写真家 まるやゆういちがタムロンSP 35mm F1.8 Di VC USD (Model F012)で撮るスナップポートレート

とある日、写真家・まるやゆういち氏がTAMRON SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)を片手にオフシーズンの海へ。まるや氏の気持ちを綴った文章とともに、単焦点35mmでのポートレート写真をご覧下さい。
一枚目の写真( 焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:200 +2補正)
彼女と待ち合わせたのは江の電のある駅。雲がほとんどない快晴。近くのお店でパンを買い込み頬張っていたら いつの間にか約束の時間だったようだ。大きな瞳に茶色い髪の毛。少し強い日差しがそれらをより際立たせる。少しドキドキした気持ちを彼女に察せられないようにさっとそこに立つように指示して2枚だけ撮った。
焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:200 +2補正
ポートレイトに限らない話だが、その日のレンズの選択はカメラ選びより難しい。いや、ズームにしてしまえば早いのだろうが 僕は単焦点、しかも比較的広角側とはなから決めている。
広角は自分のその1歩2歩で画角を調整する事になるが。そう、それは彼女に近づいたり離れたりすることによって彼女もまたどこかで自分に良い意味での緊張感やそして親近感などを抱くのだ。
、、、と勝手に思っている。
焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/4000秒 ISO感度:200 +2補正
35mmという焦点距離は広すぎず狭すぎず、人によっては中途半端に感じる事もあるかも知れない。
実際自分がそうだったしそう言う声もよく耳にする。それでも今こうしてそれを持ち出すのはその応用範囲の広さだ。自分が動いた分だけしっかりと画角は変化する。歪曲は望遠に比較したらそれなりに意識しなければならないとは思うがそれ以上にこれ1本で引きの絵はもちろん、マクロ的な写真も攻める事が出来るのには驚いた。(20cmから撮れる!)
あ、そうそう逆光に攻めつつこの玉ボケも見て欲しい。キラキラに弱いのは女子も男子も一緒なんだと思った。
焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:200 +2補正
夕陽が赤い理由って知ってる?と問いかけようとしてやめた。彼女はこう見えてばりばりの理系、かたやぼくは完全文系。その理系知識の前にひれ伏すのが目に見えて恥ずかしかったのだ。
それにしても写りのいいレンズだと思う。撮影後の彼女との会話も少し上の空。だって液晶でみる写真でさえうっとりする仕上がりになっているから。切れ味の良い包丁は料理をより美味しくする。きっとおんなじ理由かな。
焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:1600
彼女と知り合ったのは1年程前。実は郷里が同じでその時彼女はバリスタ。そう、コーヒーで出逢いました。でも出身地は2人とも青森県。方言でしゃべり合うのってなんだか暗号を使っている気分で楽しい。夜に連れ出したのはこの時が最初。ポートレイトの大切な要素は表情、ではあるけれどそれだけではないと思う。
構図?露出?アングル?ポージング?もちろん全部大事。
焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:400
最高の道具は最高のパフォーマンスを手助けしてくれる。クリアな描写に手ブレ補正機能という武器が加わる事で明らかに撮れるシチュエーションが広がる事を実感した。
ISOは出来るだけあげたくない。シャッタースピードは遅くしたくない。この相反する条件に折り合いをつけてくれたのがVC(Vibration Compensation)。
高鳴る胸の鼓動が腕まで伝わると知らずに手ブレを起こしている事がある。目で相手を見つめ、脳の一部で自分の挙動をコントロールする。その身体の負荷をこのVCに頼るだけで集中力の強化と疲労の軽減に繋がる。
焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/50秒 ISO感度:800
距離感。
モデルとフォトグラファー、というより相手と自分。その関係性を象徴するのが距離感。近いのか離れているのか。見ているのか見つめているのか。意識しているのか意識しなかったのか。好きなのか好きになりかけているのか。
距離感。
ぼくはこの35mmという画角でそれをひたすら表現しようと思っている。
TAMRON SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)を使用してみて
単焦点の良さはその覚悟に在る、と思う。その焦点距離でしか撮れない。だから撮れない時は諦める。その代わり撮れる状況では妥協しない。着けていて楽しいレンズです。軽い。きっちり写る。暗くてもVCがある。これ1本だけでスナップ、ポートレイトをこなします。35mmポートレイトのコツは背景をどれだけ見極められるか。否が応でも被写体の周りの情景が入り込んできますからね。今回のようにオフシーズンの海なんか人が居なくて撮りやすいですよ。ホントに撮った後の仕上がりが楽しくて仕方のないレンズでした。
写真家プロフィール

まるやゆういち Yuichi Maruya
1974年 青森県生まれ
1992年上京、2000年 タヒチの美しさに惹かれ写真を始める
2003年「PHaT PHOTO」写真教室で学ぶ 2004年 写真家テラウチマサトに師事 2011年 独立 2016年現在 人物や商品撮影などを中心にしつつ、120名以上の受講生を誇る単焦点倶楽部を主宰するなど撮影講師としても精力的に活動する。前職は洋服店店長、大工と異色の経歴を持つ。
【写真家サイト】
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SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)
焦点距離35mmのスタンダードな広角レンズに手ブレ補正機構「VC」を搭載。0.2mという最短撮影距離を達成。他にない極めて実用性の高いレンズが誕生。 開放F/1.8から高い性能を達成。