星空写真家 成澤 広幸氏が、タムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)を「普段使いに最適な標準ズーム」として使いこなす!

風景や夜景を撮影するなら周辺までバキバキのシャープさが欲しい。ポートレートやスナップを撮影するなら美しい背景ボケは欠かせない。できれば旅先できれいな星空も撮影できたら・・・でも荷物は軽く、できればレンズは1本で済ませたい。

今回使用したフルサイズミラーレス用ソニー Eマウントの標準ズームレンズ、タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)は、まさにこうした欲求を叶えることができるかもしれないと感じました。その魅力と理由をお伝えしていこうと思います。

一枚目の写真( 焦点距離:69mm 絞り:F8 シャッタースピード:15秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7 III)

TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)

ソニー Eマウント (フルサイズミラーレス一眼カメラ用レンズ)

タムロン28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)は、高い評価を頂いてきた28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)から、第2世代「G2」として、さらなる進化を遂げた大口径標準ズームです。高画質・高解像を実現し、AFの高速化と高精度化を達成しました。広角端での最短撮影距離0.18m、最大撮影倍率1:2.7を実現。新デザインの採用により操作性や質感も向上しました。さらに、独自開発した専用ソフトウェアにより、レンズのカスタマイズが可能になりました。

南伊豆で朝焼けの撮影を楽しんでいると、伊豆七島のひとつ「利島(としま)」の横から月齢27.8のめちゃめちゃ細い月が昇ってくるのが見えました。このように淡く、薄くかすんで見える月は、さすがに標準ズームでは写らないだろうと思いつつ、ダメもとでシャッターを切ったところ、ばっちり写っていました。もちろん気象条件によっても変わってきますが、高解像を実現した28-75mm F2.8 G2だから撮れたのだと思います。焦点距離を変え、ズームアップして撮影。こうした切り替えが瞬時にできる標準ズームだからこそ撮影できた一枚です。

友人をポートレート撮影。衝撃を受けた、とてもシャープな写り

ポートレート撮影やスナップ撮影で、「ボケ感」と「ピント位置のシャープさ」は誰もが気にする点だと思います。屋外での撮影は周囲に人がいて、構図内に入ってしまう可能性があります。写真をおしゃれに見せるためにも、背景のボケ感やボケ量はとても重要です。F1.4のレンズならともかく、F2.8でどんなボケ感をだすことができるのか・・・まずは28mm側、75mm側での写り具合を試してみました。

焦点距離:焦点距離:28mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7 III

焦点距離:75mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7 III

公園で友人を撮影。28-75mm F2.8 G2の製品ページに掲載されているMTF曲線図を見ると、画像周辺のコントラストが落ちにくい設計になっているようですが、その通りですね。特に75mm側は素晴らしいです。背景を美しくボカすために、標準ズーム使用時は望遠端で使用することが多いのですが、このレンズは広角28mmでの最短撮影距離が0.18mなので、ボケが足りない場合は被写体に近寄ることでボケ感を補うことができるというメリットがあります。(モデル:若月くるみさん)

このポートレートを撮影したとき「もしかしたら、単焦点レンズいらないかも」と感じました。ピント位置のシャープさはもちろん、ボケ感もうっとりする美しさ。また細かいことを言うと、開放F値はボケに色収差がついたりして気になってしまい、結局多少絞って撮影することがありますが、このレンズに関してはどのF値、どの焦点距離でもそういった収差が見られません。こうした高い性能を持ちながら、コストパフォーマンスにも優れています。標準ズームの魅力に一気に引き寄せられることとなりました。

MTF(Modulation Transfer Function)曲線図

MTF曲線図を大きく見る
(PDFファイル:84.7KB)

早朝の河津桜を撮影。焦点距離と被写体との距離のコントロールで幅広い撮影を体感

F2.8通しの標準ズームのメリットは、被写体との距離が限られている場合でもぐっと寄って撮影でき、一瞬のタイミングが捉えられることだと思います。またそれとは別に、ひとつの被写体に対して向き合い、どの設定が最も適切なのかを探る撮影というのもあります。花の撮影では背景のボケ感をどの程度にするのか、時間をかけてじっくりと選ぶこともあります。背景のボケ感の演出には、①被写体との距離 ②焦点距離 ③F値、この3つの選択肢があり、これらのバランスをコントロールすることで、作品に仕上げることができます。

