鉄道写真家 煙道 伸麻呂氏の鉄道冒険旅第2弾、タムロン70-180mm F2.8 (Model A056)の高描写力で狙い通りに鉄道を撮る

こんにちは、鉄道写真家の煙道 伸麻呂です。タムロンレンズを携えての鉄道冒険旅第2弾でご紹介するのは、大口径望遠ズームレンズのタムロン 70-180mm F/2.8 Di III VXD(Model A056)です。フィルター径φ67mm、最大径φ81mm、開放F2.8通し、そして、わずか810gの軽量コンパクトなレンズです。このスペックだけでも、とてもフルサイズ用のレンズとは思えないほどで、驚きです。

70-180mm F2.8は、第1弾の150-500mm F5-6.7と同じく、タムロン史上最高レベルの高速・高精度AFを誇るリニアモーターフォーカス機構VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)を搭載しています。また、明るさが全域F2.8通しというスペックは、鉄道ファンが是非選びたい憧れのレンズです。今回はどのような鉄道写真が撮れるのか、その魅力を存分にお伝えしたいと思います。先に結論から言ってしまうと、これほどまでに鉄道写真が撮りやすいレンズは初めて、ということです。それでは70-180mm F2.8編のスタートです。

一枚目の写真( 焦点距離:122mm 絞り:F22 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:50 使用カメラ:ソニー α7R III)

流し撮りは、いまや定番の撮影方法です。私もさまざまな機材を使ってきましたが、70-180mm F2.8は最も流し撮りがしやすいレンズです。フォーカス性能の良さは織り込み済みでしたが、まさかここまで鉄道写真にピッタリなレンズとは思いませんでした。高度な撮影技術が必要な新幹線も、70-180mm F2.8なら容易に撮影できる被写体に早変わりです。

TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD(Model A056)

ソニー Eマウント (フルサイズミラーレス一眼カメラ用レンズ)

タムロン70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)は、ミラーレス専用設計のソニー Eマウント用大口径望遠ズームレンズ。その最大の特長は、開放F2.8通しの高性能レンズでありながら、フィルター径φ67mm、最大径φ81mm、長さ149mm(70mm時)、重量810gという世界最小・最軽量ボディです。

70-180mm F2.8は鉄道写真撮影の「超優等生」レンズ

70-180mmは、鉄道写真で多用する焦点域です。列車の走行シーンや鉄道風景をはじめ、スナップに至るまで、この焦点域で撮影することはとても多いです。使用頻度の高い焦点域で開放F2.8の明るいレンズとなれば、選ぶ価値は大いにあります。レンズに手ブレ補正は搭載されていませんが、カメラボディの補正機能を使えば問題ありません。また手ブレ補正がないことで、レンズ本体がスリムに設計されています。そのため、レンズのホールド感は抜群です。しっかりと基本に忠実な構え方ができていれば、余程のスローシャッターでないかぎり、手ブレを気にする必要はないでしょう。AF駆動には静粛性・俊敏性に優れたリニアモーターフォーカス機構VXDが搭載されています。リニアモーターは鉄道ファンにとってもよく知っている言葉ですね。ますます気に入りました。

また、BBAR-G2 (Broad-Band Anti-Reflection Generation 2)コーティングが、ゴーストやフレアの発生を抑えます。一般的には逆光耐性が高いと説明しますが、鉄道ではもう一つ大きな利点があります。それは列車の前照灯とその周辺が綺麗に写ることです。現在では逆光でも綺麗に写るレンズが主流ですが、列車のライトは光源が特殊で、うまく対応できていないレンズもあります。しかし、この70-180mm F2.8は優れたレンズコーティングと設計のおかげで、自然な雰囲気でライト周りが描写されます。ややマニアックな視点ですが、この要素は鉄道写真にとっては大切です。私にとって長年の悩みが解決したレンズです。

焦点距離:84mm 絞り:F11 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:500 使用カメラ:ソニー α7R III

鉄道界での「リニアモーター」はこちらの列車です。実用化に向けて、現在は山梨県の笛吹市と上野原市の42.8キロ間で試運転が行われています。春先の撮影でしたが、山々が綺麗に見渡せました。このような鉄道風景写真にも最適なレンズが70-180mm F2.8です。写真界の「リニアモーター」は「タムロンレンズ」のことだと覚えておきましょう!

