鉄道写真家 杉山 慧氏がタムロン35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD(Model A043)で、初夏の「しなの鉄道」を撮影

はじめまして、鉄道写真家の杉山慧です。初めて開催される「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト2019」にて、審査員を務めさせていただくことになりました。どうぞ宜しくお願いします。

さて、今回レイルファンを唸らせる1本のレンズ「TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043)」がタムロンから登場しました。ポートレートレンズと銘打ち発売されたものですが、鉄道の撮影で最もよく使う標準から中望遠域を見事にカバーしているではありませんか。試しに触ってみると、ズーム全域で高解像度のクリアな画が撮れるようです。このレンズを携えて、爽やかな夏の様相に姿を変えた山々の麓を走る長野県の「しなの鉄道」へ赴きました。

一枚目の写真 焦点距離:35mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:1000

しなの鉄道のハイライトと言えるのが黒姫山バックのポイントでしょう。水田に反射した樹木がバランスよく収まるように、構図の基準は左下にして、刻一刻と沸き立つ雲の表情に合わせて、焦点距離を調整します。こうしたときにズームレンズは重宝しますね。夏山、青空、雲、水田、緑と初夏の要素を詰め込んだワガママ構図に、ガンメタリックの「しなの鉄道色」の115系が飛び込んできました。

風景も編成もスナップも撮れる!オールラウンダーレンズ

電車移動や、出張のついでの撮影など、機材をフル装備で持って行けないor持って行きたくない場面があると思います。とはいえ携帯性を重視して選んだレンズでは満足いく作品は撮れない「こだわり派」の皆さんにオススメなのが35-150mm F/2.8-4 Di VC OSDです。広角での風景カット、望遠側をめいっぱい使った編成カット、自在な焦点領域を活かしたスナップなど、今回の撮影ではこのレンズ一本で済ますことができました。

訪れた「しなの鉄道」は、北陸新幹線の開業や延伸に伴ってJR信越本線から転換された第三セクター鉄道で、115系というJRから引き継いだ電車が運行されています。この電車は約50年前に大量に作られ関東甲信越から中国地方まで各地で見ることができましたが、後継車両の登場で徐々に活躍の場が見られなくなってきました。そんな中、全列車が115系で運行されるしなの鉄道はまさに「最後の楽園」。楽園の名にふさわしい、妙高・黒姫をはじめとする山々の絶景のなかを駆け抜ける115系を追いかけました。

焦点距離:35mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:400

野尻湖の最寄り駅である黒姫駅は長野から電車で30分ほどの高原地帯にあります。朝靄の美しい風景を捉えようと、駅近くの跨線橋に陣取りレンズを東に向けます。レンズの性能が試される逆光での撮影になりますが、やってきた午前5時台の妙高高原行き始発列車のディテールも潰れることなく、綺麗に仕上げてくれました。

焦点距離:120mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/20秒 ISO感度:100

黒姫駅のある長野県信濃町は俳人小林一茶が最期を過ごした土地です。駅のホームには一茶の詠んだ俳句が掘られた石碑が鎮座しています。石の細かい突起が見えるように繊細にピントを合わせました。ここが駅のホームであることがわかるように、低速シャッターで撮影し背後の列車をブラしました。

焦点距離:150mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:200

しなの鉄道では、大多数を占める「しなの鉄道色」のほか、115系が国鉄・JR時代に纏っていた「湘南色」や「横須賀色」と呼ばれる塗装の電車も走っています。撮影当日は朝の長野行き快速列車が、この2色を繋いで運転されていました。APS-C判のNikon D500に取付け、クロップ機能を使用。焦点距離150mm×APS-C判の約1.5倍(ニコンカメラの場合)×クロップ機能の1.3倍で、35ミリ判換算では約290mm相当の焦点距離にあたります。

焦点距離:82mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:160

湘南色と横須賀色を繋いだ快速長野行きの折り返しである戸倉行きを狙うべく、真横から撮れる場所へ移動しました。35-150mm F/2.8-4 Di VC OSDは790g(ニコン用)、特段軽さを売りにしているレンズではないようですが、上下左右に動かした感じは軽く、手に馴染みます。ちょうど両先頭車がシンメトリーに構図に収まりました。

焦点距離:145mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:400

沿線を車で走っていると、駅舎の向こうに夏雲が沸いているのを見つけました。雲の存在感を出すため、駅舎からできるだけ離れて望遠で狙います。ついつい駅舎全景を入れたくなりますが、ここが駅だとわかればそれで十分。駅に貼られたポスターなどが入らないように画角を上に振りました。こうしたときにズームレンズは便利ですね。

焦点距離:35mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:800

しなの鉄道の沿線では至る所でニセアカシアの花が見頃を迎えていました。ズーム全域で最短撮影距離0.45mの35-150mm F/2.8-4 Di VC OSDは、花を撮りたいときにも便利です。AFも優秀なので、花が風で揺れるたびにピントを合わせるのも簡単です。背後を走る電車のライトのボケ具合を見てください。丸いライトの電車ですが、綺麗な真円にボケてくれました。

焦点距離:82mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:200

良い光線で編成写真が撮れる時間になったので、編成が綺麗に撮れる撮影地にやってきました。ここでも広い焦点領域がメリットを発揮。広角で1番手前の架線柱の先に電車の頭をあわせるか、中望遠で2番目の架線柱手前に電車の頭を合わせるか、レンズを覗きながら、中望遠で2番目の架線柱手前で撮ることにしました。