焦点距離:60mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7 III

焦点距離:60mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:160 使用カメラ:ソニー α7 III

F2.8でなんでもかんでもボカしてしまえば良いというものでもなく、ピントが浅すぎてちょっと不明瞭に感じることもあります。そんなときはF値を絞ることでピントの浅さを調整することができますが、そうすると背景のボケ感が少なくなります。でも、タムロン28-75mm F2.8 G2 は最短撮影距離が短いので、被写体に寄ることでも背景のボケ量を調節することができます。写真ではわかりませんが、実はこのとき、最短撮影距離ギリギリまで桜に近づいて撮影しています。

これはタムロンの他のレンズにも言えることですが、最短撮影距離が近いことにより、撮影でアプローチがとても幅広くなります。特に被写体に極端に寄り、F値を絞って撮影する方法は私のお気に入りで、風景撮影では特に重宝します。普段は24mm以下の超広角レンズを使用することが多い私ですが、やはりこういった普段使いでは28mmから75mmがもっとも使用頻度が高くなります。また、驚いたのはAFの速さと精度で、こうした近接撮影ではAFが迷いやすいのですが、α7 IIIとの組み合わせではAFの迷いはほとんどありませんでした。撮影中はストレスなく快適に撮影を楽しむことができました。初心者の方には特におすすめしたいポイントです。

星空を撮影。画角は若干狭めでも、星空の撮影で満足できる解像・描写を実感

星空の撮影では、F2.8の明るさが基本となり、それよりも暗いF値のレンズは選択肢に入らなくなります。撮影データを見るとわかるように、適正露出を得るためにはカメラの設定が厳しい条件になるからです。露出時間が長くなると地球の自転により星が線になって写ってしまうため、20秒以下でシャッターを切りたいというのが本音。撮影の時期は2月下旬。夜半過ぎの東の空から夏の天の川が昇ってくるシーズンだったので撮影に行ってみました。

焦点距離:28mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:12800 使用カメラ:ソニー α7 III DxO Pure Rawでノイズ低減、Photoshop Lightroomで画像処理

ちょうど昇りたての、低い位置の天の川と港を撮影。海に映り込んでいる明るい光はさそり座アンタレスによるもの。風景と星空を同一構図で捉える写真を星景写真と呼びます。28mmの画角は星景写真としては少々狭めで、高い位置にある星空と風景を絡めるのは難しくなります。そのため被写体(このときは天の川)の高度が低い時間帯を選ぶことで、こうした同一構図での撮影が可能になります。

焦点距離:28mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:6400 使用カメラ:ソニー α7 III Photoshop CCで画像処理

このレンズで撮影する際のおすすめの構図はこれでしょう。風景は1割か2割程度の比率とし、星空をめいっぱいにして写しました。旅先で出会った星空も、28-75mm F2.8 G2でおさめることが可能です。中心像はもちろん、周辺までびっしりとシャープな写りをしており、周辺光量落ちも少ないのが印象的です。ちょっと前までは標準ズームレンズで星景写真を撮るなんて、解像度・描写的に満足のいくものには“絶対に”ならないというのが定説でしたが、それが全く違うものに変わりました。

今回の星景写真の撮影で、非常に便利な機能がありましたのでご紹介します。28-75mm F2.8 G2には、コネクターポート(端子形状:USB Type-C)が備わっており、レンズとコンピューターを接続して「TAMRON Lens Utility™」というソフトウェアを使用することで、レンズのカスタマイズやファームウェアのアップデートを行うことができます。TAMRON Lens Utilityにはフォーカスプリセットというピント位置を記憶させる機能があり、これが大変役立ちました。通常、昼間の撮影ではAFを使用しますが、星景写真の撮影ではMFが基本です。この切り替えをし忘れてピンボケ写真を量産してしまったり、星空のピントが合わせられず困ったりするのですが、TAMRON Lens Utilityを使用して昼間のうちに無限遠の位置をレンズに記憶させておけば、撮影時に一発で呼び出すことができます。しかもAFに設定したままでも自動でMFに切り替わるので、途中でピントズレを起こすことがありません。これは本当に便利だと思いました。星景写真撮影ではぜひとも活用していただきたい、おすすめの機能です。

