写真家 山田 芳文氏がタムロン70-180mm F2.8 (Model A056)で撮る身近な野鳥たちのいる風景

こんにちは。TAMRON MAGにはじめて登場させていただきます、写真家の山田芳文です。僕は日常的に野鳥を撮り続けていて、野鳥の姿・形だけでなく、鳥の周囲の環境も含めて一つの風景として表現する「鳥がいる風景写真」をライフワークとしています。

今回、フルサイズミラーレス一眼カメラに対応のソニーEマウント用大口径望遠ズームレンズTAMRON 70-180mm F/2.8 DiⅢ VXD (Model A056)を試用する機会をいただきました。現在、新型コロナウイルスが感染拡大している状況なので、移動に制限があり、遠方へ撮影に出かけることが困難となっています。今回はそんな中でも撮影が可能な、近場にいる身近な野鳥を撮りにでかけました。ソニーα7RⅣと組み合わせて70-180mm F2.8 (Model A056)で撮影した身近な鳥たちの風景をご覧ください。

一枚目の写真 焦点距離:155mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:500

鳴いているヤマガラを155mmにして撮影しました。絞りは開放から2段絞ってF5.6としましたが、背景のボケが硬くなることはなく、やさしく、なだらかで、タムロンらしい描写になりました。撮影後に、この画像をカメラの背面液晶で見たときに、これは使えるレンズだと確信しました。

鳥がいる風景を撮るのに最適な焦点距離

「野鳥撮影=超望遠レンズ」というイメージがある人が多いのではないでしょうか。僕の場合は、「鳥がいる風景写真」をライフワークとしていますが、鳥を撮影するには短いと言われるような焦点距離のレンズも多用します。そんな僕にとって70-180mmは、「鳥がいる風景写真」を撮るのに最適な焦点距離となっています。このレンズのお気に入りのポイントは、ズーム全域で開放F2.8と明るいところです。できるだけISO感度を上げずに撮影したい僕にとって、これはとても有り難いポイントとなっています。

明るいズームレンズは重いものが少なくありませんが、70-180mm F2.8 (Model A056)は重量が810gとF2.8通しのズームレンズとしては非常に軽いので、身体への負担もほとんどなく、持ち運びに疲れてしまうこともありませんでした。

焦点距離:180mm 絞り:F4 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:640

観察を繰り返した結果、水浴びをする前の鳥たちが一時的にこの切り株にとまることがわかりました。背景が綺麗になるところにポジショニングを決定してカメラをセット、自分はカメラから離れて鳥を待ちました。シジュウカラがきたので、遠隔操作で撮影した1枚です。やわらかなボケがシジュウカラを引き立ててくれました。

焦点距離:151mm 絞り:F4 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:400

高さを伝えたかったのでカメラを縦位置にして、ルリビタキを画面の下に配置しました。主役の周囲も含めて風景的に撮影しているのでルリビタキの面積配分は小さいですが、背景のボケがやわらかなので、ルリビタキがバックに馴染んでしまうことなく、画面から浮かび上がりました。

焦点距離:70mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:200

「鳥たちは私たちのすぐ近くで暮らしています」ということを伝えるために、70mmで画面に人工物を取り入れ、まるごと受け止めて撮影しました。ボケがなだらかなので、直線的な人工物の柵も目障りに感じません。ジョウビタキはよく尾をふるので、シャッタースピードを1/60秒にして、尾をふった瞬間にシャッターをきり動感を表現しました。

焦点距離:148mm 絞り:F4 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:125

撮影当日はとても風が強い日でした。その風を写したかったので、ジョウビタキに風があたった瞬間に1/1000秒の高速シャッターで写し止めました。ボケ味がナチュラルでやわらかいのは言うまでもありませんが、フォーカスポイントのジョウビタキの目もキリリとシャープに描写されていて、自分のイメージ通りの鳥がいる風景となりました。

最短撮影距離が短いので、寄りでも撮れる

鳥がいる風景がライフワークと言っても、引きの写真ばかり撮っているわけではありません。作品を組んで見せるときに、引きのカットばかりだと変化がつかないので、寄りの写真も撮影しています。TAMRON 70-180mm F/2.8 DiⅢ VXD (Model A056)は、野鳥をアップで撮るには少し物足りない焦点距離のように思われるかもしれませんが、最短撮影距離が0.85mと短いので、この焦点距離でも十分に寄りで切り取ることができます。

丁寧に観察を繰り返すことで、鳥の行動パターンが読めるようになり、よく止まる場所などが把握できるようになります。そうなれば、しめたものです。野鳥の近くに設置したカメラから自分は離れて遠隔操作で撮影します。人間が近くにいないのと電子シャッターによるサイレント撮影の効果も相まって、鳥へのストレスを低減しながらアップで野鳥を撮ることが可能となります。

焦点距離:180mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度 : 400

夕方の太陽が低い時間に後ろ姿を撮りたかったので、シジュウカラがよくとまる場所に朝からカメラをセットして、自分はカメラから離れて待ちました。鳥は警戒しているときは背中を見せない傾向にありますが、人間が目の前にいないので、何回もカメラに背中を見せてくれました。ジャギーが出やすい条件ですが、ご覧の通り、心地よい描写になりました。

焦点距離:180mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100

背景の木漏れ日のボケを活かすために、カメラを縦位置にして、はみ出し構図でルリビタキを寄りで切り取りました。これによってルリビタキの目力を伝えられたと思っています。「ボケがあるからシャープがあり、シャープがあるからボケがある」。このレンズを使っていると、そう思わせてくれます。

焦点距離:180mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:200

寒い時期、鳥はよくまるまります。これをストレートに伝えるために、ジョウビタキの全身をポートレートっぽく大きめに写しました。カリカリな描写だけのレンズでは、フォーカスポイントの目がシャープでも羽毛がまるでたわしのように写ってしまうことがありますが、このレンズはボケ味がやわらかなので、ジョウビタキの魅力を引き出すことができました。

TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)を使用してみて

今回の撮影で、タムロン70-180mm F/2.8 DiⅢ VXD (Model A056)は、次の3つのポイントがあげられると思います。

①軽いのは正義
F2.8通しのズームレンズは明るくて使い勝手がいいけれど「重い」というのが通常ですが、70-180mm F2.8は810gと軽く、これまでになかったレンズだと思いました。年齢を重ねていくにつれて、軽いという事は本当に有り難いと改めて思いました。

②静かで早いAF
新開発のリニアモーターフォーカス機構「VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)」によるAFは静かで早く、正確です。ピントは静止画の命と考える僕にとって高速かつ正確なAFは有り難く、信頼できるものでした。

③風景として鳥を撮るのに最適な焦点距離
超望遠レンズを使って寄りの写真一辺倒で鳥を撮影している人は少なくありませんが、表現の幅が広がるので、時には風景的に撮ってみてはいかがでしょうか。このレンズはそんな野鳥風景を撮るのに最適な焦点距離となっています。超望遠の次の1本として重宝するので、鳥を撮影される方にぜひお勧めしたいレンズです。

写真家プロフィール

山田 芳文 Yoshifumi Yamada

写真家。「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。著書は『写真は構図でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディーエヌコーポレーション)、『野鳥撮影術』(日本カメラ社)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)など。最新刊は『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)

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TAMRON 70-180mm F2.8 Di III VXD (Model A056)

タムロン70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)は、ミラーレス専用設計のソニーEマウント用大口径望遠ズームレンズ。その最大の特長は、開放F/2.8通しの高性能レンズでありながら、フィルター径φ67mm、最大径φ81mm、長さ149mm(70mm時)、重量810gという世界最小・最軽量ボディです。

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