンズで花をファンタジックに写す

市販のマウントアダプターを使用すれば、各社のデジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラに伝統の初代SP 90mm F/2.5を装着して撮影が楽しめます。30年前くらい前のレンズなので、フィルムカメラ用のレンズコーティングなのと、若干レンズにくもりが発生し、極端な逆光には弱く画面内にフレアが発生しますが、フレアを意図的に画面内に入れたふんわり柔らかな描写も楽しめますし、フレアをカットして引き締まった描写も撮影可能です。伝統的な「とろけるような柔らかなボケ」を生かすには「開放」で撮影することが大切です。


タイトル:雨上がりの朝
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:400

美しい花の写真を撮るには光を積極的に生かして撮影することが大切です。雨上がりの朝アガパンサスを開放で狙い、背景の花の柔らかでとろけるようなボケと、雫の玉ボケを控えめにアクセントとして入れました。最新の90mmマクロにも受け継ぐ、伝統的で温かみのある柔らかな描写です。


タイトル:目覚め
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:200

鍵穴から覗いている不思議の国のアリスの世界みたいに、上下の葉と葉の間からハスを覗いているように撮影しました。前ボケ、後ボケを上手く生かせばソフトフォーカス調に写すことは可能です。もちろん最大限にボケを生かす為に絞りは開放に合わせてあります。


タイトル:光のファンタジー
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:400

アジサイの右下に大胆に太陽を配置して撮影しました。極端な逆光なので画面内にフレアが発生していますが、フレアを逆利用してファンタジックに描写しました。基本としてフレアはカットするものなのですが、基本をマスターしたら基本を破ることで新鮮な写真を撮ることが可能です。

絞りを開放にセットしてリズミカルな玉ボケを生かす

昔のレンズなので「円形絞り」は搭載されていません。1~2段絞って撮影しても絞り羽根の形状が影響してしまい、カクカクしてしまいます。玉ボケを生かすには「開放」にセットすることが重要です。

このレンズをフルサイズ機で開放撮影すると、画面四隅の玉ボケは口径食の影響で若干ラグビーボール状のいびつな玉ボケになってしまいます。フルサイズ機で使用する場合は玉ボケを画面中央付近に配置すれば丸く写すことが可能です。APS-C機やマイクロフォーサーズ機で使えば写る範囲はレンズの中央付近を使用するので、画面四隅の玉ボケも開放撮影で丸くなります。

このレンズは35mmフィルム用のレンズなので、APS-C機やマイクロフォーサーズ機に使うとボケや被写界深度も違うので、当時とは異なった表現を楽しむことが可能です。


タイトル:春の妖精
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:400

雨上がりの朝、スノードロップに付いた雫が逆光線でキラキラ輝いていました。ファインダーを覗くと無数の玉ボケが浮かび上がりワクワクドキドキ興奮しながら撮影を楽しみました。右下の大きな玉ボケに虹色が出る微妙なカメラアングルを探して撮影しました。雨の雫がプリズム効果で条件が良いと虹色の玉ボケが撮影可能です。


タイトル:宝石の輝き
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/8000秒 ISO感度:400

ハスの葉の上の雫にカメラを向けました。初代SP 90mm F/2.5で雫を撮影する時に今回発見したのですが、逆光で強い光が雫に当たっている条件で、巷で流行している3枚構成のトリプレットレンズ独特のシャボン玉みたいな玉ボケで「バブルボケ」と言いますが、このレンズも「バブルボケ」風の玉ボケが出ていることに気づきました。


タイトル:山での出会い
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:800

夏山の林床に咲くレンゲショウマを可憐に美しく撮るのはなかなか難しいのですが、薄っすらと花に光が透過するくらいで写すとコントラストが強くならず、柔らかで優しい描写が楽しめます。背景の玉ボケは気木々の間から見える空です。花と特徴的な丸いツボミを際立たせる為に意図して玉ボケと重ねて撮影しました。


タイトル:らせん階段
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:400

朝露が下りた草原で足元に1本のネジバナを見つけました。らせん階段状に咲く自然の不思議さに感動しました。ネイチャーフォトと言うと遠くに行かなければ撮れないイメージですが、身近な公園や里山でも子供のような無垢な気持ちで探せば、被写体を発見することが出来るでしょう。


