写真家 米屋 こうじ氏の超望遠高倍率ズーム18-400mmで、山形鉄道を撮る

秋の一日、山形県を走るローカル線「山形鉄道」を撮影して過ごしました。沿線には長閑な田園地帯が広がっています。相棒のレンズは18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD(Model B028)。ズーム比が22.2倍という、これだけズーム域の広いレンズですから今日はこれ一本のみ。機材が軽いと心も軽くなります。

一枚目の写真( 焦点距離:400mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:800)

早朝は朝靄の立ちこめるコンディションでしたが、さっそく望遠端400mmの威力を確かめようと、直線が見通せる場所で正面から列車を狙いました。鉄道写真は望遠レンズの使用頻度が高いジャンル。場所的な制約が多く「あともう少し焦点距離が長ければ」と思うこともしばしばです。このレンズの望遠端400mmは35mm判換算で620mm相当という超望遠の領域で、長さはじゅうぶんです。画面の不要な部分の整理から圧縮効果をいかした撮影、迫力のアップ狙いなど、鉄道写真にうってつけと言えます。これが収納時には全長約12センチというコンパクトに収まり、携行もラクで嬉しいところ。

焦点距離:18mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:400

車両アップの次は田園地帯を走る列車をワイド端18mmで黄金色の稲穂に寄って撮影しました。先ほどの望遠端で撮影した写真と同じレンズとは思えない画角の違いを実感。22.2倍のズーム比に驚きました。

焦点距離:322mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:800

田園を離れ、次に訪ねたのは古い木造駅舎。今回訪ねた「山形鉄道」は、山形新幹線も停車する赤湯駅と終点の荒砥駅を結ぶ全長30.5kmのローカル鉄道で大正期に全線開通しました。沿線には、そんな大正時代に建てられた木造駅舎が2棟残っています。そのひとつ「羽前成田駅」を駅前通りから望遠で狙うと、圧縮効果で駅の背後にある防風林が強調されました。駅のすぐ前から見るのとは違った、レンズを通した新たな発見がありました。

焦点距離:18mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:800

そのまま駅舎に向かい、今度はワイド端で駅舎内のきっぷ売り場の周囲を撮影。木造の雰囲気とともに、木目模様まで詳細に描写してくれました。

焦点距離:400mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/50秒 ISO感度:800

このレンズを使用して驚いたのは、かなりの近接撮影ができることです。ズーム全域で45cmまで寄って撮影ができます。望遠端400mmの最短撮影距離でもう一棟の木造駅舎「西大塚駅」の待合室にあるベンチの表面を撮影。年輪の浮き上がった木目の表情を切り取ってみました。

焦点距離:44mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:800

高倍率ズームながら、テレマクロとして使えるのに「何て自由自在なレンズだろうか」と感心。また、マクロ撮影ではカメラブレが心配ですが、手ブレ補正機構「VC」がアシストしてくれ、安心して撮影に専念できました

焦点距離:400mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:400

駅の撮影を終え列車に乗ると、線路脇にススキが穂を出しているのを発見。傾きかけた太陽に輝くススキを背景に列車を狙います。ピントは主題であるススキで列車は後ボケになりますが、ヘッドライトの滲みなどボケ具合に嫌みがなく好感が持てる描写です。

焦点距離:400mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:1250

また列車のヘッドライトを正面から拾った際のゴースト、フレアーも今回撮影したケースでは特に気にならない仕上がりでした。また、どちらも同じ望遠端400mmで撮影していますが、手ブレ補正機構「VC」の効果でカメラブレせずに撮影できました。特に日没直後のはシャッター速度も1/250秒と、焦点距離400mm(35mm判換算で620mm相当)の手持ちにはやや厳しいと思われましたが全く問題ありませんでした。

焦点距離:25mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:1600

「秋の日はつるべ落とし」と言いますが、太陽が西の山の端へ隠れてしまうと、夜の訪れはあっという間です。夕方と夜の間の僅かな時間、レンズをワイド側にセットし画面に細い「月」を入れ込んで列車を捉えます。低照度下で夕暮れ空の細やかな階調を再現してくれました。

焦点距離:42mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/3秒 ISO感度:3200

最後に夜の鉄橋を渡るシーンを流し撮りして一日の撮影終了。古い橋のトラスが列車のヘッドライトに浮かぶ様子を捉えることができました。

TAMRON 18-400mm F3.5-6.3 Di II VC HLDを使用してみて

高倍率に加え、近接撮影も得意、そして400mmの超望遠を気軽に携行できる「18-400mm F3.5-6.3 Di II VC HLD」(Model B028)。撮り手の「こうしたい」に応えてくれるのはもちろん、新たな発見を導いてくれるような、オールマイティー以上のレンズだという感想を持ちました。
(掲載許可:山形鉄道)

写真家プロフィール

米屋 こうじ Koji Yoneya

1968年山形県生まれ。生活感ある鉄道風景のなかに人と鉄道の結びつきを求めて、日本と世界の鉄道を撮影している。著書に新刊「ひとたび てつたび 」(ころから)、「鉄道一族三代記」(交通新聞社)、写真集「I LOVE TRAIN?アジア・レイル・ライフ」(ころから)ほか。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。

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