写真家 別所 隆弘氏がお勧めする望遠ズーム タムロン70-300mm F4.5-6.3 (Model A047)。「その望遠、重さからの解放」

望遠レンズの作例依頼やレビューを頂くと、あの望遠独特の「見え方」を存分に見てもらう機会に腕がなると同時に、ほんのちょっと、憂鬱な気持ちになります。なぜなら、あの「鈍器」と錯覚するような重量物を持ち歩かねばならないのだから!鈍器、そうあれはまさに鈍器。大抵の超望遠と呼ばれるレンズは、少なく見積もっても1キロオーバー。40代に入って以降、謎の凝りに全身を悩まされているこの身に、1キロオーバーのレンズは正直つらく感じる様になりました。始めに「ほんのちょっと、憂鬱な気持ち」と書きましたが、実際相当憂鬱だし、お世話になっているタムロンさんでも断っちゃおうかな… とか、ほんのわずかに思ったくらいです。ところがおもむろにスペックシートを見て、驚きました。重量:545グラム!!??マジか!
というわけで、相変わらず重量に関して業界の常識を破るタムロンの望遠ズーム、TAMRON 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)がついに登場。「でも驚くほど軽いということは、それだけ光学的に無理しているのでは?」と言いたくなりますよね。それでは実写をご覧ください。百聞は一見に如かず。
一枚目の写真( 焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:2秒 ISO感度:100)
望遠のレビューでは、大抵はまず飛行機を撮影してみます。作例写真として色々よくわかるので、まずは飛行機長秒夜景をご覧ください。手前の独特の光の「割れかた」は、これは空港特有の現象です。見てもらいたいのは、中央に鎮座する飛行機のサイズと解像感、そして画面奥の宝塚の夜景の綺麗なボケかた。望遠レンズの魅力凝縮ですよね。遠いところのものを、ギュッと手元に持ってきて画角にまとめあげる。開放で撮影しているのですが、解像とボケの両立が300mmのテレ端でしっかり出ています。実に美しい。
正確なAFと描写力で人物撮影も満足
自分はだいたい風景写真家という認識を持っていただいているのですが、このレンズでは人物も撮りたくなります。ボケが綺麗で、しっかり暗部でも色を拾ってくれるのです。そこで、夕焼けが煌く極上タイミングの大学キャンパスで撮ってきました。巨大なコンクリート壁に写っている盛大なボケが美しいのですが、実はここまで強烈な光だと、今度は心配になるのは暗部でのA Fの正確さ。もちろんこれはボディ側の性能との掛け算になりますが、直視できないほど強烈な光により作られた濃い影の中でも、モデルさんの目にガッツリとフォーカスを当ててくれています。そうなると、解像感もしっかり出るので、ボケが引き立つという寸法。本当にこれ、545gのレンズ?というくらい隙のないレンズです。
焦点距離:260mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:320
焦点距離:88mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:640
オートフォーカスは迷うこともなく、スッと合います。このレンズを使って感じたのは、この「快適さ」。「軽さ」で犠牲にされそうな光学性能やメカ性能もしっかり作り込まれています。手ブレ補正はついていないのですが、それが気になるような箇所は全くありませんでした。最近はボディ側で制御してくれるので、それで十分行けます。
焦点距離:106mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:1250
望遠レンズの情報の整理力を生かした、風景ポートレートもお手の物。1日の最後の光が作り出す「影」との対話を、モデルさんの感情を邪魔しない距離から切り取りました。
被写体に接近、その美しさ
タムロンのレンズといえば、クローズアップショットでの豪華なボケ味だというのは、もはや周知の事実かもしれません。望遠300mmの圧縮された鉄成分多めの飛行機とは打って変わって、寄れるところまで寄って撮ったコスモスの花は、実に柔らかくてスイートな秋のご馳走。小さな虫食いまできっちり解像する描写力、まだ青味の残る夕焼け空の階調に加えて、超絶軽いとはいえ望遠ズームで撮ったものとは思えないしっとりしたボケ、特にうるさくない丸ボケが最高じゃないですか?
焦点距離:70mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/2500秒 ISO感度:100
実は吹き荒れる風の中で撮影した一枚です。ひたすら連写なので、撮った本人の能力というよりは、レンズのA F性能の賜物。ありがとうタムロン。
逆光だってお手の物
今度は前ボケに加え後ろボケもぜひ見てください。特に見てもらいたいのは、実は後ろの方。太陽。そう、逆光なのです。「天使の階段」とか、「シャー」とか言われる、強い光源から放たれる光芒、ボケの中でもしっかり描かれているのも素晴らしいのですが、ここまでまっすぐ太陽を前に置くと、わりとフレアやゴーストが出がち。でも出ていない。そう、クローズアップショットと共に最近のタムロンレンズは逆光の強さも売り。それが今回も遺憾無く発揮されています。しかし前も後ろもボケがとても綺麗で極上のボケ味。ツッコミ入れる隙もありません。
焦点距離:105mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:100
焦点距離:70mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/8000秒 ISO感度:100
フレアやゴーストが出ていないというのも素晴らしい点ですが、実はもっと見てもらいたいのは、逆光下での色の出方。直射光、透過光、反射光、いろんな光をしっかり捉えてくれているので、コントラスト低下が起こらず、色彩豊かな写真に仕上がりました。
TAMRON 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)を使用してみて
というわけで、ついに望遠さえも重力から解放したタムロン渾身の「新しい望遠」による作例、いかがだったでしょうか。冒頭で重たい望遠レンズを持つことの憂鬱な気持ちを綴りましたが、1キロを超えるレンズの作例作りとなると、撮影が終わって帰ってくると、やはりくたくたになります。丸一日、ボディと合わせて1.5キロの物体を持ってうろつくわけですから、相当な負担になります。望遠は特にサイズ感も大きくフロントヘビーなので、その疲れはより一層増します。でもこのタムロン70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)は、そうした重さから我々を解放してくれる一本です。そう、翼を授けてくれます。体に、そして何より、想像力に。
70mmという標準域最後の焦点距離から始まり、超望遠の入り口とも言える300mmまでをこなすという、ユーティリティに溢れた焦点距離にもかかわらず、振り回していても手に持って移動しても、感じるのは圧倒的な軽やかさ。そしてそこから生まれる上質な画。タムロンの最近の傾向の全てが詰まったこのレンズは、望遠入門の一本として、全力でお勧めしたくなるレンズです。
写真家プロフィール

別所 隆弘 Takahiro Bessho
フォトグラファー / 文学研究者。National Geographic社主催の世界最大級のフォトコンテストであるNature Photographer of the Year “Aerials” 2位など、国内外の写真賞多数受賞。写真と文学という2つの領域を横断しつつ、2020年以後の「リモート時代の写真」のあり方を模索する。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。
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タムロン 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)
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