写真家 阿部 秀之の100-400mmとSP 24-70mmで撮る、スリランカ、ピンナワラの象の孤児園

3月末にドバイから横浜へ約1カ月かけて向かう大型客船MSCスプレンディダ号に乗りました。途中の寄港地にスリランカがありました。スリランカはインド南部のインド洋に浮かぶ島です。旧称セイロン。紅茶で有名です。船を使った長旅では寄港地で何をするか、どこへ行くかはとても重要になります。最初は紅茶農場と工場の見学に行こうと考えていました。

ところが、あれこれ調べているうちに象の孤児園という施設があることがわかりました。親とはぐれた子象、群れとはぐれた象たちを集め育て教育している機関です。ただ問題なのは場所です。コロンボ港からはバスで片道3時間かかるピンナワラというところだそうです。船の出港時間から計算すると現地には3時間ほどしかいられません。それでもどうしても行きたくてツアーバスに乗り込みました。

一枚目の写真( 焦点距離:100-400mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:400)

撮影時間が1時間もないと思うとちょっと慌ててしまいました。落ち着きましょう。群れから離れたところにいる象を見ていくと、いろいろな仕草をしている象がいるのがわかります。最初に気が付いたのは親子と思える大きな象と小象でした。でも、不思議です。ここは孤児園のはずですから親子はいないのではないでしょうか。後でわかったのですが、中には自然繁殖して生まれた小象もいるのだそうです。小象はピタッと寄り添っています。可愛いです。

撮影距離は遠かったです。400㎜まであって助かりました。100-400mmの手ブレ補正「VC」はシャッター速度で4段分あります。ファインダーが安定するので鮮明に見ることができます。

超望遠ズームと大口径標準ズーム、限られた状況でシーンを写し撮る

レンズは、遠くからでも近くからでも自在に写せるTAMRON 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(Model A035)に決めました。このレンズは高級ラインナップのSPの冠はありませんが、3枚のLD(異常低分散)レンズを採用。eBANDコーティングも施されていて描写はSPに引けを取りません。そしてもう1本、リニューアルされたTAMRON SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A032)を組み合わました。この2本があればほとんどの撮影が可能なはずです。

SP 24-70mm 焦点距離:55mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:800

コロンボ港を出たバスは最初高速道路を走っていましたが、しばらくすると街中に入り、街を抜けるとダラダラとした山道に入りました。ひとことで言うならジャングルを切り開いたような道です。一車線なので前に遅いクルマがいるとスピードを出せません。写真はバスの席から撮影したものです。鉄道もジャングルを切り開いているのがわかります。バスの窓はかなり濃い青緑系の着色がされていました。ホワイトバランスの詳細設定でマゼンタを増やして補正しています。

SP 24-70mm 焦点距離:24mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:200

途中に休憩などもあって到着したのは11時前でした。象の水浴びは12時までなので撮影時間は1時間のはずです。すぐに孤児園の看板がありましたが、シンプルというか、素朴というか、ちょっと心配になる出来栄えでした。象のいる川の岸まで行きたいのですが、そこは見物人が溢れかえっているらしいです。さて、どうしたものでしょう? 新しい24-70mmは旧タイプよりもさらに諧調が豊富になったように感じます。日影になったシャドー部が潰れていないことに好感が持てます。

100-400mm 焦点距離:230mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:400

岸の手前に象の水浴びが見られることを売り物にしているホテルがあり、中庭のテラスからよく見えるという情報をキャッチしました。走ってホテルに向かいます。あっ!あれです。たくさんいます。ファインダーをのぞいて、まずは1枚写してみました。でも、ごちゃごちゃいるだけで、どうも魅力的ではありません。

100-400mm 焦点距離:165mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:200

3頭の象が大人しく水浴びをしていましたが、急に2頭がじゃれ合い始めました。2頭ともまだ小象です。鼻を相手の鼻に絡めて相撲のように押し合います。じゃれているのでしょう。これはオモシロイと思いましたが、アッという間に終わってしまったので、この1枚しか撮れなかったのが残念です。


撮影に使ったカメラは約4500万画素の高画素機だったので、トリミングをしてみました。想像した以上に迫力のあるシーンになりました。100-400mmはものすごくシャープなので、これまで以上にトリミングにも耐えることがわかりました。フィルム時代は35mm判のトリミングは画質が低下するので嫌っていましたが、高画素のカメラが出てからは、トリミングも撮影法のひとつだなと納得しています。

100-400mm 焦点距離:195mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:200

群れと相当な距離を置き、我関せずと1頭で静かに水浴びをしている象がいました。セイロン象は耳が小さいのが特徴です。背中の上に泥浴びをした泥や木片が乗っています。泥浴びは泥パックのようなもので、虫や直射日光から肌を守り、肌に潤いとつやを与えるのだそうです。象のような大きな動物を写す場合ピントをどこに合わせるか迷いますが、やはり目にピントを合わせます。動体の質感を出したい気持ちはありますが、目にピントが合っていないとピンボケに感じられます。

100-400mm 焦点距離:400mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:400

時が過ぎるのは早いです。象使いが離れたところにいる象にも戻ってくるように指示を始めました。象は象使いのいうことをとてもよく聞きます。大きな身体の向きを変え、岸に向かって歩き始めます。400mmで象の動きを追います。100-400mmの質感描写は素晴らしく、手で触っているかのように皮膚感が伝わります。