朝焼けを撮影。F値を絞り込んだ時の描写力に思わずため息が・・・

星空撮影のあとで、見事な朝焼けに出会いました。ぽっかりとシルエットを見せた利島へ続くような岩礁。そこへ極細ムーンが昇ってきました。そしてTOPの写真へとつながります。液晶モニターにこの画像が映し出された瞬間、あまりにキレのある描写にため息がもれました。

焦点距離:28mm 絞り:F8 シャッタースピード:15秒 ISO感度:800 使用カメラ:ソニー α7 III ハーフNDフィルター使用、Photoshop Lightroomで画像処理

こうした撮影ではハーフNDフィルターを使い、F値を絞り込んで、スローシャッターで波の動きを均一化させて撮影することが多いです。三脚を最も低い高さになるように設置して、奥行きを感じられるような構図にしました。

28-75mm F2.8 G2は、絞り開放にしてもシャープな像を結ぶので、絞り込んだ時のバキバキ感にぞくぞくしました。この時間帯でもTAMRON Lens Utilityのフォーカスプリセットが役立ちます。フィルターなどを使用する際にピントリングやズームリングに触れることはよくありますので、その度に記憶した無限遠のピント位置を呼び出していました。一度使うとあまりにも便利すぎて他のレンズを使用するのが面倒になりそうです。

最後に嬉しいおまけのカットです。そろそろ帰ろうかなと思った時、車に太陽が映っているのを発見しました。振り返るとワイングラスになった太陽が!早く帰ろうとした自分を呪いました・・・

焦点距離:75mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:400 使用カメラ:ソニー α7 III

焦点距離:75mm 絞り:F8 シャッタースピード:0.5秒 ISO感度:400 使用カメラ:ソニー α7 III

タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)を使用してみて

風景や夜景撮影などに出かけるときに、無理やり単焦点レンズを何本か持っていこうとしてしまうことはないでしょうか。しかし、そんなときは他にも持っていくものがたくさんあるし、結局バッグが重くなって、疲れてしまい後悔することもありました。やはりそんなに簡単で都合のよいことはないな・・・と写真家を名乗っている私自身でさえ、常日頃からそんなことを考えていましたが、28-75mm F2.8 G2がそんな思いに応えてくれました。今回の撮影ではほぼ丸一日、どの時間帯でもこのレンズ1本を使用しました。間違いなく、28-75mm F2.8 G2は万能ズームレンズです。

私へレンズについての質問をいただくときに「1本で全部済ませられませんか?」という相談はよくあります。いつも回答に困っていたのですが、これからはまず、タムロンの標準ズームレンズ、28-75mm F2.8 G2を使ってみては?という返答をしようと思います。

写真家プロフィール

成澤 広幸 Hiroyuki Narisawa

1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスフォトグラファー・映像作家。公益社団法人日本写真家協会(JPS)正会員。富士フイルムFPS会員・アカデミーX講師、ニコンNPS会員。星景写真・天体写真・タイムラプス撮影を得意とし、星空・タイムラプス撮影のセミナーを多数開催。TVなどのメディア出演も多数。Youtubeでの活動を本格的にスタートし、星空撮影・タイムラプス撮影、天文情報など、さまざまな情報発信に努めている。著書「成澤広幸の星空撮影塾 決定版」「プロが教えるタイムラプス撮影の教科書」など。月刊天文ガイドで「星空撮影QUICKガイド」を連載中。

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TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)

ソニー Eマウント (フルサイズミラーレス一眼カメラ用レンズ)
タムロン28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)は、高い評価を頂いてきた28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)」から、第2世代「G2」として、さらなる進化を遂げた大口径標準ズームです。高画質・高解像を実現し、AFの高速化と高精度化を達成しました。広角端での最短撮影距離0.18m、最大撮影倍率1:2.7を実現。新デザインの採用により操作性や質感も向上しました。さらに、独自開発した専用ソフトウェアにより、レンズのカスタマイズが可能になりました。

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