【阿部秀之のレンズ深ぼり#02】生まれ変わったタムロン SP 15-30mm G2で写真が変る。これが真に価値のあるレンズだ!

アベっちのレンズの深ぼりパート2
~写真が変る。SP 15-30mm G2は真に価値のあるレンズ~

レンズの深ぼりパート1では、2本の超広角ズームのうち、17-35mmの世界最小最軽量の実現と優れた性能を解説した。そして次に紹介する1本は、TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)だ。このレンズはSP 15-30mm F/2.8 Di VC USD (A012) の改良モデルだが、世間一般でいうマイナーチェンジではなく、大幅に進化しての登場だという。元になったSP 15-30mm F/2.8 Di VC USD (A012) は数多くあるタムロンレンズの中でもアベのイチオシだ。本格的な撮影には必ず持って行く。春にドバイに行った時もスケールの大きいモスクなどで大活躍してくれた。旧製品となったA012でも十分な実力を感じていたのに新製品A041の進化は大いに気になるところだ。

15mmへのこだわり

まずは15mmという焦点距離について語りたい。ビギナー用に新開発され、パート1で解説した17-35mm F/2.8-4 Di OSD (Model A037)は、コンパクト化のために17mmからのズームとしたが、A041は15mmにこだわっている。超広角での焦点距離1mm、たとえば15mmと16mmでは、レンズ設計はまったく異なるという。超広角の1mmは血の1mmともいわれるくらいに広げるのは大変なのだそうだ。それでもタムロンは15mmにこだわり、周辺まで画象が流れない高画質の設計を実現してきた。しかし、画面の隅々まで高画質なレンズゆえに、わずかなブレもわかってしまう。そのため、手ブレ補正の強化が必要になったのだ。

焦点距離:15mm 絞り:F/3.2 シャッタースピード:1/20秒 ISO感度:400

超広角も15mmにもなると誰にでもいきなり使いこなせるわけではない。ほとんどが広さと遠近感に戸惑いながらシャッターをレリーズしてしまう。その結果まとまりのない写真を撮ってしまう。

焦点距離:15mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:400

同じ場所で撮っているがランタンの配置に心配りが感じられ、近景から遠景までカバーしているので奥行きが感じられる。

超広角への手ブレ補正の搭載

超広角の手ブレ補正は難しい。超広角レンズでは単純に手ブレ補正を強化すると画面周辺の画質が悪化するという問題がある。タムロンの基礎開発チームは、超広角で最大限に手ブレ補正効果を発揮させるため、中心部を重視しつつ、周辺部も従来より更に重視する設定に方向転換した。その後、数百回にものぼる撮影と測定とを行った結果、抜群の調整を見出した。その結果、Model A012から大きく向上し、タムロン SP 15-30mm G2(Model A041)は、公称4.5段とすることができたのだが、実力はそれ以上に手ブレ補正が効いている様だ。

焦点距離:15mm 絞り:F/13 シャッタースピード:2秒 ISO感度:100

夕暮れの銀座。刻一刻と変わる街と空の様子をスナップ。手持ちで1/2秒はラクラク。1秒もへっちゃら。この写真は多めに撮ったら2秒でもブレていなかった。

焦点距離:16mm 絞り:F/16 シャッタースピード:2秒 ISO感度:100

スナップをしていたら全身をゴールドにまとった外人さんから流暢な日本語で声をかけられた。「今からここでパフォーマンスをしますが、良かったらそれまでこの台を使ってください」と言って自分が乗るために持ってきた台を指差す。高いところから撮った方が建物が歪まない。有難くお借りした。背景のビルは止まっているが、動いていた彼は少しブレていて動きがある。

タンロン水上人形劇場へ

タムロンのハノイ工場を見学した翌日、市内の写真を撮りに行った。ハノイに来たなら絶対に見なければと言われて、タンロン水上人形劇場にも行った。撮影するつもりはなかったので、カメラには15-30㎜を付けたままだった。

焦点距離:30mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/2秒 ISO感度:400

これは、水上人形劇場に行った際の写真だが、写真を撮る気なら望遠ズームがいい。それでも何枚かシャッターをレリーズした。そして写真を見て驚いた。

焦点距離:30mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/2秒 ISO感度:400

ハノイに来たら水上人形劇は絶対だ!パーカッション奏者の女性がとても雰囲気がいいので1カット撮っておいた。シャッター速度は1/2秒だった。この写真は上の写真を拡大したものだが、そのシャープさに目を見張った。静止していた彼女は写し止まっているが、他の演者は被写体ブレしている。レンズはものすごく手ブレ補正が効いている。

焦点距離:30mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/8秒 ISO感度:400

同じく水上人形劇場の会場で撮影。こちらは歌手のいる方向。30mmなので大きく写せないのは仕方がない。

焦点距離:30mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/8秒 ISO感度:400

写真を見ていたら画面右はじのライトみたいものが気になって拡大してみた。おそらく非常灯のようなものだろう。それにしても画面のヘリだというのにシャープだ。シャッター速度は1/8秒。レンズの解像力も高いし、手ブレ補正も素晴らしい。

AFの制御精度も向上

またAFスピードも前モデルのA012より大きく向上した。これはAF制御と手ブレ補正の制御を分けて行うデュアルMPUの搭載と制御アルゴリズムの刷新のおかげだ。2つを分けることで手ブレ補正の効果が高まっただけでなく、AFの制御精度も高まった。通常は純正レンズと同等の速さであれば良好な結果と言えるが、A041は純正の速度を超えてしまっている。AFの速さはぜひ体感してほしい。