100-400mm 焦点距離:400mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:400

象は歩きだすととても早いです。大人の象がどんどんと岸に向かっていきます。小象はまだ遊びたいのか、鼻を水につけながらもせかされるようについていきます。100-400mmのAFはスピーディなので、向かってくる被写体も追従できます。小象の肌はつるんとして軟らかそうです。

24-70mm 焦点距離:70mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:200

水浴びを終えた象の大群は、なんと一般道を超えて孤児園の施設に入って行きます。敷地は広く象たちは悠々と暮らしています。ここではなるべく自然に近い形で象を育て、人間との関わりといった教育もしっかりするそうです。孤児園でしっかりとした教育を受けて育った象たちは、寺院や象使いのいる施設へと引き取られていきます。どこにいっても大人気になることでしょう。象との間に柵はなく触れられそうなほど近いです。

24-70mm 焦点距離:70mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:200

小象にミルクを与えるアトラクションが始まるというので行ってみました。触ることもできるらしいです。川から戻ってきた象の写真を撮ってから行ったので、人垣が五重ぐらいになっていました。小象のミルクやりより目を引いたのは、カラフルな衣装の僧侶や、楽しげな家族連れの表情でした。みな象が大好きなのが伝わってきます。最後はこの1枚を撮って満足しました。新しい24-70mmはヌケが良く発色も鮮やかです。

100-400mm 焦点距離:140mm 絞り:F/13 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:200

船に戻って出港するとすぐに日没になりました。夕陽が綺麗な日は必ずといっていいほど100-400mmで撮影しました。強い逆光にはフレアとゴーストを抑えられるeBANDコーティングは強い味方です。毎日のように船で写真を撮っていると潮風が気になりますが、防汚コートが施されているからレンズの清掃は簡単です。太陽の光芒の中をタンカーが過ぎていきます。

最後に。

象の水浴びは午後もあるのだそうですが、それを見てからでは船の出港に間に合いそうもありませんでした。後ろ髪を引かれる気持ちでバスに乗りました。また来たいです。ホテルもあるので今度は1週間ほど滞在したいと思います。そのときも必ず100-400mmを持参すると心に決めました。

象の孤児園にご興味のある方はこちらをご覧ください。*英文ページとなります。
Pinnawala Elephant Orphanage(ピンナワラのゾウの孤児園)
https://lanka.com/about/attractions/pinnawala-elephant-orphanage/

TAMRON 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USDを使用してみて

100-400mmを初めて手にしたとき、想像とは異なるあまりの軽さに拍子抜けしました。望遠ズームを軽くするにはレンズの構成枚数を減らすのが一番と、他社よりも3~4枚少ない枚数で設計したそうです。望遠はレンズ1枚が大きいですから、枚数を減らせば軽くなるのはわかります。しかし、その影響で描写力が落ちてしまえば意味がありません。ところが構成枚数を減らしているのに素晴らしくキレる描写なのです。構成枚数を減らしても、望遠側で発生しやすい色収差を抑制するため3枚のLD(異常低分散)レンズを配置するなど手は抜かない設計です。今回は象の皮膚感を描写するのに大いに役立ちました。

また、軽さの秘密にもうひとつ、鏡筒の一部にマグネシウム合金を採用したこともあげられます。マグネシウム合金は、本来はザラザラとした仕上がりになりやすいのでレンズには向かないのですが、これを克服して見事な仕上がりになっています。
旅行用のレンズを選ぶときに軽量なことは大きなポイントになります。さらに定評ある手ブレ補正「VC」で得られる光学ファインダーの安定性もしっかりとしたフレーミングに役立ちました。

TAMRON SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2を使用してみて

24-70mmは新しいタイプになってからますます気に入っていて、すっかり自分の標準ズームとして定着しました。レンズ構成は同じなのですが、写りはグッと向上しています。これは加工精度の向上など、生産部門の努力のおかげです。加工精度が向上したおかげで夜景などの明るいボケ像で問題になる年輪ボケも軽減されました。今回はお見せできませんでしたが、ボケ味も素晴らしいものになりました。このレンズにもeBANDコーティングが施されて逆光にもさらに強くなりました。フレアやゴーストを気にせずに好きな位置から撮れるので撮影の自由度が上がっています。光の強いスリランカでもシャープでヌケの良い撮影ができました。

写真家プロフィール

阿部 秀之 Hideyuki Abe

東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。
タムロン宣伝課を経て、86年よりフリー。ヨーロッパの風景、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フリーになると同時にカメラ専門誌にも執筆をはじめ、現在は月刊カメラマンに「知らなきゃソンだぞー!」を連載中。
数多くの写真展を開催。技術的な解説も得意とし、1987年からカメラグランプリ選考委員を歴任している。

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SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A032)

磨き上げられた完成度。新世代大口径標準ズームレンズ。この高画質が、心を奪う。どこまでも繊細に。どこまでも緻密に。これが新たな大口径標準ズームレンズ。

タムロン 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(Model A035)

その一瞬を確かに刻む。高められた機動力と、高精度AFで捉えるその時を、どこまでも美しく。超望遠ズームに新たな選択肢。

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【連載】写真家 阿部秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る全6回