フォトグラファー 石川 望氏がタムロン24mm F2.8 (Model F051)で朝のカフェと夕暮れの河川敷に差し込む光を求めてスナップ撮影

TAMRON MAGでは2回目の登場となる編集者兼フォトグラファーの石川 望です。普段は自転車、旅、アウトドア、そして街での撮影を、デジタル・フィルム問わず、ひたすら撮り続ける日常を送っています。

今回レポートするレンズは、2019年12月から2020年1月にかけて発売されたソニーEマウント用の、小型・軽量で気軽に使えるリーズナブルな広角単焦点レンズシリーズ3本(20mm F2.8、24mm F2.8、35mm F2.8)の中の、“広角の世界を自由に切り取る”と掲げたTAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F051)です。

以前、雑誌の記事を作る際に3本全て使用したことがあるので、どのレンズも馴染み深いのですが、3本の中でも24mm F2.8は、街でスナップ撮影する際に、使い勝手が良く、僕の中では理想の画が撮れる1本でした。

単焦点レンズならではのシャープな写りと、軽量コンパクトならではのフットワークを活かしながら良い光の時間帯に撮った、広角レンズならではのワイドな写りとロケーションの臨場感をご覧ください。

一枚目の写真( 焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:100)

多摩川河川敷にて、太陽が沈んだ後は、淡い空が広がるマジックアワーの到来です。友人が持ってきたシャボン玉と共に撮影会が始まりました。広角レンズのおかげでシャボン玉、夕景、人物のいずれも入れてしまう欲張りカットの撮影に成功です!

広角の自由な世界と、光を捉えることを探す1日

以前使用していたとき、特にこのレンズで気に入っていたフィーリングが、鋭い光の差し込むシチュエーションをクリアに捉える写りの抜け感(爽快感)でした。この写りを再現するためのロケーションを求めて、まずは朝のカフェで撮影することに。朝に撮影するということは光の良さはもちろん、人が多いところを避けられることもメリットのひとつです。24mmの焦点距離があれば店内の全景はもちろん、寄れるレンズならではのコーヒーのクローズアップもこれ1本で難なく撮ることが可能なはず。それにプラスして朝日が差し込む臨場感を同時に捉えることができるか、というのが僕の中の今回の課題でもあります。

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:250

新たなレンズを試すとき、僕は早朝の仕事部屋に光が差し込む時間帯に試し撮りをしています。白の飛び方、黒の締まり方、色の階調や写り全体の雰囲気を掴みます。以前24mm F2.8を使用したときに僕が感じたレンズの印象が「鋭い光をシャープに捉えてくれる」だったので、この写りでそれを再確認することができました。さて、光と朝食を求めて朝のカフェにでかけるとします。

焦点距離:24mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:100

週末は朝8時からオープンしているカフェ、代官山の「私立珈琲小学校」にて、朝食をとりながら写真を撮ることに。東京では朝早くから空いているカフェが少ないのでとても貴重です!カフェラテをオーダーして、スタッフさんの素早い動作を追いながら撮影を開始。ダイレクトに差し込む光は、エスプレッソマシンやカフェラテの表面をスポットライト的に照らしてくれています。撮影開始からすぐに、このレンズの得意なシチュエーションが到来しました。

焦点距離:24mm 絞り:F/3.5 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100

朝日が店内に差し込んでくる、写真好きにはたまらないシチュエーション。24mmレンズのワイドさを活かしながら、カフェラテ&店内の雰囲気を撮影させていただきました。さらに広い範囲を撮ることができる20mm F2.8だと、もっと楽に撮影できそうな状況ですが、24mmで撮れる落ち着いた雰囲気を狙いたいため、なんとか試行錯誤しながら構図を探します。

焦点距離::24mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/2500秒 ISO感度:100

このレンズシリーズの特長の一つが、最大撮影倍率1:2で撮れること。すなわちハーフマクロレンズとして近接撮影(最短撮影距離: 0.12mm)ができるので、カフェラテの表面に限界まで寄ってみました。ピントを合わせるのが難しいのですが、F2.8のボケ味が期待できるシチュエーションです。ここまで寄れたおかげで、出来たてのカフェラテ表面の質感がリアルに描写されていて、この写真を見返す度に飲みたくなってしまっています。この24mm F2.8があれば、僕にとってはマクロレンズいらずです。

焦点距離:24mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:100

私立珈琲小学校の担任(スタッフ)さんが、すばやい動作でエスプレッソマシンを操作していく様子とは対照的に、ドリップ時にはどこか凛として、ゆったりとした時間が流れています。このシチュエーションならば、僕はいつも標準~中望遠で時を止めるような画作りをするのですが、今日持っているレンズは24mm F2.8が1本だけ。なんとか構図を探しているとガラスの映り込みを発見することができました。単焦点1本だけで試行錯誤しながら発見する構図との出会いも楽しめます。

焦点距離:24mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100

朝食に頼んだサンドイッチとドリップコーヒーを食す前に、お店のテラス席の植え込みからこぼれる優しい木漏れ日と、コーヒーの表面が光る様子をアクセントに撮影。標準の焦点距離(50mmなど)のレンズを使うと、どうしても料理やコーヒーのクローズアップを撮りがちですが、広角レンズでは主役とその背景という位置関係を探すのが楽しいです。

焦点距離:24mm 絞り:F/3.2 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:100

カフェに差し込む朝の光に、ドミニカ産の豆で入れた、少しくすんだ色合いのアイスコーヒーがとてもキリッとした佇まいに写ってくれました。クリアな描写は単焦点レンズで撮る醍醐味です!広角で被写体に寄れるレンズのおかげで、主役とその背景をドラマチックに描写することもできました。

