【私たちのレンズストーリー #03：70-180mm F2.8】“寄れる”レンズで広がる新たな撮影体験と楽しみ方

2020-12-28

私たちが生み出してきた大切なレンズとその技術について、物語としてお届けする「レンズストーリー」。第3回目にピックアップするレンズは、2020年5月に発売となったソニーEマウント用の望遠ズームレンズ TAMRON 70-180mm F/2.8 DiⅢ VXD (Model A056)です。

F2.8通しで軽量(810g)という、これまでにないコンパクトなレンズ(※1)である事も魅力ですが、特定の条件(※2)で撮影をすると最大撮影倍率が1:2となる“寄れる”機能が備わりました。望遠、中望遠レンズとして撮ることができるだけでなく、マクロ撮影の要素をプラスしたことで、ユーザーにとって新たな視点と体験をもたらしてくれる、これまでの既成概念を変えるミラーレス時代の新たな望遠ズームレンズの魅力に迫ります。

※1)2020年3月時点で、F2.8通しの望遠ズームレンズでは世界最小・最軽量を実現
※2)広角側70ｍｍ時、カメラボディ側でマニュアルフォーカス(MF)に設定した場合

大三元に、“寄れる”エッセンスを

タムロンの大口径F2.8通しのソニーEマウント用レンズシリーズは、標準ズームレンズ 28-75mm F2.8 (Model A036)から始まりました。そして、広角ズームレンズ 17-28mm F2.8 (Model A046)と続き、3本目として、望遠ズームレンズ 70-180mm F2.8 (Model A056)が登場しました。いずれもミラーレスのカメラボディにマッチする小型軽量でありながら、新たな視点となる「寄って撮る楽しさ」を加えた、新しい「大三元ズームレンズシリーズ」となっています。

望遠ズームレンズ、寄れるメカニズム

70-180mm F2.8 (Model A056)は、オートフォーカス時はズーム全域で最短撮影距離0.85ｍとなり、カメラ側の設定をマニュアルフォーカスに切り替えることで、広角側で0.27mの接写撮影ができる性能が備わっています。　

企画当初の最短撮影距離は、広角側と望遠側で一定の数値0.85mで考えていました。この値でも充分に魅力的だったのですが、光学設計者の「フォーカスを望遠側の移動量と同じだけ動かすと、広角側で0.27mまで寄れるのですが…」という一言が、寄れる望遠ズームレンズ開発のヒントとなりました。

一眼レフ専用のレンズではカムという部品を介してフォーカスレンズを駆動させる方式でしたが、ミラーレス専用レンズは、フォーカスレンズを直接モーターで動かす直動方式を採用しています。直動方式にすることで広角側のフォーカスレンズは、望遠側と同じだけ動かせるため、必然的に広角側の撮影距離が短くなるという仕組みです。その結果、撮影出来る範囲は広角側70mmで0.27m(マニュアル撮影時のみ)で、およそ名刺１枚分くらいとなりました。

画面周辺部分でピントが合いづらくはなりますが(※3)、小さな花や水滴のついた葉などに限界まで寄る事で、最大撮影倍率1:2を活かした本レンズが持つ独特な表現が、望遠ズームレンズで可能となりました。

望遠ズームレンズで撮影したとは思えない独特な世界観と共に、ピントの合った箇所のシャープさ、ボケの雰囲気を生かし、他の大口径F2.8の70-200mmクラスのレンズにはない表現をお楽しみいただけます。

※3) 近接領域撮影時の注意点についての詳細はサポートページをご覧ください。
https://www.tamron.jp/support/guide/closeup.html

望遠ズームとマクロ撮影を、もっと身近に楽しみたい

タムロンはレンズメーカーとして、常に高性能･高画質を追求していますが、加えてユーザーメリットである「軽量・コンパクト」と「今までにない撮影体験」ということにもこだわったユニークなレンズ開発をしてきました。そのスピリットを今回の70-180mm F2.8 (Model A056)でも受け継いでいます。

気軽に持ち出せるレンズは、いつもの何気ない日常のシャッターチャンスを逃さず捉え、写真に残すことを身近なものにすることが可能です。軽量・コンパクトによる携帯性と機動力に、”寄れる”という新たな撮影体験を加えることで、これまで撮ることや持ち運ぶことに関して特別感の高かった望遠ズームレンズも、普段使いできる、身近なものになって欲しいと願っています。