写真家 大門 美奈がSP 90mmで煎茶道の年始行事、初煎会を撮る

ここ数年の間、伯母が家元を務める「松香庵流(しょうこうあんりゅう)」という煎茶道の流派の撮影をさせてもらっている。

この日は年始の恒例行事、初煎会。
お抹茶で言うところの「初釡」にあたるのだろう。煎茶道の稽古初めである。
会が行われるのは足利時代に建てられた古民家を利用した料理屋ということもあって、非常に貴重な機会だ。

幼い頃から何度も来たことのある場所だが、写真を撮る側へ回ってみると見方が変わってくるものだ。
回り廊下があるため、外光自体は四方から入る設計にはなってはいるが、現代の家屋に比べると圧倒的に暗い。
また、梁や柱、障子や畳などの直線的な構成物が多いことから、歪みの強く出るレンズは向かないため、毎年レンズ選びには悩むところである。

今回は歪みの出にくい画角、さらに手ブレ補正が搭載されたSP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017) を 使用することにした。
今までは広角~長くても75mm相当のレンズを使用してきたため、90mmという画角は非常に新鮮であった。
ぐっと被写体に迫りつつも、ボケは非常になだらかでとにかく上品な印象。
和の雰囲気に見事にマッチした描写だ。
大口径でありながら軽めなレンズ重量も、女性には嬉しい点。
日常使いしたくなる、上質なマクロレンズである。

一枚目の写真( 焦点距離:90mm 絞り:F/3.2 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:3200)

ほのかなぬくもりがうれしい囲炉裏。釡から立ち上がる湯気を優しく描写している。

焦点距離:90mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:160

古いガラスの向こうにはお正月らしい紅白の梅。

焦点距離:90mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:3200

開放でもピント部分はきりっとシャープな描写。手ブレ補正に助けられた場面は多かった。

焦点距離:90mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:1250

床の間に飾られた、生け花の薔薇にフォーカス。マクロレンズならではの花びらの表情である。

焦点距離:90mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:125

茶会で振る舞われる、この時期ならではの花びら餅。
求肥の柔らかな質感と陶器の艶そのままに写し出してくれた。

焦点距離:90mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:640

茶会中の一枚。暗い場面でも着物の絹の質感と立体感がよく描写されている。

写真家プロフィール

大門 美奈 Mina Daimon

1977年神奈川県横浜市出身。茅ヶ崎市在住。公募展をきっかけに2011年より写真家として活動をはじめる。第1回キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリスト。無印良品、アパレルブランド GARDE COLLECTIVE とのコラボレーション企画等にも参加。主な写真展に「Portugal」(2011)、「本日の箱庭展 -the Miniature Garden-」(2013)、「The Collection」(2016)写真集に『Al-Andalus』(2014)がある

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