ミニチュア写真家 田中 達也氏の新作「これからも未来へ進み続ける~Heading for the Future~」とタムロンレンズへの思い

2020年11月に創業70周年をタムロンが迎えることを記念して、新たな作品「これからも未来へ進み続ける~Heading for the Future~」を制作して頂きました。当初はCP+(シーピープラス)2020のタムロンブース内にて皆さまに直接お披露目する予定でしたが、展示会の中止やその後の移動自粛と共に、作品の公開が延期される事態となりました。

そして、ようやく皆さまに公開する準備が整った今、見立て写真を撮り続ける思いから、今回の作品完成に至るまで、田中達也氏がどのように制作を進めていたのか、作品に込めた“タムロン愛”も含めてお話をうかがいました。

毎日欠かさず新しい見立て写真を投稿されている思いから教えて下さい

軽い気持ちで毎日投稿を始めたら、やめどきを見失ったというか…。ですが、週1回だと、さほどアイデアは浮かばないのでは、とも思います。「これはまるで〇〇に見える」という発想は、最初は誰でも思いつきます。そこからもう1周して深掘りしていくと、見る人が驚く見立てが出来上がるのではないかと思います。頭を回し続けるために数をこなしていくのは大切です。筋トレや走り込みと同じで、反復させて脳を訓練する感じです。

アイデアのストックは600~700くらいです。思いついたらスマートフォンにメモしています。これまでの見立ての作品数は、ちゃんと数えたことはないですが、3500作くらいでしょうか。

創作を続けるために重要なことは何でしょうか?

誰かに作品を見てもらうことも大事かと思っています。見てもらい、自分に負荷をかける。インスタなんかはすごく分かりやすくて、「いいね!」の数とアイデアの質が割に比例します。細かく作り込んでも自己満足で終わり、伝わらない場合もありますが…。何らかの形で「発表」するのは客観性を鍛える上でも有意義だと思います。

見立ての本質とは何だと思われますか?

“生活を豊かにするもの”です。例えば料理の際、ごろごろとしたブロッコリーを見て「まるで森のようだ」と思えばいっそう楽しくなるし、面倒な食器洗いもスポンジの凹凸を砂丘だと思えば、愉快な気持ちになれる気がします。

小学生が登下校中にやる“横断歩道の白線から落ちたらアウト”みたいに、あの頃を思い出して余計なことに頭を使うと世界の見方が変わる。それが見立ての本質だと思います。「あなたの見立て写真を見てブロッコリーのイメージが変わった」と言われるような、そんな作品をこれからもたくさん作っていきたいです。

「タムロン歴」について教えて下さい

“タムキュー”で親しまれている、中望遠マクロレンズ TAMRON SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model 272E)は以前から使っていて、このレンズで撮影した見立ての作品も多数あります。

最近では広角単焦点のソニーEマウント用TAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F051)が手放せません。価格も手頃で、広角なのに対象にものすごく寄れる。「これって僕のためにあるんじゃないか?」と思うほどです(笑)。ここのところ、3枚に1枚はこの単焦点で撮っています。

それまで使っていた別メーカーのレンズは広角すぎて、寄っても被写体に対して余白が出てしまいました。でもこの24mmはさらに近づくことができるし、トリミングの必要もない。広角なのに寄れるって、まさに“ミニチュアを撮るためのレンズ”じゃないですか?

それ以外にも、周りの風景を入れつつ小物を撮るような、野外での撮影にも向いていると思います。お気に入りの人形を持ち歩いて外で撮る場合など、普通なら寄って撮ると風景が収まりませんが、このレンズならバッチリです。

いま使っているカメラ本体は、ソニーのミラーレス一眼「α7 III」ですが、惜しいのはタムキューが合わないことです。早くソニーEマウント用の”タムキュー”を出してほしい、と切に願います(笑)。

田中さんからみたタムロンのイメージを教えて下さい

“かゆいところに手が届く”という感じです。ほどよい価格帯で「そうそう、こういうのが欲しかったんだよ」という“ちょうどいいところ”を突いてくる。肩ひじを張らず、写真が楽しくなるレンズをそろえているのがとても好きです。

今回の作品について教えて下さい

焦点距離:24mm 絞り:F/5 シャッタースピード:1/20秒 ISO感度:100
使用レンズ:TAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F051)

まず依頼を受けたとき、多くのカメラ好きが集まるCP+(シーピープラス)2020展示用とのことだったので、なるべく多くのレンズを使いたいと思いました。いくつかのアイディア候補のうちからモチーフは蒸気機関車を選びました。このようにレンズを何台も連結すると列車に見えてきませんか?

「先頭車両」のレンズキャップが煙室ドアの代わりで、タムロンのロゴは1世代前のものですがそれがまるで「D51」みたいなナンバープレートに見えたため敢えて最新のロゴではなくこのまま使用しました。上部に取り付ける煙突の作成はなかなか大変でした。この煙突部分も小さなレンズをイメージし、ペットボトルのキャップやパイプを組み合わせて作りました。

2本の汽車を展示し、低アングルからの迫力ある撮影を狙っています。実は以前にもカメラレンズを汽車に見立てるアイデアはあったのですが、ここまでの本数を使うのは初めてです。線路も敷き、その両脇に駅とミニチュアを設置しました。ミニチュアの中には思わずクスリとしてしまう「人たち」もいるので、ぜひ探してみてください。

汽車(列車)をモチーフに選ばれた理由は?

列車は走り続けます。同じくタムロンも70周年を越えて未来へ進む、そんなビジュアルにしたかったのです。あとは新幹線などではなくあえて蒸気で走る汽車にしたのは、70年という歴史の重みを表現したかったためです。

70周年を迎えるタムロンに一言お願いします

タムロンは僕の初期の作品を支えてくれた、思い出深いメーカーです。タムキューが使えず一時期は疎遠になりましたがTANRON 24mm F/2.8 Di lll OSD M1:2 (Model F051)で再び向き合えたので嬉しいです。見立て作家として来年で活動10年を迎えますが、タムロンの70周年に負けないよう、頑張っていきたいですね。

写真家プロフィール

田中 達也 Tatsuya Tanaka

ミニチュア写真家・見立て作家。1981年熊本生まれ。2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。以後毎日作品をインターネット上で発表し続けている。国内外で開催中の展覧会、「MINIATURE LIFE展 田中達也見立ての世界」の来場者数が累計100万人を突破(2019年11月現在)。

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タムロン 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F051)

“驚異的に寄れる”広角単焦点レンズが登場。Model F051は広角写真のバリエーションを広げる焦点距離24mm、最短撮影距離0.12mを実現しています。撮影のフットワークを軽くする小型・軽量設計でスナップに最適なレンズです。