写真家 浅井 美紀氏がタムロンSP 90mm F2.8 (Model F017)マクロレンズで撮影する「しずくの世界」

はじめまして。浅井美紀と申します。普段は会社員として仕事をしつつ、休日には早朝から撮影に取り組んでいます。仕事の日の朝は、なかなか起きられないのですが、休みともなると、カラスのごとく起きられるのが不思議です。しかし、休日に限ってお天気が悪かったり、強風など、なかなか思い通りにいかないのがツラいところ。撮影欲が満たされない時には仕事後の夜に、LEDライトを使い自室で撮影します。撮影を予定している休みの週末は前の日から天気予報に一喜一憂し、晴れていれば早朝の光を逃さないよう早起きをして、窓辺や庭先でアリや朝露を追いかけます。やはり自然光に勝るものはありませんね。
今回、TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)を使用して好きな被写体を撮りました。ボケの美しさや優しい色、ふわっとしたイメージの中にも、ピントを合わせたところはとてもシャープになるこのレンズがとても気に入りました。
一枚目の写真( 焦点距離:90mm 絞り:F/9.0 シャッタースピード:1/25秒 ISO感度:400
朝の斜光が降りそそぐ窓際に花をセットしました。窓を背にした逆光のため、背景がアンダーになってしまうので、レフ板を使い全体に光が行きわたるよう調整しています。
逆光でも優しい色合いが出るレンズ
この日は生憎の曇り空。がっかりしつつコーヒーを飲んでいると、雲の切れ間から太陽が。外に出たかったのですが、水滴撮影には不向きの強風です。部屋にお花をセットし、撮影を始めました。いつもは半逆光を狙うのですが、花が少し人工的なピンク色だったため、その色がそのまま写真になってはダメだなと考え、思い切って窓を真後ろにしてみました。完全な逆光だったのですが、人工色が分散され、レフ板を使う事によって光が行きわたり、優しい雰囲気の写真となりました。この花の色と逆光の組み合わせで、今までにも何度か試してきましたが、出てきた写真がこのような優しい色合いになるのは、SP 90mm F/2.8 ならではだと感じています。
焦点距離:90mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/25秒 ISO感度:320
同じ光の条件下で、黄色の花を使っています。光を背負った背景が暗くなってしまうので、露出をプラスに1段補正しました。正面から白いレフ板を当てたことにより、原色のきつい色も、色飽和することなく柔らかく撮ることができました。
焦点距離:90mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:400
道端に群生している、マーガレットに似た雑草です。小雨の降るどんよりとした日でした。F/ 7.1まで絞っても背景との距離を保つことにより、柔らかいボケを得ることができました。手持ちで撮りましたが、強力な手ブレ補正のおかげでピント部分をシャープにとらえることができました。また、防塵防滴構造は心強い味方です。
焦点距離:90mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/30秒 ISO感度:800
自室の蛍光灯下で撮影しています。水を注いだトレーに花を置き、波立たせた瞬間にシャッターを切りました。背景のカラー用紙にLEDライトを当て、右下から光と波が近づいてくるイメージです。光と背景がいい具合に溶け合いました。波の表現をするためのシャッタースピードが稼げないため、ISO感度を上げて撮影しています。
焦点距離:90mm 絞り:F/9.0 シャッタースピード:0.5秒 ISO感度:400
同じ被写体ですが、今度は波を立てずに、水面のリフレクションを大切に撮影しました。シャッタースピードがかなり遅くなってしまうため、ブレを起こさないよう、息をころし、リモコンを使ってシャッターを切っています。構図と背景の色を変えることによって、少し雰囲気の違った写真となりました。
焦点距離:90mm 絞り:F/3.2 シャッタースピード:1/13秒 ISO感度:200
たんぽぽの綿毛で遊んでみました。絞りを開放することで、綿毛の柔らかいフワフワ感を表現できたと思います。両サイドの綿毛は、黄ばんだり墨が乗っているように写ることが多いのですが、ホワイトバランスを変えることによって白く仕上げることができました。SP 90mm F/2.8 ではその効果がより強く表れるように感じます。
焦点距離:90mm 絞り:F/3.2 シャッタースピード:1/13秒 ISO感度:200
背景にはクシャクシャにしたカラーセロファンを使い、点光源を作ります。そこにLEDライトを当てると、このような丸ボケを作る事ができました。SP 90mm F/2.8 では丸ボケ自体も羽毛のように柔らかく表現できるのですね。私がこのレンズを好きになった理由の一つです。
焦点距離:90mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:400
巣の近くに花を浮かべたトレーを置き、辛抱強く待っていると、水を求めてアリがやってきます。アリは動きが早く、一瞬たりともじっとしていません。狙ったところにピントを置き、アリが来た瞬間に連写しました。水面の色は庭木の緑が反射したものです。ちょうど光が差し込み、適度な風で水が揺らいでいます。
焦点距離:90mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:400
別の日の、同じ場所、同じ時間帯での撮影です。ホワイトバランスを「蛍光灯」に変えると少し涼しい色合いになりましたが、SP 90mm F/2.8 ではメインのアリのオレンジ色をしっかりと表現してくれます。ホワイトバランスによって表情を変えるアリが楽しくて、時間が経つのを忘れてしまいました。
TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACROを使用してみて
今回、TAMRON SP 90mm F/2.8 MACRO1:1 Di VC USD (Model F017) を使って撮影してまず感じたのが「優しさ」です。単にふんわりとした写真、というのではありません。ボケの境い目が非常になだらかであり、ピントを押さえつつも、嫌味のないとろけるような背景を作り出すことができるのです。写真は撮り手の心が写し出されると言いますね。
自分の優しさが写真に現れているんだ!と思わずにはいられない描写です。実際に優しい人なのかと言われると、それほどでもありません。でも、このレンズで撮っている間だけは、なぜでしょう。とても優しい気持ちになれるのです。写真はもちろんのこと、自分の心までも、SP 90mm F2.8の恩恵をうけたのでしょうか。アリ撮影時の腰痛さえも忘れて、夢中でシャッターを切りました。
そして驚いたのが、手ブレ補正の強力さです。3mmの被写体には三脚がかかせませんが、ちょっと気まぐれをおこして手持ちに挑戦したところ、難なくピントを合わせることができたのです。まさに至極のレンズですね。
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写真家 浅井美紀氏がタムロンSP 90mm F/2.8 MACRO (Model F017)でしずくフォトを撮影
写真家の浅井 美紀氏がTAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)で撮影したマクロレンズならではの優しいグラデーションと小さな水滴が織りなすファンタジー作品のようなしずくフォトの世界をご覧ください。
写真家プロフィール

浅井 美紀 Miki Asai
北海道帯広市生まれ。雨上がりのしずくの美しさに魅了され、マクロレンズでしずく作品を作るようになる。写真投稿サイト「500px」にしずく作品を投稿し、マクロレンズを通した神秘的な写真はイギリスのカメラ雑誌などで取り上げられ、日本でもさまざまなメディアで紹介される。2015年初の写真集『幸せのしずく World of Water Drops』(扶桑社)、また、2017年、しずく作品集&撮影テクニック (玄光社)をそれぞれ刊行。現在も会社員として働きながら、小さなしずくの世界を作り続けている。
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