動物写真家 小原 玲氏がタムロン70-180mm F2.8 (Model A056)で狙うモモンガ

はじめまして。動物写真家の小原玲です。北海道のモモンガの生息地の近くにアパートを借りて、かれこれ9ヶ月撮影を続けています。今回使用したTAMRON 70-180mm F2.8 Di III VXD(Model A056)はモモンガの撮影には欠かせないレンズ。

特に滑空シーンでは大活躍しました。野生動物撮影での1本は超望遠の大砲レンズになりますが、近接できる時に対応するレンズも必要です。大きすぎず、重すぎず、でも画質は決して妥協していない70-180mm F2.8 (Model A056)は、私にとって欠かせないベストチョイスです。

特に滑空シーンを狙うときには予想したコースによって、中望遠域の焦点距離をこまめに変えるので大活躍します。F2.8の大口径であることも夜行性動物、モモンガの撮影では助かります。

一枚目の写真( 焦点距離:143mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/8000秒 ISO感度:12800)

青空の下で滑空するモモンガです。モモンガ は夜行性動物ですが、天敵であるフクロウの行動が活発な時にはあえて夜を避けて、明るい時間帯に行動する時があります。滑空シーンを狙うにはコースを予測して焦点距離を選択し、置きピンと高速連写で撮影します。

滑空のコースを予測し判断する焦点距離

モモンガの滑空シーンを撮るには、まず飛ぶコースを予想して、その空中のポイントに置きピンをして高速連写します。秒間20コマの撮影で大体1枚ぐらいピントが合っているものです。そのポイントを遠目に置くか、近くに引きつけるかで焦点距離を選びます。70mmから180mmというこのレンズの焦点距離はそれに最適な幅です。

焦点距離:158mm 絞り:F/5.0 シャッタースピード:1/6400秒 ISO感度:10000

吹雪の中を滑空するモモンガです。遠目に望遠で撮ることで、吹雪の雰囲気が出ると判断し、長めの焦点距離を選択しました。まだ水平に滑空している位置なので、スピード感が良く出ます。コースの変化に対応するために手持ちで撮影しますが、このレンズの大きさと軽さなら、モモンガの動きに合わせて追いかけられます。

焦点距離:82mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/2500秒 ISO感度:12800

ハンノキの花芯をくわえて滑空してきたモモンガ。こちらは少しでも引き付けて大きく撮ろうと、近いところにピントを合わせて、広めの焦点距離を選択して撮影しました。木に止まる直前なのでブレーキをかけて起き上がった姿勢になっています。動きに合わせて焦点距離の選択ができるので、このような撮影状況ではズームレンズが便利です。

広めの画角が欲しい時、迅速な対応を可能にする絶妙なバランス

モモンガが数匹並んで、近くに寄れる時には、超望遠の大砲レンズをどけて、首からぶら下げているもう一台のカメラで対応します。このもう一台のカメラに付けた2本目のレンズで撮る情景写真こそが、野生動物の写真集の制作では重要になります。これ以上大きくて重いと機動性を損なうし、画質も譲れないのですが、70-180mm F2.8はその微妙なバランスが保てる良いレンズです。

焦点距離:180mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:51200

最初は超望遠で巣穴から出てくるモモンガのアップを狙っていたのですが、モモンガが次々と並び出したので、すかさずこのレンズで対応しました。180mmと言っても野生動物の撮影では広めの画角です。周辺環境を取り入れながら、望遠で情景描写をする際には欠かせない画角でもあります。

焦点距離:180mm 絞り:F/18 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:25600

モモンガが4匹並んでくれました。こういった様子は超望遠ではとても入らないので、70-180mmレンズで対応しました。動物の撮影ではついつい超望遠だけで行動してしまいがちですが、ここで今回の70-180mmぐらいのズームレンズがあると写真に変化が付けられます。そしていつでも首からぶら下げていられる軽さも、このレンズならではの魅力です。

焦点距離:91mm 絞り:F/22 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:6400

最初180mm側で寄って撮ろうと思ったのですが、周りの枝に乗った雪と霧氷が着いた光景が素晴らしいので、画角を広くして対応しました。できるかぎり絞り込んで枝の雪にもピントが来るようにしました。状況に応じて臨機応変に対応できるのはズームレンズならではの魅力です。

月明かりのモモンガ撮影を可能にするF2.8大口径

70-180mm F2.8は開放から安心して使える高画質のレンズであるため、闇夜での表現の幅が広がります。このレンズの魅力は大きさや軽さだけではなく、高画質であるということが実感できます。

焦点距離:70mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:25600

低く昇り出した月と滑空するモモンガを入れて撮りたくて、広めの画角を選択して待ち構えました。狙ったコースにきちんと来てくれたので、ピントの合った写真が撮れました。日没後の撮影なのでF2.8の明るいF値が大いに撮影を助けてくれました。

焦点距離:119mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:25600

巣穴から出たモモンガが飛んで行った先で、向こう側に月が見えていました。急遽70-180mmレンズに持ち替えて、月とモモンガを入れ込んだ情景を撮影しました。野生動物の写真では超望遠のアップだけではなく、こういったその場の雰囲気を伝えられる情景カットが必要です。

TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)を使用してみて

どんなに画質が良くても、大きくて重すぎるレンズは機動性を損なうので野生動物の撮影では使えません。また、どんなに軽くて小さいレンズでも画質が悪ければ、プロの仕事では使えません。

この70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)は全く妥協していない高画質と絶妙な大きさ、軽さのバランスがとれたレンズです。今のデジタルカメラは画素数も多く、このレンズの望遠域が180mmまででもトリミングで対応できるので、望遠側180mmという選択は大当たりだと思います。首から常時下げていても苦にならない大口径望遠ズームというものは今まで存在していなかったので、動物撮影のシーンにおいてはとても嬉しいレンズです。

写真家プロフィール

小原 玲 Rei Ohara

動物写真家。写真週刊誌「FRIDAY」の専属カメラマンの後、報道写真家として天安門事件、湾岸戦争、ソマリアなど海外の紛争地を取材。天安門事件の写真はLIFE誌のThe Best of LIFEに選ばれた。アザラシの赤ちゃんとの出逢いを契機に動物写真家に転身し、シマエナガ、アザラシ、プレーリードッグ、ホタルなどの写真集を多数出版。写真集「シマエナガちゃん」はベストセラーになり、ブームの火付け役となった。近著に「アザラシの赤ちゃん かわいいのヒミツ」(講談社ビーシー)、「シマエナガちゃんの日々」(ワニ・プラス)、「Kiss!」(小学館)。など。

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TAMRON 70-180mm F2.8 Di III VXD (Model A056)

タムロン70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)は、ミラーレス専用設計のソニーEマウント用大口径望遠ズームレンズ。その最大の特長は、開放F/2.8通しの高性能レンズでありながら、フィルター径φ67mm、最大径φ81mm、長さ149mm(70mm時)、重量810gという世界最小・最軽量ボディです。

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