焦点距離:180mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7R III

鉄道車両が放つライトは特殊で強烈です。一度レンズに入った光が、内部で反射を繰り返す現象が原因となり画質の低下を招きます。この70-180mm F2.8はそのような欠点は見られず、ライトとその周辺の描写が綺麗に写りました。特に新しい車両を写すときに効果があります。ささやかなポイントですが、作品づくりには大きな利点です。

焦点距離:157mm 絞り:F9 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:250 使用カメラ:ソニー α7R III

70-180mm F2.8を使えば、このような編成写真も綺麗に撮影できます。レンズが軽量なため、手持ち撮影でも繊細な構図づくりが可能です。車両の黄色と、雪の白色もコントラストが鮮やかに表現されました。基本的な写真から、流し撮りやイメージ写真まで、70-180mm F2.8なら様々な鉄道写真が難なく撮影できます。

流し撮りのために生まれたのでは、と思えるレンズ

始めの写真で少しだけ触れましたが、やはりこのレンズを使って最も感動したのは、流し撮りのしやすさです。特に被写体の動きに合わせてズームを変化させる、「ズーム流し撮り」には、これ以上最適な選択肢はない!と思えるほど相性が良いです。70-180mm F2.8は一見すると素朴な見た目ですが、不思議な魅力を秘めた実力派レンズなのです。

なぜ流し撮りに向いているのかと言うと、まずは何と言ってもレンズの軽さです。これは極端な例えですが、仮にこのレンズを装着して右手だけでカメラを構えたとしても、ほぼ狙い通りの写真が撮影できるでしょう。それほどに軽量なレンズです。つまり左手に掛かる負担がほとんどありません。実際の撮影ではレンズの先端付近に、左手人差し指を軽く添えればフレーミングは十分です。それほど片手には余力があるので、その分丁寧なズーミング動作が可能となるのです。レンズ設計者がわざわざ流し撮り用にレンズを開発するとは思えませんが、最適化を目指した結果、偶然にも便利な一本が生まれたのではないでしょうか。不思議なものですね。ぜひみなさんにもレンズを実際に手に取っていただき、私と同様に感動体験を味わってもらいたいものです。

焦点距離:焦点距離:82mm 絞り:F10 シャッタースピード:1/50秒 ISO感度:320 使用カメラ:ソニー α7R III

軽量な機材は、被写体の動きに合わせやすく流し撮りには最適です。そのうえ、70-180mm F2.8はズームリングを操作する際に心地よい適度な重さがあり、このふたつの要素が重なることから、流し撮りには最適なレンズと言えるでしょう。流し撮りは一度成功すると、もっとチャレンジしたくなる魅力ある撮影方法です。

焦点距離:81mm 絞り:F16 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:125 使用カメラ:ソニー α7R III

流し撮りが決まった時は快感を覚えます。この写真はかなり難しい角度とわかっていて撮影しました。その結果がこちらです。列車の前面が一部ブレていますが、狙いのライトはしっかりとらえることができました。列車のライトは人間の瞳に相当します。多少ブレていても、しっかりとインパクトのある写真に仕上がりました。

コンパクトなレンズで撮りたいシーンを気軽にとらえる

70-180mm F2.8はズーム全域で最短撮影距離0.85mを実現しています。この特長はスナップ撮影で活躍します。タムロンレンズ全般に言えることですが、どのレンズも小型軽量です。鉄道写真では被写体に近寄れない場面も多いため、気軽に使える望遠域はとても重宝します。しっかりとカメラを支えることができれば、背面モニターを使ったライブビュー撮影も簡単に撮影できます。いつもと違った視線の写真も軽やかに撮影できるなんて、写真家に寄り添ってくれる、優しいレンズですね。

