フォトグラファー 清水 愛里氏がタムロン 70-300mm F4.5-6.3 (Model A047)と出かける、 道東の野生動物に出会う旅

2019年2月、白い雪が一面を覆う真冬の季節。私はカメラを手に北海道の真ん中ほどに位置する東川町という小さな町で暮らし始めました。北海道に広がる自然やこの場所に暮らす動物たちに惹かれて移住を決めてしまったほど、この場所に流れるゆったりとした時間が大好きです。現在は広告写真などの撮影をさせていただきながら、日々うつろう季節の一瞬の空気を写真にそっと閉じ込めたいという気持ちで、景色や動物たちの写真を撮っています。

今回、新しく発売されたTAMRON 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)を使わせていただく機会をいただいたとき、まず一番に「この望遠ズームレンズで動物たちを撮ってみたい」と思いました。私は普段からタムロンさんの標準ズームレンズ28-75mm F2.8 (Model A036)をカメラボディに常に装着していて、こちらのレンズでは主に風景や人などを撮影しています。軽やかに動き回れる、その軽量さとコンパクトさが本当に魅力的で、さらに柔らかな描写も出来るという大好きなレンズです。そんなレンズを生み出してきたタムロンさんが作り出した望遠ズームレンズ。このレンズと一緒にどんな世界を見られるだろうとわくわくしながら、北海道の東、道東へ、動物たちに会うための小さな旅に出かけました。

一枚目の写真( 焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:400)

日本最大のカルデラ湖である屈斜路湖で、羽を休める白鳥に出会いました。ここはまだ越冬の地を目指す中継地点で、ここからさらに南下していくのだそうです。穏やかな空気の中、ゆらゆらと波に揺れながら羽繕いをする、1羽の白鳥の静かな姿を捉えることができました。柔らかくボケていく波の描写も気に入っています。

もっと一緒に歩きたくなる、軽やかな相棒

このレンズを手にしてみて最初に驚いたことは、その軽量さとコンパクトさでした。本当にこれが望遠ズームレンズなのだろうか?と疑いたくなるほどの軽さなのです。もしかしたら世界で一番軽いのでは?と思い調べてみると、そこには「世界最小・最軽量」の文字が。望遠ズームレンズには重量のあるイメージがありますが、望遠なのだから仕方がないと当たり前に受け入れていました。そんなこれまでの常識を、このレンズは気持ちいいくらいにバッサリと裏切ってくれました。

なんとその重さは545g。私がいつも愛用している標準域の28-75mm F2.8 (Model A036)のレンズと変わらないどころか、むしろ5g軽くなっているのです。カメラに付けて持ってみると、何のストレスも感じない軽さでした。女性の方は特に、重いカメラを持って撮影することに慣れるまではなかなか大変な思いをするものです。しかし、このレンズであればそんな心配は一切感じることがありません。身軽に、軽やかに、望遠ズームでの撮影を楽しめるのです。手にすっと馴染んでくれるマットな質感もとても気持ちいいです。

焦点距離:73mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:400

この日の朝、この森に初めて雪が降りました。ふと足元に目をやると青々とした苔に薄っすらと積もる白い雪。森の空気を感じながら2時間ほど歩きましたが、大げさではなくカメラを持っていることを忘れてしまうほどの軽さでした。思いのままに、自由に撮影を楽しませてくれるレンズです。

焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:800

ふいにシカに出会ったとき、重さを感じずスムーズにカメラを構えられたからこそ、この瞬間を捉えることができました。高性能なAFも手伝って、スピード感が必要な撮影でもしっかりと応えてくれるレンズです。

奥行きのある景色の、隅々までを見せてくれる

目の前に広がる景色にはっと心を奪われるとき、焦点距離が70mmから始まるこのレンズであれば、標準域から望遠域まで幅のある距離を楽しみながら、景色を切り取ることができます。望遠レンズで覗かなければ見えないような遠くに立ち並ぶ木々の枝先までも、細やかな描写で見せてくれるのです。この解像感、思わず拡大して見てみたくなりませんか?