夕暮れのマジックアワーを求めて、多摩川河川敷に

カフェでの撮影を終えて次は、光を捉える撮影のために選んだ多摩川の河川敷。僕の中で撮影に困ったらここに行けば何か撮れるといった確実なロケーションです。今回、撮影フットワークの足として最適なサイクリング移動をしながら、夕暮れの光を狙うことにしました。ここでも24mm F2.8レンズ1本だけでの撮影です。

焦点距離:24mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:100

この日の日没時間は17:30頃。その1時間前に河川敷に到着したときには、すでに夕陽の柔らかい光が差し込んでいました。ひとまず夕暮れの河川敷の雰囲気が伝わるような写真を1枚。近所の自転車仲間とも合流できたので、皆で川沿いをサイクリングしながら夕景スポットを探して撮影することに。

焦点距離:24mm 絞り:F/5 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100

太陽があと少しで隠れるクライマックスの時間帯。実際に太陽が沈む時間は建物の影などで早まることが多いので、事前に夕陽に備えていたものの、どうしても日没時の撮影はロケ地決めや、撮影の設定などでバタバタしてしまいます。水面の反射も狙いたいため、急いで川に近づいて撮影しました。

焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1600秒 ISO感度:3200

川の側の水たまりは川の流れが直接入り込まないので、夕暮れ時には見事な水鏡として活躍してくれます。増水の際の倒木も良いアクセントに。今日はここにもう1要素をプラス、一緒に走った友人が何度もジャンプしてくれました。写真は引き算といわれることがありますが、広角レンズでの撮影では足し算をしていく手法も有効です。

焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:3200

だいぶ暗くなってしまったので、シルエット狙いで河川敷でのラストカットを撮影。これまで24mm F2.8レンズは、鋭い光のときに良い画が撮りやすいと感じていましたが、日没後の時間帯でも、単焦点レンズならではの抜けの良いキリッとした写真が撮れることを確認することができました。そして、夜でも撮れる機材を使ってしまうと、楽しくて撮影がいつまで経っても終わらないのが悩みです。

焦点距離:24mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/125秒 ISO感度:25600

帰り道、新幹線が真下を通る歩道橋で撮影をしながら24mm F2.8の撮影を終えました。今回はこの広角レンズ1本だけだったため、撮れる画が単調になってしまうのでは、と感じていましたが、冒頭にも記したように、“広角の世界を自由に切り取る”と掲げられている事を実感しながら、小型軽量レンズならではの軽快なフットワークを活かすことで充実した撮影ができた1日でした。

TAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F051)を使用してみて

僕が単焦点レンズを使う理由は、撮影時の徒歩や自転車の移動を考えて、いかに機材を軽くできるということと同時に、明るいF値で撮ることができる自由で立体感のある画作りや暗所での撮影、そしてできるだけシャープな写真を残したいということに尽きます。撮影先での移動を考えると、機材の軽量さは、その先に少しでも早く行くことができるか、ということの大きなアドバンテージになります。軽量で写りが良いズームレンズも使うことがありますが、出来る限り単焦点レンズの写りも残したいため、素早くレンズ交換して撮影、といったことを実践しています。このような単焦点レンズならではの小型軽量のフットワークを活かした撮影&良い写真を撮ることに、リーズナブルに実践しやすい今回の24mm F2.8レンズや、その他の20mmと35mmの広角単焦点レンズシリーズはとても最適だと感じています。

以前、広角単焦点レンズシリーズの3本(20mm F2.8、24mm F2.8、35mm F2.8)を使用した際、24mmレンズの光を捉えてくれる抜けの良いクリアな描写、黒がしっかりと締まってくれる画がとても印象に残っていて、街でのスナップや、普段使いで良い写真を量産してくれたこのレンズに感動していましたが、今回改めてインプレッションをさせていただき、同様の感触を再び得ることができました。「広角の世界を自由に切り取る」ように、引いたり、寄ったりしながら新たな構図やタイミングを探ったりと、とにかく撮るバリエーションを探す勉強にもなりました。

これまで写真の勉強といえば、標準(50mm)1本で、と言われることが多いですがが、どの焦点距離でも勉強や発見が可能と感じているので、この記事を見てくれた皆様は新たな発見や刺激のためにワイドな24mmの焦点距離も選択肢に加えて、ぜひ今回の小型軽量の広角単焦点レンズ24mm F2.8を試してみてください。僕は今度、このレンズ1本で旅に出たいと思っています。これ1本でどれだけ撮れる画のバリエーションを稼げるかにチャレンジです。

写真家プロフィール

石川 望 Nozomu Ishikawa

「Bicycle Magazine」「Bicycle Navi」「Bicycle Photo Magazine」など、数々の自転車雑誌の編集に関わってきた編集者兼フォトグラファー。撮影のジャンル、仕事やプライベートを問わず、デジタルとフィルム両方での撮影を行っている。現在、フィルムの楽しみを伝える媒体「ANALOGUE is」を準備中。

この写真家の記事一覧を見る

記事で紹介された製品はこちら

タムロン 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F051)

ミラーレス専用設計のソニーEマウントレンズシリーズに単焦点35mmが登場。Model F053はF/2.8と大口径でありながら最短撮影距離0.15mまでの近接撮影が可能。被写体が引き立つ美しいボケを楽しむことができます。

TAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F051)その他の記事はこちら