写真家 横木 安良夫の「FRIENDS」~女友達~ SP35mm、SP45mm、SP90mmで撮るポートレイト

単焦点レンズを使う―レンズの画角による世界観を大切にしたいから―

友人のモデルであり女優の片山瞳が、千葉九十九里の友人宅で療養している時があった。
千葉県生まれの僕は外房の海は昔から大好きで、特にロケ地としては自分の屋外スタジオのように何度使ったかわからない。今はないが、かつては冬の間も営業している海の家がポツンとありそこを拠点によくロケをしたものだ。

時に、強風の中、海岸でスポーツカーを燃やして撮影したこともある。千葉の海岸は、ハワイやアメリカの西海岸とは違い、ちょっと陰気なヨーロッパの大西洋側の海に似ていて広告写真向きではないが、哀愁のあるイメージが広がっている。

今年8月、片山の滞在中を撮っていたある日、彼女の親友、女優の太宰美緒が遊びに来た。久しぶりの再会だという。さっそくふたりをつれて僕は近くの海岸に向かった。片山のことは定期的に撮影をしているが、太宰を撮るのは初めてだった。そこで単に、二人のポートレイトを撮るのではなく、親友だった二人が数年ぶりに再会するといったドラマ仕立ての話をアレンジした。それは全然作り物ではないが、服や小道具は映画のように揃えることにした。片山は太宰のお腹が大きいことに驚いていた。知らないうちに結婚して、二人目の子を身ごもっている。かつては毎日のように会っていた二人が、知らないうちに違う道を歩いている。そんなストーリーで撮ってみた。

人物撮影は、その距離感を一定にしたい理由から単焦点レンズを使うことが多い。背景のボケ具合のコントロールは当然として、レンズの画角による世界観を大切にしたいからだ。

TAMRONの単焦点、SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)SP 45mm F/1.8 Di VC USD(Model F013)SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)は、描写性も、強力な手ブレ補正機能もとても満足している。

一枚目の写真( 焦点距離:45mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:200)

2017年8月のある日、海岸まであるいて5分ぐらい、途中湿地帯があり小さなコンクリートの橋の上、まず二人の再会の喜びを撮ってみた。

焦点距離:35mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:400

これはちょうど1年前の8月台風が接近した日の片山瞳。この写真はアサヒカメラ2016年11月号の口絵で紹介されている。

焦点距離:35mm 絞り:F/3.5 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:200

今年の8月はあまり天気が良くなかった。夕方太宰がお腹をさすっている瞬間を撮る。

焦点距離:35mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:640

これも一年前の8月、片山気持ちよさそうに水のなかに浮かんだ。

焦点距離:90mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/4000秒 ISO感度:200

太宰が、ひとり海を見つめている。90mmレンズを望遠のように使ってみた。

焦点距離:45mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:1000

片山瞳はポーズを注文しなくても、寝転んだり、海に入ったり、僕がブレーキをかけるぐらいだ。てんとう虫を見つけてはしゃいでいる。人物の写真を撮る時、肌のレタッチをどうするかは問題だ。やりすぎてマネキンの肌にしたら失敗。ビジネスレタッチと、作品のレタッチは分けてかんがえる必要がある。できるだけ自然な皮膚感になるように心がけている。

焦点距離:45mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:1000

二人揃って寝転んでもらった。二人並ぶと良くわかるが、肌の質感や色は人によってこんなに違う。フィクションにするのではなく、リアルのなかに美しさを求めたい。

焦点距離:90mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:160

木陰の道、こういう光は女性なら誰もが美しく写る。僕は特に女性を撮る時には顔にどんな光が当たっているかを重視している。

焦点距離:45mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1/30秒 ISO感度:100

現実にはこんなシチュエーションはないけれど、二人で布で遊んでいる雰囲気。本当の現実と写真の中の現実はちょっと違っている。それだけ写真の中では現実を拡大することができる。太宰の目の色が宝石のように美しい。

焦点距離:45mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:100

今回の撮影のテーマでもある、二人の関係と、それぞれの感じ方。柔らかな光のなか、水平線に近い太陽からの逆光線が差し込んできた。

焦点距離:90mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:100

さわやかなイメージの太宰美緒。帽子もワンピースも本人の持ち物。よく似合っている。
日常こういう服を選ぶのは自己演出だ。

焦点距離:45mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:100

記念写真のような現場写真。薄い雲のベールから太陽が逆光で差し込んでいる。左に座るのはヘアメイク。女性を撮る時、ヘアメイクがいると完成度があがる。もちろんなしで撮ることも多いが、いると違う写真が撮れるから不思議だ。

この二人のデジタル写真集はCRP JAPAN FRIENDS 友達  から購入が可能です。

CRP(CROSSROAD PROJECT)とは

横木安良夫がプロデュースする、Amazon Kindleを使ってデジタル写真集を出版するプロジェクト。

詳しくはこちらへ。http://www.photoxcamp.com

写真家プロフィール

横木 安良夫 Alao Yokogi

千葉県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後にアシスタントを経て、1975年独立してフリーランスの写真家になる。
広告、ファッション、Nude、ドキュメンタリー、エディトリアル、映像など多方面で活動し、1998年頃から文筆活動もはじまる。
2009年からは、テレビ朝日「世界の街道をゆく」の写真と映像を担当。2015年からは、Kindleのデジタル写真集制作を主催している。

主な著作

写文集「サイゴンの昼下がり」小説「熱を食む裸の果実」ノンフィクション「ロバートキャパ最期の日」写真集「あの日の彼 あの日の彼女」文庫「横木安良夫流スナップショット」他

この写真家の記事一覧を見る

記事で紹介された製品はこちら

タムロン SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)

焦点距離35mmのスタンダードな広角レンズに手ブレ補正機構「VC」を搭載。0.2mという最短撮影距離を達成。他にない極めて実用性の高いレンズが誕生。 開放F/1.8から高い性能を達成。

タムロン SP 45mm F/1.8 Di VC USD (Model F013)

45mmという焦点距離、そして極めてシャープな描写を持つ個性的な標準レンズが誕生。フルサイズ対応の大口径標準単焦点レンズとしては初の手ブレ補正機構を搭載。開放F/1.8からクリアで切れの良い描写を実現。

タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)

タムロン90mmマクロレンズの新たな幕開け
高い光学性能を継承しながら、手ブレ補正機構「VC」の性能向上を実現