写真家 阿部 秀之氏が新製品のフルサイズミラーレス用高倍率ズーム タムロン28-200mm F2.8-5.6 (Model A071) を試し撮り

長かった自粛期間と見えてきた新しい生活スタイルですが、夏になったら旅行に行きたい、 海外は無理でも近場でいいから出かけたい、そして思いっきり写真を撮りたい!そう願っている写真ファンは多いでしょう。私もその一人です。そんな人たちに朗報です。タムロンから旅行にピッタリの交換レンズが登場しました。ソニーEマウント用の高倍率ズームレンズ TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)です。

タムロンには、単焦点、マクロ、広角ズーム、望遠ズームとさまざまなカテゴリーがありますが、忘れてならないのが高倍率ズームです。なぜなら28年前の1992年、高倍率ズームが大きく、重く、画質も悪く、まったく評価されていなかったときに、タムロンはAF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical(Model 71D)を発売。それまでの常識を打ち破って三悪を解決したレンズとして、世界的な大ヒットになったのです。以来、タムロンは自他ともに認める高倍率ズームのパイオニアとして、最先端の高倍率ズームを開発し続けてきたのです。

そして今回も成し遂げました。高倍率ズームとして広角端28mmで世界初の開放F2.8を実現したのです。しかも長さ117mm、質量575g、フィルター径φ67mmと超コンパクトです。小型軽量なフルサイズミラーレスカメラとの組み合わせで、これ1本で旅行のすべてのシーンを撮影できます。新たな高倍率ズームの歴史がいまスタートしたのです。ちなみに今回発売のレンズのモデル名 (A071)は、初代の(71D)のオマージュで名付けられています。

タムロンからレンズが届いた日は、ちょうど自粛要請が終わって、休業していたお店が開き始めるときでした。長年通っている近所のお寿司屋さんも久々に店を開けるといいます。そんなわけで記念すべきファーストカットは刺身の盛り合わせになりました。料理が撮れることはとても重要です。旅行先で料理を撮ることは当たり前になり、手軽にスマホでも撮れますが、やはりカメラで撮った写真は立体感がちがいます。また、料理を撮るには最短撮影距離が大切で、近寄れないレンズだとピントが合わずに小さくしか撮れません。しかし、このレンズは心配無用です。 最短撮影距離は広角端28mmで0.19m、最大撮影倍率は1:3.1。 望遠端200mmで0.8m、最大撮影倍率は1:3.8 と短いので焦点距離に関わらずグッと寄って撮ることができます。

一枚目の写真( 焦点距離:35mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:5000)

刺身の盛り合わせです。全体を自然に写せるように35mmで撮影しました。広角側ではピントの合う奥行が深い写真になります。

焦点距離:74mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:8000

にぎり寿司です。赤貝の身から外したひもの部分です。ファインダーでピントが合う範囲が少し浅くなるように撮りました。後で確認したら74mmでした。こういう撮り方をするとスマホとの差がでます。

特筆のスペック、開放F値2.8

フルサイズイメージセンサー用の高倍率ズームで、広角端28mmで開放F2.8。しかもフィルター径φ67mm 。このスペックは特筆に値します。一般には頑張ってもF3.5ですので世界初もうなずけます。一眼レフならレンズの明るさは光学ファインダーの見え方にそのまま影響します。明るいレンズを装着すればファインダーも明るく、暗いレンズを装着するとファインダーも暗くなります。ミラーレスは暗いレンズでもEVFファインダーが暗さを補って見せてくれるので明るさの違いはありません。しかし、ピントの合う奥行は開放F値によって明らかに異なります。広角端28mmで開放F2.8は単焦点レンズに相当する明るさです。広角でありながら背景をぼかした表現ができるのは、F値の明るいレンズだけの特権です。

焦点距離:28mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:640

焦点距離:28mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:640

我が家のリビングで撮りました。柔らかな光が好きなので今でも電球の照明を使っています。2点の写真はピントを合わせた位置が異なります。1点目は手前のシャンデリア。2点目は奥のランプです。広角28mmはピントの合う奥行きが深いイメージがありますが、開放F2.8で撮影距離も近いので、ピントが合う奥行きは狭く、まったく違うイメージの写真になりました。