焦点距離:150mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:800

日本の山岳鉄道は25‰の勾配を基準とし設計されていることが多く、線路際に立てられる25‰の勾配標識は山岳鉄道のシンボルと言えるでしょう。長野盆地と日本海側を結ぶしなの鉄道北しなの線でもその勾配標識を見ることができます。柔らかい階調表現が可能なレンズなので、画面に取り込んだ電車の台車の影も真っ黒に潰れることなく捉えてくれました。

焦点距離:72mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:1600

田植えが終わったばかりの水田が涼しげでした。水田の後ろを走る電車を真横から狙います。こういう一様な景色が広がる場合は何ミリで撮っても良さそうなのですが、実はシビアな構図決めが必要です。背後の森の木の頂点の位置に気を遣いつつ、ズームを微調整しました。

焦点距離:52mm 絞り:F/14 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:100

西日の暑苦しさを表現しようと、駅のそばへ向かいました。駅を発車した直後の電車はスピードが遅いので、シャッターチャンスはたくさんありますが、車体をブラすためには低速シャッターを使う必要があります。手ブレ補正機構(VC)をONにして列車を待ちました。ブラインドを半分下げた乗客の白い帽子が良いアクセントになったと思います。優秀なVCは窓の向こうの景色をブラさずに捉えてくれました。

焦点距離:122mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:125

妙高高原は峠を越えた新潟県の駅で、しなの鉄道はここで終点となり、えちごトキめき鉄道に接続します。折り返し長野行きとなるしなの鉄道の電車の先頭が改札口の向こうに見えました。駅舎の外からガラス越しに構えます。フードをつけただけではガラスの反射が写り込むので、フードを左手で覆います。キャリーバッグを転がす乗客が画になりました。

焦点距離:100mm 絞り:F/16 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:100

妙高山から沸き立つ雲が夕陽を吸い込んで、神々しい橙に染まった西の空にカメラを向けました。電車をブラしつつ、形がはっきりできるシャッタースピードに、ボディに映り込む景色、妙高山が美しく見える露出…。それを表現するにはできるだけ情報量の少ないシンプルな構図…色々計算しながら撮りました。

焦点距離:116mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/10秒 ISO感度:1600

昼間に見る緑も綺麗でしたが、薄暮の時間も綺麗だろうと、森の中を走る列車を見下ろせるポイントにやってきました。こういう微妙な明るさの時間帯には、(この焦点距離における)開放値がF/4と明るいのは助かります。ファインダーを覗いたときの明るさも素晴らしく、薄暗い時間帯の撮影でも頼もしいです。

焦点距離:52mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:1600

夜の黒姫駅を訪ねると、木の温もりを感じられる待合室を照らす、笠のついた電灯が印象的でした。待合室の外から、ガラス越しに狙います。となると、反射を防ぐためにガラスにレンズをくっつけるように撮影するため、三脚を使うよりも手持ちのほうが向いています。低速シャッターで撮影するため、ここでも手ブレ補正機構(VC)を使っています。

焦点距離:125mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/4秒 ISO感度:1600

1日の撮影の最後に、もう一度妙高高原駅にやってきました。やがて入線してきた115系電車は、接続する電車を照らしました。

TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043)を使用してみて

今回、しなの鉄道沿線へと連れ出した「TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD」。はじめて手にした印象のとおり、ズーム全域で、綺麗な描写が得られるとても良いレンズでした。画像の隅々まで明るく捉えてくれるので、レタッチで周辺の光量を調整する必要がないのは、大量の写真を撮影する我々プロにもありがたいです。AFは超音波モーターではありませんが、合焦までは素早く、必要十分な設計であることを実感できました。

もともと広い焦点領域が自慢のレンズですが、カメラは35ミリ判フルサイズとAPS-C判の2台を持って行ったことで、より広い焦点領域で楽しむことができました。目論見どおり、風景、編成、スナップと、「ひととおり」の鉄道撮影をこなせることがわかったので、レンズはこの1本さえ持ち歩いていれば、色々なシャッターチャンスを思い通りに切り取れそうです。

常にカバンに入れておきたいレンズですね。

杉山 慧氏 プロフィール

杉山 慧 Satoru Sugiyama

1992年静岡県生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、ネコ・パブリッシング「レイル・マガジン」編集部で、編集経験を積んだのち、鉄道写真事務所レイルマンフォトオフィスに入社。同社を2018年に独立した後は、編集・カメラマン経験を活かし、写真撮影のみならず文章の執筆も一手に引き受ける「二刀流カメラマン」として活躍中。
【活動実績】
・鉄道ジャーナル社「鉄道ジャーナル632号」変貌する広島圏輸送 本文執筆/写真撮影
・ネコ・パブリッシング「お立ち台通信vol.22」メインライン/東海道本線 撮影地ガイド 本文執筆/写真撮影
ほか多数

この写真家の記事一覧を見る

記事で紹介された製品はこちら

35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043)

誕生、ポートレートズーム。
どんな表情も仕草もこの一本で。
繊細な描写で写し出す大切な時間。

タムロン鉄道風景Instagramコンテスト2019開催中

杉山 慧氏が審査員を務める「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」を開催中です。鉄道を含む風景やスナップ作品に「#タム鉄フォトコン」のタグをつけ、カメラやスマートフォンで撮影した写真でもご応募できるInstagram限定のフォトコンテストです。

応募詳細はこちらをご覧ください。

投稿された作品はInstagramで #タム鉄フォトコン でご覧になれます。