焦点距離:141mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:250 使用カメラ:ソニー α7R III

走行中の車内は非常に揺れます。この写真は104と刻まれた刻印と運転士の手元を狙ってみました。ブレを抑えるためには、しっかりレンズをホールドしましょう。このような場面も逃すことなく、さっと撮れるのがこのレンズの利点です。刻印、圧力計メーターや緑色のランプも写し込みました。高い解像力により、左上の圧力計の数字もしっかり解像しています。独特なレタリングですね。

焦点距離:112mm 絞り:F7.1 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7R III

鉄道写真の専門用語に「編成写真」という言葉があります。編成写真は走行する列車の全体を一定の角度から写したものです。鉄道写真の定番カットとも言えます。中でも一番難しい条件が、一両編成です。ピンポイントの角度から狙わないと綺麗に写りません。70-180mm F2.8はズーム動作がしやすいので、最適な角度を探りながら撮影できます。

焦点距離:168mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:160 使用カメラ:ソニー α7R III

普段は何の変哲もない撮影地ですが、時間を選ぶとドラマチックな光景が広がります。他人と違った写真を撮るときは時間をずらすのがコツです。架線やケーブル、線路の曲線が脇役となり、主役の列車を引き立てます。ローカル線は待ち時間が長く、重い機材は持つだけで疲れます。その点軽いレンズならば、待ち時間も快適に過ごせます。

焦点距離:160mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:320 使用カメラ:ソニー α7R III

最後にご紹介するのはこちらの写真です。第1弾の150-500mm F5-6.7で撮ったシーンと同様の、ロマンスカーと富士山の組み合わせです。今回は斜光線を利用して列車の存在感を引き出しました。太陽の反射光を利用して、ギラリと光る様子を狙いました。強烈な光線でしたが、目立ったフレアも発生せずハイライトの描写も良好です。私が思い描いていた、理想のシーンを素直に表現してくれました。

TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)を使用してみて

鉄道写真では中望遠から望遠は、使用頻度が多い焦点域です。その焦点域をカバーする70-180mm F2.8は、やはり鉄道写真向けのレンズでした。高速の列車にも対応する高精度なAFはとても頼りになります。初心者にはもちろんのこと、上級者やベテラン撮影者のこだわりにもしっかり応えてくれるレンズだと感じました。私は日頃から「良い写真への近道は、信頼できる機材を選ぶこと」だと考えています。開放F2.8通しの高性能レンズでありながら、フィルター径φ67mm、最大径φ81mm、長さ149mm(70mm時)、重量810gという小型・軽量サイズは、鉄道写真との相性が抜群でした。70-180mm F2.8は、鉄道写真の新たな世界を切り開いてくれるような、夢中になれるレンズでした。

写真家プロフィール

煙道 伸麻呂(遠藤 真人) Endo Nobemaro (Masato Endo)

日本大学芸術学部写真学科卒業、日本写真学会 正会員 NPS会員、第3回タムロン鉄道風景Instagramコンテスト2021 審査員、EIZO ColorEdgeAmbassador。鉄道会社の公式撮影のみならず、行政や民間団体の講師の他、写真コンテストの審査、機材レビューの執筆など多岐にわたり活動する。蒸機の美姿を追い求めたライフワーク「煙道」は根強いファンが多い。軽快な話術とウィットに富んだ表現が魅力。写真集「いすみ鉄道 キハ52 125 写真集 Isumi Pride Vol.1」をクラウドファンディングで出版。WEB3.0時代を見据えた写真系NFTへも取り組む。

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TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)

タムロン70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)は、ミラーレス専用設計のソニー Eマウント用大口径望遠ズームレンズ。その最大の特長は、開放F2.8通しの高性能レンズでありながら、フィルター径φ67mm、最大径φ81mm、長さ149mm(70mm時)、重量810gという世界最小・最軽量ボディです。

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