編集者・フォトグラファー 石川 望氏がタムロン17-70mm F2.8 (Model B070)ソニー Eマウント用で、東京の絶景を探してスナップ撮影

編集者兼フォトグラファーの石川 望と申します、皆様はじめまして。仕事・プライベート問わず、自転車や旅、アウトドアや街での撮影を、デジタルやフィルムで撮り続ける日常を送っています。

今回、2021年1月14日に発売となるAPS-Cサイズ相当ミラーレス一眼カメラ専用のF2.8通しのズームレンズ TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)を試用する機会を頂きました。早速、フルサイズのカメラSONY α7RIIIに付けて、冬の張り詰めた空気感が漂う、東京ならではの絶景を撮るために撮影散歩にでかけました。

僕の普段の撮影のフットワークは自転車または徒歩と電車移動がメインのため、機材の重さで疲れてしまわないように、なるべく軽量・コンパクトな機材をチョイスしています。同時に“画質の良さ”と“F値の明るさ”、そして“使いやすさ”もできる限り重視しています。そのため35mm、50mm、85mmなどの単焦点レンズを組み合わせることが多かったのですが、この17-70mm F2.8のズームレンズは、どの焦点距離でもF2.8から使用でき、フルサイズのα7RIIIに装着すると自動的に画角が25.5-105mm相当で使用できるので、普段の撮影散歩にはこれ一本で全てカバーしてくれるズーム域です。そして、質量が525gと軽量ということも嬉しいポイントです。

これで単焦点レンズのような写りのクリアさ、シャープさ、立体感が表現できれば言うことなし。今回の撮影は、限られた時間の中での、ぶっつけ本番のファーストインプレッションとして撮影しています。撮影散歩のライブ感と共に、その写りをご覧ください。

一枚目の写真( 焦点距離:70mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:1000)

お台場海浜公園駅のホームから見ることができる、遠くに顔を覗かせた観覧車を、望遠側の70mmで手持ち撮影。135mm単焦点レンズで撮影したような、きりっとしたシャープさや画の落ち着きなど、撮影時のモニターでも写りの手応えを感じることができました。

“単焦点レンズ > ズームレンズ”の概念が変わる一本。

秋から冬に変わった東京のこの季節。散歩やサイクリングには寒いけれど、空はクリアで良い写真を撮るには絶好の季節です。いつもならば僕は35mmまたは50mmの単焦点レンズのどちらか1本だけを付けて街に出るのですが、今回は17-70mm F2.8のズームレンズ一本での撮影です。ズーム全域の画角と、レンズ性能をフルに生かした画を狙いたいということで頭はフル回転で、単焦点使用のときよりも思考回路は活発化。まずはレンズの基本性能を確かめるように、早朝の東京の街中から撮り始めました。

焦点距離:55mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:200

イーサン・ホーク主演の映画“ビフォア・サンライズ”の回想シーンのような、まだ人もクルマも少ない早朝の時間帯の静かな情景です。僕はいつも旅先では食事前に散歩しながら街を撮影します。そんなことを、今回は東京・丸の内にて。街の景色だけの画角内には何も主役となるものが写っていない写真で、このレンズはどれだけ雰囲気を出すことができるかを試してみました。

焦点距離:17mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:500

早朝から日中へ向けての時間帯。まだ光が低い時間帯の鋭い光を表現するために、露出を絞り気味にして(このときはF11)にして、紅葉と落葉後の樹木の影、八重洲・丸の内界隈のビル群を1枚の画に収めるといった、逆光時の欲張りな写真を撮影。イチョウの色も鮮やかに、その他被写体も破綻せずに描写してくれました。この画を見て、旅先でどんな条件でも撮影できると確信した、そんな一枚です。

焦点距離:70mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:200

上の写真の左上に見えるシルバーにペイントされたタワークレーンが気になって、望遠側の70mm(35mm判換算105mm相当)で撮影。このレンズには手ブレ補正機構「VC(Vibration Compensation)」を搭載していることもあり、日中の光であれば35mmや50mm単焦点レンズ感覚で望遠側もスナップ撮影することができました。ちなみに今回の撮影は、すべて手持ちでの写真です(いずれの写真も三脚未使用)。

焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/3200秒 ISO感度:100

試し撮りをしていくうちに特に気に入った点が、広角側(17mm)での爽快でクリアな抜け感です。旅先で青い空、開けた景色といった絶景に出会ったときは、このレンズの広角側(17mm)であれば、そのときの感動を、そのまま捉えてくれるはず。写真は羽田空港への新航路で都心でもよく見かけるようになった着陸間近の旅客機です。ビルを少し入れた構図にて。

焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:100

最近のTAMRONレンズは寄れることが特徴で、この17-70mm F2.8もそれに当てはまるレンズです。17mmの広角側で0.19m、70mmの望遠側で0.39mまで寄れるため、マクロレンズを携帯しなくても、必要十分なクローズアップを撮影することができました。この写真は17mmの広角側で限界まで寄って(0.19m)、さらにその際のボケ味も確認したいため、F2.8で撮影した一枚です。とろとろにボケたコップの縁と、ラテアートの質感がたまりません。

旅感と絶景を求めて、お台場へ。

早朝から昼頃まで基本性能を確かめながら撮り歩くことで、レンズの特性や使用に向いていそうなフットワークもだいぶ掴めてきました。撮り始めて気づいたことは、このズームレンズはどんな被写体、シチュエーションでも万能に使用できる、すなわちスナップでも旅でもポートレートでも撮れてしまう一本ということです。

そこで旅撮影をシミュレーションするために、開けた景色や、夕暮れの絶景にも出会えそうな、お台場エリアに向かうことにしました。旅とズームレンズといえば、TAMRONのフルサイズミラーレス用の高倍率ズームレンズ 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)を使用しているのですが、このレンズとの違いなども気になるところです。

焦点距離:17mm 絞り:F/22 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:100

お台場までのアクセスは新橋駅から出ているゆりかもめ東京臨海新交通臨海線。撮影好き御用達の先頭車両一番前の席で、景色を眺めては撮影することを繰り返して楽しく移動しました。写真はレインボーブリッジの下を通過する際に、スピード感とワープ感を表現するために、シャッタースピード優先(このときは1/30秒で、手ブレ補正機構がだいぶサポートしてくれているように感じます)に設定して撮影。旅の撮影では景色だけでなく、旅のライブ感を伝える視点も入れたりするのですが、この写真の場合は運転席側の窓枠がそれに該当。寄れる広角側はこんなときにも重宝します。

焦点距離:65mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:320

今回の撮影は単独で動いていたため、何か人物も撮りたいと思い、友人たちが運営スタッフとして関わっている「アート&コーヒー」がコンセプトの“ARTBAY CAFE”に立ち寄り、働いているところをさり気なく撮影してみました。いつもならば50mmか85mmのどちらのレンズで撮ろうかと迷うシチュエーションですが、後ろに下がれる距離も探りながらズームレンズなのでその中間をセレクト。さっと撮りたい旅の室内スナップには、ズームレンズは最適なのでは、と感じた瞬間です!

焦点距離:28mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:500

エスプレッソマシンでのコーヒーの抽出シーンを撮影。ピンポイントでしかカメラを固定できないようなエキセントリックな撮影状況でも、ズームレンズであれば構図決めが簡単です。F2.8で手前ボケを狙いながら撮影しました。

焦点距離:45mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:1000

期間限定のカラフルなティーサングリア。これは良き被写体と思い、出てきた瞬間にさっと撮影。普段なら35mmまたは50mm単焦点レンズを使って、被写界深度を浅めで撮るシチュエーションなので、ズームを45mmに設定。どの焦点距離でもF値固定(F2.8)で使えることは本当に便利で、以前に使用したTAMRONのフルサイズミラーレス用の高倍率ズームレンズ 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)との大きな違いの一つは、ここにあるのかと感じました。結論づけるには早いかもしれませんが、どの焦点距離でもボケを表現で使用したいならば、このレンズ選択が確実です。

夕暮れから夜はズームをフル活用して、バリエーション豊かに。

旅を想定したテストシュートは終盤かつクライマックスに差し掛かりました。旅や散歩の撮影では、日没時間や方向、太陽の動きを掴めるスマホのアプリを使用しながら移動することが染み付いているので、そのフットワークを活かしながら海と空が広がるお台場海浜公園に向けて移動していきました。ちなみに、初見の旅で夕暮れ時の撮影場所に困ったら、少しでも高い場所か川や海の側に行くことで、かなりの確率で良い写真を撮ることができます。旅写真好きな方はぜひ、気に留めておいていただければと思います。

夕暮れ撮影を楽しむ人ならば経験があるかと思いますが、空の色や光の感じが、あっという間に変化していくのがこの時間帯。その中で思いついたシーンを素早く切り取るのには、広角から望遠まで使えるズームレンズは本当に便利です。

焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:100

東京テレポート駅からお台場海浜公園への歩道橋を移動しているとき、お台場のシンボルでもある大観覧車がサンセット前の良い色の空に浮かび上がっていました。フェンス越しの場所だったため、できるだけフェンスが消えるように低いF値(F2.8)で、また、対象物だけを切り取るだけではなく、広角側で窓枠も入れた構図にコントロール。高速で静かなAFに終始頼りっぱなしでしたが、ピントが迷いそうなこのときだけはマニュアルフォーカスで。

焦点距離:70mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:100

ドラマチックな時間帯の逆光で光る路面、淡い空、写真好きにとってはたまらない状況が!しかし、このような場面だと空が白く飛んでしまったり、黒い部分が潰れてしまったり、大きくフレアがでてしまったりすることがあります。ですが、このレンズでは肉眼で見ている状況に近い感じで表現してくれ、耐逆光性能が極めて優れていると実感しました。このようなシーンに遭遇すると「もっと望遠があれば…」と欲張ってしまいそうですが、このレンズの望遠側70mm(35mm判換算105mm相当)でも街の雰囲気を捉えるには充分です。

焦点距離:17mm 絞り:F/3.5 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:100

アプリで日没時間と方向をチェックしていたこともあり、ベストな時間にお台場海浜公園に到着。奥行きを表現するのにうってつけな、フェンスが海にフェードしていくポイントを発見。昼にも感じていた広角側の抜けの良さはもちろん、夕暮れ時の複雑な色彩も描写してくれるので撮影するのが楽しくて、暗くなるまで空の変化をひたすら撮っていました。三脚を立てて、このレンズで日没時のタイムラプスを撮影するのも良いかもしれません。

焦点距離:36mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:800

お台場海浜公園からゆりかもめに乗って、新橋駅に戻ってきました。最後にSLで有名な新橋西口広場に寄ってみたところ、クリスマス用のイルミネーションが。被写界深度や玉ボケの撮影を試しながら、今回の17-70mm F2.8の撮影を終えました。色彩豊かな表現力や黒の締まり具合、手ブレ補正機構を活かしながら、夜の街中スナップ撮影を難なくこなしてくれると感じ、次回以降の撮影ではナイトフォトをもっと実践したいと思います。

TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)を使用してみて

巷では高倍率ズームレンズは“便利ズームレンズ”という言葉を良く聞き、このレンズもその名称で呼ばれるかもしれませんが、今回の17-70mm F2.8は”便利”というだけで片付けたくなく、いずれの画角でも単焦点レンズで撮る画に匹敵するような“高画質な画”が出てきてくれる。例えて表現するならば“単焦点レンズを数本合体させたレンズ”というところです。

APS-Cサイズ相当のミラーレス一眼レフカメラ専用レンズを、フルサイズミラーレス機で使用しましたが、通常撮影で必要十分なズーム域ということもあって、フルサイズ用のカメラにAPS-C用のレンズを装着していたことに、途中から全く忘れて撮影するくらい、使用して違和感はありませんでした。今回、ソニーの高画素機α7RIIIでの撮影ですが、この場合α7III相当の画素数になるとのことなので、よっぽどのトリミングをしない限り、通常使用において画素数が足りなくなるということはないハズです。

今回、1日をフルに活用し東京の街風景を駆け足で捉えた撮影でしたが、このズームレンズ1本で、散歩や旅的な雰囲気を、写真のバリエーションをズームレンズのフットワークで瞬時につけながら、高画質で納得のいく写真を撮ることがでました。今後は人物など何か主役となる被写体も入れながら、もっとストーリー性やライブ感溢れる写真を撮りたいと考えています。TAMRONの大口径標準ズームレンズ 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)は、僕のように単焦点レンズを組み合わせて使ってきたユーザーも描写力に納得するはずです。APS-Cミラーレス機を使用している人はもちろん、フルサイズミラーレス機を使用している人も、ぜひ候補に入れて検討してほしいです。

写真家プロフィール

石川 望 Nozomu Ishikawa

「Bicycle Magazine」「Bicycle Navi」「Bicycle Photo Magazine」など、数々の自転車雑誌の編集や撮影に関わってきた編集者兼フォトグラファー。撮影のジャンル、仕事やプライベートを問わず、デジタルとフィルム両方での撮影を行っている。現在、フィルムの楽しみを伝える媒体「ANALOGUE is」を準備中。

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TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)

タムロン17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)は、弊社APS-Cサイズミラーレス一眼用として初の、大口径F2.8標準ズームで普段使いに最適な17-70mm (35mm換算:25.5-105mm相当)、ズーム比4.1倍を実現。さらに、非常に高い描写性能を発揮しています。

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