新たに搭載した新技術、AX(Anti reflection eXpand)コーティング

さらにA041では、新開発のAXコーティングが採用されている。このコーティングが画期的だ!コーティングとは真空状態でレンズ表面に薄膜処理を行うことだ。真空蒸着装置と呼ばれる蒸着機器にレンズをセットする。真空状態にしてから蒸着物質に電子銃を当て材料を蒸発させる。蒸発した材料はレンズの表面に堆積して薄膜を成形する。という仕組みになっている。ところが曲率の深い凸レンズは周辺は平たくないので、蒸着が薄くなってしまう。レンズの中心の反射はグリーン色だが、端ではピンク色になる。蒸着が均一でないことを表している。この問題を解決したのがAXコーティングでA041で新たに搭載した最新技術だ。

そこで、この新しいAXコーティング開発のキーマンであるタムロン技術開発部門のS課長にインタビューし、開発者の立場としてAXコーティングの「ウリ」と、併せてこの素晴らしいコーティングをどんな開発者が産み出したのか、その人となりを含めて深堀りしてみた。

AXコーティングの誕生するまで

Q:AXコーティングを開発したきっかけは?

A:前玉は一眼レフの顔です。どんなに性能が良くても品位の無いレンズはお客様に受け入れられないとの思いがありました。性能上問題が無いようにするためには、長波長まで反射防止帯域を広げれば意外と何とかなるものですが、美しくありません。一眼レフは製品として、嗜好品であり安いものではありません。お買い求めいただいているお客様に満足して頂けるようなより良いものをという思いがありました。

Q:AXコーティングのアピールポイントを開発者として教えてください。

A:コーティングの膜厚はレンズの形状に依存します。凸面の深いレンズでは中心より周辺の膜厚が薄くなります。そうすると反射防止帯域が可視域からずれてしまい、ゴーストの発生につながります。レンズの膜厚を均一にすることでゴーストの発生を抑えることができますし、周辺の光量がアップしますが、実現に際しては大変難易度が高い技術です。

Q:S課長は名称に「アレクサンドライト コーティング」を提案したそうですが、その理由は?実はロマンティスト? 

A:技術者はロマンティスト多いと思います。特別自分がそうだとは思いませんがそこは人が判断することなので。(笑) AXコーティングは綺麗に均一に成膜するとレンズが宝石のような綺麗な均一な色味になります。手にしたお客様も一眼レフ用のレンズを大事にして頂いていることも踏まえて、宝石の名前を使いたいなと思いました。今はどこから見ても緑に見えるような設計にしていますが、このコーティングを一定の方向でぎりぎりまで追い込むと正面から見ると綺麗なグリーンで、斜めから見ると角度依存性によって綺麗な淡い赤色にすることができます。この見る角度によって色が変わることがアレクサンドライトの特性(昼のエメラルド、夜のルビー)に類似していると思いました。

焦点距離:24mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/20秒 ISO感度:400

クリスマス夜に急ぎ足のカップル。背景のショップは思いっきりクリスマス仕様だ。画面右上に強い光源があってこちらを照らす。以前ならちょっと角度を変えて逃げるところだが、新開発AXコーティングとeBANDコーティングがあれば、フレアやゴーストなんかコワくない。その場を活かした写真が撮れる。

タムロン SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A041)を使用してみて

冒頭にも述べたが、タムロンSP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A041)のベースになったSP 15-30mm F/2.8 Di VC USD (Model A012)は、数多いタムロンレンズでもっとも好きなレンズだ。普段のスナップに持ち歩くにはさすがに大きくて重いので、本気用のレンズだ。海外旅行には必ず持参している。欠点を感じたことは、ほとんどない。外観デザインは一昔前のタイプなので、大きなブランドリングを持つ新しいデザインにしてほしいと思っていたが、タムロンは外観デザインを変更するだけといった消極的なマイナーチェンジはしない。G2にするなら改良点が必ずあると思っていた。

そうしたらなんとも驚いた。公称4.5段、実際にはそれ以上の手ブレ補正を搭載してきた。もちろん手ブレには個人差があるから効果は一概には言えないが、A012とはもう世界が異なる。手ブレ補正だけで別のレンズになったも同然だ。海外の巨大な寺院の内部の撮影には15mmでカバーできるが、三脚は使用禁止だ。これまでは手ブレを気にして絞りこめないこともあったが、これからはグッと絞ることができる。写真が変わる。新しいレンズが登場したら、これまで写せなかったものが写せるようにならなければ意味がない。もちろんAFがより高速化されたこと、新開発のAXコーティングとより強固な防汚コートも頼もしい進化だ。

特にAXコーティングは、低反射を実現しつつ、レンズを覗いたときの色にまで配慮し、遣い手の「持つ悦び」まで満足させたいという開発者の熱い思いがこもった素晴らしい技術だ。高性能を更に深化、熟成させたタムロンSP 15-30mm F2.8 Di VC USD G2は、「SP」そして「G2」を冠するに相応しい、真に価値のあるレンズだ。

写真家プロフィール

阿部 秀之 Hideyuki Abe

東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。
タムロン宣伝課を経て、86年よりフリー。ヨーロッパの風景、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フリーになると同時にカメラ専門誌にも執筆をはじめ、現在は月刊カメラマンに「定説 新説 珍説 アベっち教授の再検証」を連載中。
数多くの写真展を開催。技術的な解説も得意とし、1987年からカメラグランプリ選考委員を歴任している。

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TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)

高画質の頂きを求めて。生まれ変わる渾身のフラッグシップ。