タイトル:降り注ぐ玉ボケ
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:400

フジの茎に止まり休む赤トンボにカメラを向けました。背景の玉ボケは光沢のある葉が光を反射して出たもので、太陽の位置によって玉ボケの輝きに強弱が出ます。玉ボケの輝きを見ながら玉ボケの輪郭が強く美しく輝くまで待ってシャッターを切りました。良い写真を撮るには風景撮影と同じでマクロ撮影でも光を見ながら待って撮ることも大切です。

絞って被写体をシャープに描写する

「マクロレンズ=開放撮影」の図式では何時も同じような写真ばかりになってしまうでしょう。絞って被写体を生態的に撮影したり、ディテールを強調することも可能です。開放撮影の柔らかな描写も魅力ですが、絞って被写体の質感を生かす撮影もマクロ撮影の醍醐味です。

ただし、ただ絞れば良いというものでもなく、あまり絞り過ぎると絞り込みボケ「回折現象」が出てしまうので、絞り値の設定はカメラの液晶で被写界深度と画質を見ながら決定しましょう。殆どのレンズに当てはまるのですが、開放から2~3段絞ったところが一番画質が良くなります。尚、絞ればシャッタースピードも遅くなりブレる可能性も高くなるので、ISO感度を上げたり、画質最優先なら最低感度で三脚を使用しましょう。


タイトル:夏の日
焦点距離:90mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:1600

満開のヒマワリに訪れるミツバチの飛翔を狙うためにISO感度を1600に設定して、ミツバチとシベをシャープに描写する為にF/8まで絞り込んで撮影しました。絞ることで背景のヒマワリの輪郭も生かすことが出来ました。ホバーリングするミツバチにカメラを前後してピントを合わせ、合った瞬間にシャッターを切っています。黄色のヒマワリと青空を生かす為に斜光線で狙いました。


タイトル:光のいたずら
焦点距離:90mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:200

良い花の写真を撮るには逆光で撮るのが一番です。花びら、葉に光が透過するので美しい写真が撮れます。この作品は大きな葉に咲き始めたハスと茎が透けて見える面白さに着眼しました。葉の中心から放射状に広がる葉脈のバランスも見ながらフレーミングを決めています。ピント合わせばかりに集中するとフレーミングがおろそかになるので、ピント合わせとフレーミングは同時に行います。


タイトル:かくれんぼ
焦点距離:90mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:400

桑の葉にくっきりと影を落とすカメムシを発見しました。影とカメラが斜めになると絞っても影がシャープに写らないので、影とカメラが平行になるように細心の注意をはらいながら撮影しました。画面中央下に入る光の線は輝くクモの糸で、糸が風で揺れる瞬間を待って撮影しています。

小さな生き物を生き生きと写す

昆虫やカエルなどの小さな生き物を写す場合、ドアップで撮影すると虫好きにはたまりませんが、脚や腹部が拡大されて見えるので、小さめに画面内に配置して光を生かし、花や朝露等と対比させてフレーミングすることが重要です。生き物のピントは目に合わせますが、体がボケすぎると不自然に見えるので、虫とカメラが平行になるように撮影すると目と体にもピントを合わせることが可能です。例えば蝶は冷えた体を暖める為に朝に日向ぼっこするのですが、被写体の生態を知ることも良い写真を撮る為に必要です。マクロレンズを片手に小さな生き物たちの神秘と、不思議の世界を是非覗いて見てください。


タイトル:日向ぼっこ
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:400

草に降りた朝露を撮影していたら、ぱっとシジミチョウが朝露の付いた草の上に舞い降りました。千載一遇のチャンスを逃がすわけにはゆきません。息を殺しピントとフレーミングに集中して撮影しました。目のある生物は基本的には目線の前方に空間を多く入れることで、息苦しさを感じない空間美を生かしたフレーミングで撮影することが出来ます。


タイトル:梅雨の頃
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:800

ツユムシに似たクダマキモドキの仲間の幼虫がアジサイの花の上で休んでいました。虫の体とカメラを平行にして撮影するのがピントを合わせるコツで、ピントは点ではなく面で合います。敏感な虫なので急な動きは禁物です。ゆっくりと近づき、手ブレを防ぐ為にISO感度800で撮影しました。


タイトル:花から花へ
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/8000秒 ISO感度:800

足元から「ブーン、ブーン」と羽音が聞こえるので草原でしゃがんで見ると、ユウゲショウにミツバチが訪れていました。低速シャッターだとミツバチの羽根はブレて消え、見えなくなってしまうので、1/8000秒で撮る為にISO感度800にセットしました。この作品では左側の花に置きピンしてハチの姿が見えてからシャッターを連射しました。偶然ですがカメラと平行にミツバチが飛んできてくれたので、ジャスピンで撮ることが出来ました。


