写真家 秦 達夫氏が大口径レンズ タムロンSP 35mm F1.4 (Model F045)で雪深い山々の冬景色を撮影。

今シーズンは暖冬で雪が少なく風景をモチーフとする撮影は難航の連続でしたが、そんな中でも結果を出すのが写真家です。今回紹介するTAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD (Model F045)の秘めた可能性に期待して2020年冬の八甲田、奥入瀬、美ヶ原、そして富山に雪を求めて旅をして来ました。使用感を含め、このレンズが作り出す写真と可能性を私の作品を通して楽しんでいただきたいです。

一枚目の写真( 焦点距離:35mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:200)

霧の中でしたが天気予報では晴れる予報だったのでチャンスを待ちました。思惑通り、一瞬でしたが霧が抜け青空が!霧氷の質感を引き出すために絞りをF11に設定し+1/3補正で撮影。奥行きを感じられるように立ち位置を調整しました。

どんな状況にも応えるとんでもないレンズ!

近代風景写真はパースの変化を多用し、視覚を越えた空間を取り入れる表現が展開されています。そのため、レンズバリエーションが必要であり、沢山のレンズを持ち運ぶ事が表現の幅に直結していると思います。そんな状況に1本で風穴を開けるレンズが登場したらどうなるのでしょうか?

焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:200

焦点距離:35mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:200

両方を見比べて欲しいです。シュチュエーションこそ違いますが同じレンズで撮影したものです。一枚目は望遠レンズで写し止めたように、二枚目は遠近感が強調され広角レンズの特長が現れています。

焦点距離:35mm 絞り:F/1.8 シャッタースピード:1/8000秒 ISO感度:200

2月だと言うのに小雨が降る八甲田の森。時を忘れた葉が1枚だけ枝に残っていました。絞りを開けてファインダーを覗くと肉眼では確認出来ないボケが現れハッとしました。このような枯れ葉を撮影する時は極力リアルさを打ち消すことが重要です。それは、深度があるとただの枯れ葉としか写らなくなってしまうから。リアルさを消すテクニックとしてボケ表現がありますが、マクロとは違った広角ならではの画角とボケがいい味に繋がったと思います。

焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:200

まるで雪中行軍のように霧の中を進むスキーツアーの行列。霧が濃くコントラストが低い状態でしたがピントは一発で合いました。

焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:400

前景と遠景を組み合わせて奥行きを意識させるフレーミングで撮影。木々の重なりから望遠系で撮影したような感じにも見えるし、手前の木と奥の木の太さの違いから広角で撮ったようにも見えます。

焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:200

夕陽に照らされてピンクに染まる八甲田山と雲です。

焦点距離:35mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1秒 ISO感度:200

奥入瀬渓谷銚子大滝。積雪期は歩道の反対側から撮影出来る貴重なシーズンです。沢の流れを前景に取り入れ空間の広さと奥行きを伝えるように撮影しました。

焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:10秒 ISO感度:200

黎明の時。シャッター速度10秒。雲が流れて美しい描写になりました。

焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:15秒 ISO感度:400

日本三大秘湯「谷地温泉」です。その泉質は極上で何度訪れても心が和み、美人女将がしきる名湯です。

焦点距離:35mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:200

霧の中、目に付く被写体はない状態。こんな時は樹に近づいて撮影すると良いです。運良く霧氷が着いた木立を発見したのでカメラが木肌に触りそうなくらいの距離で撮影しました。

焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:200

荒野のような雪原。見渡す限り何もない状態。そんな時はワンポイントを探し三分割法を用いて撮影します。焦点距離35mmの画角が丁度良いです。

焦点距離:35mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1/5000秒 ISO感度:200

雲の動きが激しく、太陽が見え隠れしていました。露出をアンダーに設定し、雲間の太陽を狙い撃ちしました。

焦点距離:35mm 絞り:F/1.4 シャッタースピード:1/6400秒 ISO感度:1600

曇りの日なので強い光線がなく、岩の下に潜り込み逆光になる状況を探しました。弱い光だったので開放F1.4で感度を上げて撮影。開放でもシャープな描写のこのレンズは悪条件でも期待に応えてくれる、よきパートナーです。

TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USDを使用してみて

TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD (Model F045)はSPシリーズ40周年記念モデルとして生を受けています。その節目の年に焦点距離35mmを選んだタムロンは、レンズの事を良く理解していると感じます。なぜなら、焦点距離35mmは広角的な空間の捉え方も出来れば、望遠的な見せ方も出来るレンズだから。つまり、使い方次第で様々な表現を1本のレンズで可能にすることが出来るのです。もちろん撮影者の技量が重要にはなりますが、万能な焦点距離だからこそ40周年記念モデルとして相応しいと思います。

そして、驚異的な開放F値1.4という数字。広角レンズは被写界深度が深いため、一般的に明るいと言われるF2.8ですらボケの描写は平凡になってしまいます。しかし、それより2段明るい絞りと最短撮影距離30cmから作り出されるボケは視覚を越え異次元の描写を作り出します。さらに驚くのはAFの速さ。開放F値が明るい大口径レンズにありがちなAFスピードの違和感がこのレンズは全くありません。ファインダーを覗いた時のピントが合って行く感じも含め、撮影していて心地よく感じるレンズとして開発されていることが充分伝わってくる1本です。

写真家プロフィール

秦 達夫 Tatsuo Hata

1970年長野県飯田市遠山郷生まれ。自動車販売会社・バイクショップに勤務。後に家業を継ぐ為に写真の勉強を始め、写真に自分の可能性を感じ写真家を志す。写真家竹内敏信氏の助手を経て独立。故郷の湯立神楽「霜月祭」を取材した『あらびるでな』で第八回藤本四八写真賞受賞。同タイトルの写真集を信濃毎日新聞社から出版。他に写真集の著書あり『山岳島_屋久島』『屋久島Rainy Days』『New Zealand』。小説家・新田次郎氏『孤高の人』の加藤文太郎に共感し『アラスカ物語』のフランク安田を尊敬している。日本写真家協会、日本写真協会会員。Foxfireフィールドスタッフ。

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タムロン SP 35mm F/1.4 Di USD(Model F045)

込めたのは美しさへの信念。息を呑むキレ味と、やわらかなボケ味。画質へのこだわりがここに結実。意志を撮る。覚悟を写す。

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