高い描写力、ボケ味も満足

焦点距離:28mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/8000秒 ISO感度:100

広角端28mmで開放F2.8は素晴らしいスペックですが、気になるのは周辺光量です。中心部は明るくても、周辺で光量不足を起こして暗く写っていると低い評価になります。

その点を確認するため、絞り開放で空を撮ってみました。この日は関東が翌日から梅雨入りと予想された日で、午後から梅雨前線が北上して南から重たい雲が押し寄せてきました。でも、北側はまだ晴天です。四隅を確認してみると目立つ周辺光量不足は起きていませんし、周辺部の画像の崩れも気になりません。とても優秀な広角端 28mmといえるでしょう。

焦点距離:200mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:100

望遠端200mmの描写はどうでしょうか。近くの公園を散歩してみました。今年はコロナ禍で桜の開花も新緑もゆっくりと見ることはできず、公園の木々の葉はすっかり濃い緑色になっていました。それでもちょっと目を凝らすと、今ちょうど芽生えてきたような美しい葉を見つけることができました。撮影後に拡大すると葉の葉脈がとても綺麗に再現されていました。背景の木の葉が丸ボケを作っています。超コンパクトなレンズなのに口径食が小さく感じのよいボケ味といえます。

焦点距離:200mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:800

今年はアジサイが当たり年のようです。いつもなら満開になる前のつぼみのままにしおれてしまう木も多いように思いますが、今年はまだまだ咲き続けています。アジサイを撮ることはあまりないのですが、雨上がりに1枚だけ200mmでパチリとしました。柔らかな花びらの質感がとてもよく表現されています。背景のボケも手前のボケも、ボケ像に輪郭がなくフワッとしていい感じです。ズーム全域で最短撮影距離が短いので、旅行先で花を撮りたい人も満足できますね。

望遠端200mmの高い解像力

焦点距離:200mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:200

さて、最後の写真です。この春から羽田空港への新ルートが採用されました。うちは渋谷なので夕方15時から19時ぐらいまでの間、マンションの真上を飛行機が通過するようになりベランダからよく撮れます。ですが、さすがに200mmではアップにはなりません。200mmは本格的な望遠と呼ぶのには焦点距離が短いのです。しかし、あきらめる必要はありません。フルサイズ用のレンズで200mmなので、APS-Cで換算したら300mmを超えます。ズバリ、後からトリミングすればいいのです。

焦点距離:200mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:200

いかがですか。このぐらい大きく撮れていたら十分ですよね。もっと大きくしても画質的には大丈夫です。実はこのレンズは特に望遠端200mmの解像力が高いのです。タムロンホームページの製品情報ページで公開されているMTFがそれを示しています。動物園などでちょっと物足りない大きさだと思っても、トリミングを前提に撮っておきましょう。

TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)を使用してみて

レンズには一目惚れできるレンズと、じっくり使って良さがわかるレンズがあります。28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)は、完全に一目惚れタイプのレンズです。手にしたときから、こんなシーンで使おう、あんなシーンで使おうとイメージが湧いてきます。今回は自宅からの徒歩圏内だけの撮影で、これだけいろいろなシーンを撮ることができました。これが実際の旅行先だったらもっとさまざまなシーンに出会い、切り取ることができるでしょう。

今回の試し撮りとその結果を見ているうちにすっかり旅行のプランが完成しました。次にみなさんに会えるときには、旅行の写真で一杯のはずです。ご期待ください!

写真家プロフィール

阿部 秀之 Hideyuki Abe

東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。タムロン宣伝課を経て、86年よりフリー。ヨーロッパの風景、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フリーになると同時にカメラ専門誌への執筆をはじめ、数多くの写真展を開催。技術的な解説も得意とし、1987年からカメラグランプリ選考委員を歴任している。

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TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)

これまでタムロンが培ってきた高倍率ズームレンズの技術力やノウハウを注ぎ込み、ソニーEマウント用の28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)は誕生しました。高倍率ズームとしては世界初となるF2.8スタートの明るさを確保。広角端28mmから望遠端200mmにいたるズーム全域においても高い描写性能を実現します。

タムロン 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)プロモーションムービー

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