タイトル:一休み
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:400

以前、赤トンボの仲間がツユクサを食べている所を見たことがあるので、今回も期待したのですが、葉の上で気持ちよさそうに休んでいました。基本的には目線の方向に空間を入れるのですが、この作品の場合はお互いがそっぽを向いているような感じに斜めに対比させて撮影しました。


タイトル:獲物を待つ
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:200

可愛らしい小さなアマガエルですが、隠れて獲物のハチやチョウがヒマワリに訪れるのをじっと気配を消して待っていました。人間がヒマワリ畑で記念写真などを撮って楽しんでいる裏側では弱肉強食の世界が繰り広げられています。ヒマワリ畑に来ている人たちの中で何人が気づいているでしょうか?マクロレンズを手に入れると、今まで気づかなかった自然の営みが見えてきます。


タイトル:一瞬の輝き
焦点距離:90mm 絞り:F/2.5 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:400

無造作に張られたクモの巣が虹色に輝いていました。虹色に輝くクモの巣を写すには、黒バックを選んで糸を際立たせ、逆光線で狙います。肉眼で見えますので立ったり座ったりして糸が美しく虹色に輝くアングルを丹念に探します。アングルが見つかったとしても、ゆっくりしていると光が変わって糸が虹色に輝かなくなるので、スピーディーに撮影することが大切です。

今回使用したレンズ:TAMRON SP 90mm F/2.5(Model 52B)

初代90mmマクロは柔らかなボケ味とシャープな描写により、ポートレートやマクロ撮影に最適な中望遠マクロとして、プロカメラマンからアマチュアに至るまで、高い評価を得ました。その描写力は、現在の最新90mmマクロにも受け継がれています。

【主な仕様】

  • モデル名:52B
  • マウント:アダプトールⅡ交換マウント方式
  • 焦点距離:90mm
  • 開放F値:F/2.5
  • レンズ構成:6群8枚
  • 最小絞り:32
  • 最短撮影距離:0.39m
  • 最大撮影倍率:1:2
  • フィルター径:49mm
  • 重さ:420g
  • 最大径X全長:64.5mmx70.5mm
  • 発売時期:1979年
  • 製造終了:1988年

第15回 タムロン・マクロレンズ フォトコンテスト:石井 孝親氏からのメッセージ

写真家プロフィール

石井 孝親 Yoshichika Ishii

1967年横浜生まれ。2017年7、8月 NHK趣味の園芸・花遊美に出演2017年10月銀座キヤノンギャラリーにて「小さな自然との触れ合い」を開催。
「著 書」
・2010年 石井流・花の撮影技術書「光を生かす花の撮影術」日本カメラ社
・2012年 写真集「光と彩の季節」日本カメラ社
・2016年 共著「デジタルカメラ小さな自然の写し方」玄光社
現在、足元の小さな自然をテーマに写真雑誌、企業カレンダー、写真教室講師等で活躍中
日本自然科学写真協会会員

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第15回 タムロン・マクロレンズ フォトコンテスト開催中!

今年もタムロン・マクロレンズ フォトコンテストの応募がスタートしております。応募につきましてはこちらの記事をご覧ください。

タムロン・マクロレンズ フォトコンテスト過去の受賞作品

審査員の石井 孝親氏、岡本 洋子氏のTAMRON MAG レンズインプレッション記事はこちら

―ご注意―(必ずお読みください)

この記事は筆者が独自に研究したタムロンレンズの利用法について、その楽しみ方と併せてご紹介させていただくものです。タムロンレンズの正しい使用方法については、取扱説明書、およびサポート情報のページをご確認ください。また、タムロンホームページのご利用についての説明も、併せてご確認ください。

【重要】
この記事を読んで行った行為によって生じた結果や損害については、株式会社タムロンおよび筆者、また記事中で紹介されている製品のメーカーおよび販売店のいずれも、その責任を負いかねます。
また、この記事についての個別のご質問・お問い合わせは承りかねますので、あらかじめご了承ください。
記事中に、マウントアダプターを使用した説明および作例写真が掲載されていますが、これらのアクセサリー等との組み合わせについて、株式会社タムロンでは動作確認、性能保証のいずれも行っておりません。
また、これらの機材を使用したために故障等が生じた場合の保証修理、異常動作等についてのご質問・お問い合わせは承りかねますので、ご了承ください。