写真家 田中 達也の大口径望遠ズームSP 70-200mm F2.8 G2で日本の風景を撮る

写真家・田中 達也氏が大口径望遠ズームSP 70-200mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A025)を持って日本の風景を撮影しました。

一枚目の写真( 焦点距離:131mm 絞り:F/14 シャッタースピード:1秒 ISO感度:400)

山桜と新緑がコラボレーションする山笑う季節。カラフルさが印象的な日中をあえて避け、日没後の薄暮の時間帯を選びました。この時間はマジックアワーとも呼ばれ日陰では特有のブルートーンが広がります。ブルートーンかぶりした湖畔の風景は狙い通りに色染めています。新緑の彩りが浅くなりますが、昼間の景観とはひと味違う色調に妖艶な雰囲気も漂います。

焦点距離:107mm 絞り:F/10 シャッタースピード:1.6秒 ISO感度:640

夕暮れの西空に浮かんだ二日月を焦点距離107mmで捉えています。新月翌日の細い月で馴染みのある三日月の一日前です。二日月は夕焼けとの距離が近く望遠での組み合わせに適しています。澄んだ空では地球照で月の影の部分も浮かび上がります。ここでは木立を前景に縦構図とし、月をアクセントに構成することで風情を感じさせる作品に仕上げています。

焦点距離:200mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:200

日差しを浴びて輝く若葉。風に吹かれ透過光がキラキラ輝いています。そんな心地よい爽やかな風光をキャッチするために絞りを開放にし、ファインダーで見たままのイメージを優先しました。開放描写により高速シャッターも得られ、風になびく束の間の表情をキャッチできました。

焦点距離:191mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100

農家の庭先に咲いたボケの花。鋭いトゲのある花木です。まさに「美しい花には棘がある」のことわざ通り。淡いピンクのグラデーションが美しい花です。このレンズは最短至近距離が95cmまで近寄ることができるので望遠ズームのような扱いもできます。花のクローズアップも十分楽し楽しむことの出来るポテンシャルを秘めています。

焦点距離:103mm 絞り:F/5 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:100

斜面に群生する福寿草をローポジションから狙いました。窮屈な体勢から手持ち撮影を強いられ、さらに日陰なので露出に厳しい。そんな環境での撮影には強化された「手ブレ防止機能」が強い味方です。ピタッと静止する様子をファインダー内で眺めていると、あたかも三脚固定で撮影しているかのようです。F/5.0に絞っていますが落ち着いた背景のボケ味が群生美を引き立ててくれました。

焦点距離:103mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:400

染め上げるような朱色の夕映え。厚い雲の隙間から差し込む残照が演出する美しい夕焼けです。この現象は夕焼けの中で、もっとも色変化の速い空模様です。もたもたしているとチャンスを逃します。ところがあいにく三脚を持ち合わせていなかったので手持ち撮影です。シャッター速度は1/40秒。カメラブレの心配がよぎりましたが、結果ブレは皆無でした。このときこのレンズの「ブレ防止機能」の凄さを再認識しました。

焦点距離:118mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:200

静まり返った渓谷にリズミカルな水色が穏やかに響き渡っています。流れを覆う木々の枝と隙間からのぞく流れの落ち込みを縦構図で構成しました。一体感のある風景にするためF/11に絞り込み、パンフォーカス気味に表現しています。シャープで落ち着いたレンズ描写によって楚々とした春景のひとコマが得られました。

焦点距離:200mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/30秒 ISO感度:200

枝先に広がるモミジの若葉。所々空いた隙間からは背景がのぞき、あたかも和織物のようです。前の縦構図の作品と同じ場所で撮影していますが全くの別表現です。この作品では葉の面を俯瞰できるアングルを選び200mmでクローズアップしています。さらに絞りの選択も描写性能の高いF/8を選びました。ひとつひとつの葉を拡大して見るとくっきりと葉脈まで写り、解像力の優れたレンズ性能を実感しました。

TAMRON SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD G2を使用してみて

焦点距離70-200mmは自然風景の撮影の中で、もっとも頻繁に活用する焦点域と言われています。私の作品を振り返ってもこの領域がずば抜けて多いのです。これは狭い日本のフィールドに適した画角が得やすく、中望遠レンズの程よい圧縮効果もあり作画しやすい利点があるからでしょう。

使用頻度の高いレンズだからこそ撮影道具としての満足感が必要です。私にとってSP 70-200mm F/2.8 G2 (Model A025)は、愛着を感じるレンズということ。これは非常に感覚的な言い方ですが、レンズを道具として選ぶ場合の重要なポイントです。どんな場面でも扱いやすく信頼できる機材が欲しいというのは私のこだわりかも知れませんが、簡単に言えば「言うことを聞いてくれるレンズ」ということです。その資質がこのレンズにはあるのです。

手に取ってじっくり眺めると分かりますが、スマートな肌障りのよい表面仕上げで、高級感を漂わせるデザインです。細部までこだわり抜いたボディ設計は、操作する手に馴染みやすく一体感を感じられます。

特にズームやピントなど頻繁に扱うリングの幅や回した時の抵抗感は決して軽々しくなく、構図やMFでのピント位置を追い求めることの多い私には、緻密なフォーカシングができ、決めた位置が不用意に動かない点が特に気に入っています。また手持ち撮影時の疲れの少なさも特長のひとつ。ボディに装着した際のレンズのバランスが良く、重さを感じさせないため、手持ち撮影したくなるレンズでもあります。

そんなお気に入りレンズの描写力は作品でも解説しますが、抜けよく程よいコントラストでしっとりとした質感を見せてくれます。こうした描写力の影に絞り羽根9枚が貢献しています。羽根の枚数が多いため絞り込んでも円に近い均一な光が入り、解像度が高く柔らかな描写を見せてくれます。これが落ち着いた質感描写に繋がっているのでしょう。

書ききれないほどの魅力があるレンズですが最後にアルカスイス規格対応のレンズ台座が標準装備されたことで素早く確実にセットでき重宝しています。

写真家プロフィール

田中 達也 Tatsuya Tanaka

医療ソーシャルワーカーを経て自然写真家として独立。身近な自然や風景、星空やオーロラなど幅広く撮影活動を行い、繊細で力強い作風を特徴とする。オーロラと風景を組み合わせた一連の作品は海外からも高い評価を受ける。最新著書に「情景写真術」「星と月の撮り方入門」インプレス・「蛍の本」日本写真企画がある。
(社)日本写真家協会・日本自然科学写真協会会員

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