焦点距離:90mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/400秒 SO感度:100

美幌峠から見下ろした屈斜路湖は、ところどころ秋色に色づいた木々に囲まれていました。手前の木々はくっきりと、奥のかすんだ山々は優しい描写で切り取ることができました。

焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:100

暮れていく時間、カラマツの木々に光が当たり、その色を黄金色に輝かせました。最大ズームの300mmでカラマツの木々にフォーカスを当てて撮っていますが、奥に見える山の木々の輪郭も見て取れます。

焦点距離:117mm 絞り:F/9 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:100

雲間から漏れた光が海に落ちるとき、そのうつくしさに思わずため息が出ます。手前から奥まで広がってゆく波の模様を細やかに表現してくれました。自然が描き出す模様のうつくしさをじっくりと見ることのできる一枚になりました。

突然出会える動物たちを写し止める機動力

動きが読めない動物たちを撮影する場合、動物たちとはもちろん言葉を交わせないですし、グッと近づいて写真を撮ることもできません。でも、300mmの望遠ズームがあれば、ある程度の距離がある場所にいる動物たちも十分に撮影することができます。こんなに軽やかなレンズで動物が撮影できたら、これは革命になるのでは。そんな期待を抱きながら、私は湖や森を巡っていきました。

動物との出会いはいつも突然やってきます。なので、三脚を使うことはほとんどの場合できません。今回はすべて手持ちで撮影しました。動物たちに出会えたら、その姿をできるだけそーっと見守る気持ちでシャッターを切ります。撮影させてくれてありがとう、と呟いてその場を離れたら、すぐに撮った写真を拡大してみました。そこにはしっかりと写し止められた、うつくしい動物たちの姿がありました。

焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:400

湖にゆらゆらと漂っていた白鳥たちが、鳴き声をあげながら何やら集合してきました。その姿はまるでダンスをしているような、お話ししているような、とても楽しいひとときでした。羽をばたつかせる白鳥たちはもちろん、白鳥たちの上に飛ぶ水しぶきまでもしっかりと写っています。周りの白鳥たちが興味ありげに視線を向ける様子も、物語のワンシーンを見ているようでした。

焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:100

海岸沿いを歩いたとき、波打ち際で休むカモメたちの姿を見つけました。私はレンズの位置がカモメの目線と同じになるくらいカメラを低く持ち、背面モニターを上に向け、シャッターを切りました。少し不安定になるような体勢でも、シャッタースピードが速い場合には前ボケを入れたアングルにも気を配れるくらい、手ブレについては全く気になりません。

焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:3200

よく見ると、鼻のあたりに紐のような植物を乗せてこちらを見る若い雄ジカ。ごはんの時間でしたが、ふと顔をあげた瞬間にシャッターを切りました。しっとりと濡れた毛の一本一本まで見えるほどの解像感は、あの雪がちらつく寒い朝を思い出させてくれます。

焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:1600

日が暮れて森が夜に沈んでいくころ、雄々しく立派な角を持ったシカに出会いました。実際に目で見るともうだいぶ暗くなった時間、ISO感度はなるべく上げずに限界までシャッタースピードを遅くして、そのうつくしい姿をうつくしいままに写したいと思いました。ほんの少しの時間、前を見据える横顔が浮かび上がります。残照を浴びる白い角の質感、ゴワゴワした毛の肌触りまで伝わってくるような写り。頼もしいレンズです。

TAMRON 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)を使用してみて

これまでの望遠ズームレンズの重い、大きい、という常識を覆す、超軽量でコンパクトな70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD。実際に撮影してみて、思った以上に気軽に軽やかに望遠の世界を楽しむことができるレンズだと感じました。今回はこのレンズをソニーのα7R IIIやα9にぶら下げながら、森や水辺をしばらく歩いて撮影してみましたが、長時間ぶら下げていたにもかかわらずまったく疲れを感じませんでした。女性の体でも軽々持ち運べるこの重量は、本当に心強い味方です。そして、風景の細かい描写も可能にする解像感。手ブレ補正が付いていなくてもカメラボディ側の補正で十分に補えるというポイントも大きな魅力で、そのお陰か、重さによるストレスから解き放たれた状態で、その瞬間を存分に感じることができる。そんな理想のかたちを叶える素敵なレンズを、これから望遠の世界を覗いてみたいと思っている方にぜひおすすめしたいです。

写真家プロフィール

清水 愛里 Eillie Shimizu

1989年、千葉県生まれ。写真を撮り始めたことをきっかけに、2019年2月、北海道・東川町に移住。ランドスケープや動物をはじめ、現在は企業広告写真などの撮影のなかでは人物など、さまざまな撮影を行っている。

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タムロン 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)

望遠撮影の面白さを気軽に楽しめる、フルサイズ対応ソニーEマウント用望遠ズームが登場。幅広い望遠域をカバーしながらも、無駄を極限まで省いたレンズ構成で軽量化を図るとともに、高画質を実現しました。手持ちで軽快に撮影を楽しめる望遠ズームで、表現の幅を広げてくれる1本です。

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