星空撮影初心者におすすめ!揃えるべき機材とタムロン17-28mm F2.8 (Model A046)実写レビュー【前編】

星空写真家・タイムラプスフォトグラファー・映像作家の成澤 広幸です。星景写真、天体写真、タイムラプス(昼夜問わず)を中心に撮影をしています。はじめてタムロンさんのレンズブログで執筆させていただくことになりました。過去のブログを見返すと、同じく星空を撮影している写真家では、前田徳彦氏、小林幹也氏、北山輝泰氏などの著名人が担当されているではありませんか・・・。名だたる星景写真家と同じ舞台で活動できることに喜びを感じずにはいられません。ぜひ諸先輩方による過去のブログもご覧ください。
さて、今回はフルサイズミラーレス用ソニーEマウント大口径超広角ズームレンズ TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)で撮影した星景写真の作例と、使用した感想をご紹介したいと思います。
特に星空撮影初心者の方向けに、このレンズをおすすめするポイントだけでなく実際に星空撮影をする際に必要な機材や注意点なども交えて前編・後編に分けてご紹介します。
一枚目の写真( 焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:25秒 ISO感度:6400 AWB)
・Kenkoプロソフトンクリア使用、Photoshop CCで画像処理
構図の約半分ほどを木で埋めることにより窮屈さを演出し、南の天の川と山の稜線を入れることで構図に広がりと奥行をもたせました。構図の左に輝く星は木星と土星です。ソフトフィルターを使用すると四隅では輝星が楕円に歪んでしまうため、楕円が気になりすぎない程度のところまで内側に配置することに気を使いました。
星空撮影の為に必要なアイテム
まず、星景写真を撮影するうえで最低限揃えておきたい機材をご紹介します。
カメラ
- ISO感度1600~6400で設定ができるカメラが望ましいです。
- 星空撮影は周囲に光のない場所での撮影となるため、淡い星の光を写すにはF値の明るいレンズと高感度カメラが必須機材となります。
広角レンズ(24mmよりもワイドなレンズがベスト)
- なるべくF値の明るいレンズを選びましょう。
- 地上風景も同一構図に入れるなど、作品性を広げるためにも24mmよりもワイドなレンズがベストです。
- 星景撮影ではフィルターを使用する頻度も高いためレンズに装着するフィルターとの相性もみながら選びましょう。
タムロンのレンズでそろえるなら、この2本がおすすめです
TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)
タムロン 17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)
フルサイズ用大口径超広角ズームレンズとしては驚きのフィルター径φ67mmを実現。軽量・コンパクトで、カメラとのバランスも良く、気軽に持ち運べ、幅広い撮影シーンに対応できるミラーレス一眼カメラ専用レンズです。
TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)
三脚
- 長秒露出時の風やシャッターショックによるブレを防ぐため十分な強度のものを選びましょう。
- 目安として三脚のパイプ径(足の太さ)が最低でも25mmあるものがベストです。

メーカー:Leofoto(レオフォト)
ライト
- 夜間に機材を背負っての移動を含めヘッドライト型が便利です。
- 足元を照らす強いライト、撮影中に手元を照らす目への刺激が少ない弱いライトが必要です。
- 光の扱い方は星空撮影にとってはマナー問題にも繋がるため、使い方に注意しましょう。

レンズヒーター
- レンズの結露を防ぐための必須アイテムです。結露を防ぐにはレンズの前玉を温めることが最も効率が良いため、レンズヒーターをレンズフード付近に巻いて結露を防止します。
- レンズヒーターELは電熱線タイプのため小さなレンズにも巻いて使用することが可能です。
- 発熱部を布などで覆えばより保温効果を高めることができます。

メーカー:AstroArts(アストロアーツ)
製品URL: https://www.astroarts.co.jp/shop/showcase/heater_aquila/index-j.shtml
ここでは、私が実際に使用している機材を記載していますが、家電量販店のカメラコーナーなどでも様々な種類が販売されていますので、使い勝手などご自身の機材に合わせて選んでみてください。
星空撮影向きのレンズとは?
近年はカメラボディ本体の進化がすさまじいです。私が星空を撮影し始めたころは機種が限られていましたが、今はどのカメラを使ってもそれなりの星空写真が撮れる時代になりました。
ではレンズはどうでしょう?レンズもやはり大幅な進化を遂げているのですが、星空撮影向きのレンズとなると本数はさほど多くないのが実情でしょう。星空撮影向きのレンズとはずばり画面全域において「平坦性」のあるレンズです。星空撮影の難しいところは、F値開放の状態で空にある小さな点を中心から周辺まで写さなければならないこと。加えて、性能と価格面のバランスを考えながらこの基準を満たすことはなかなか難しいというのが本音だと思います。
星空撮影初心者におすすめしたいレンズ選びのポイント
「どのレンズが星空撮影に向いているのかわからない」「星空向きと言われるレンズはどれも高価で大きい」など、星空撮影初心者の方が最初に悩むことのひとつがレンズ選びだと思います。星空撮影用と言っても、星空だけを撮影するわけでもないですし、比較的安価で小型・軽量で、昼夜を問わずに使用できるレンズはないものだろうかと悩む方も多いと思います。そして、その答えのひとつがTAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)であると言えます。
このレンズはフルサイズ対応のソニーEマウント用として発売されている超広角ズームレンズです。今回このレンズを使用して実際に星空撮影をしてきたのですが、結論として、入門機として星景撮影初心者の方だけでなく、登山などで荷物を軽くしたい方、重い機材は苦手という女性の方へも、おすすめしたいレンズです。もちろん、中上級者の方でも様々な用途で活躍するレンズです。それではこのレンズの魅力をお伝えしていきましょう。
星空撮影に最適な小型軽量サイズ
この17-28mm F2.8はめちゃめちゃ小さいです。「ほんとにこれで星が撮れるの?」と不安になるくらいです。星空撮影向きのレンズは画角が広いためどうしても大きく前玉が出っ張ってしまう傾向がありますが、この17-28mm F2.8は小型でレンズも出っ張っておらず、質量も420gと大幅に軽量なレンズであることが一つ目の特長です。
サイズ感を伝えるためにスマートフォン(iphoneXR)と並べてみました。星空適性のあるフルサイズ用レンズでここまで小さいものはなかなかないです。
ソニーα7SⅡにレンズをつけて、妻に持ってもらいました。女性の手にもおさまるコンパクトさで、扱いやすそうです。果たして実写性能はどうでしょうか?
星景撮影の基準F値、ズーム全域でF2.8の明るさ
星空撮影で重要なのはまずF値です。おおよその設定は、
- ISO 6400
- シャッタースピード20~30秒
- F2.8
という設定で撮影することが多いです。
仮にシャッタースピード20秒で適正露出だとして、F値がF4になった場合、ISO感度を12800にしないと同じ露出を得ることはできません。ISO12800まで上げるとノイズが気になるので避ける人も多いでしょう。別のパターンでシャッタースピード40秒だと同じ露出になりますが、そうすると地球の自転(日周運動)によって星が点で写らなくなってしまいます。そのため、星空撮影では「F2.8のレンズを使う」というのがひとつの黄金設定として基準になるのです。
超広角17mmから標準広角28mmまでの画角をカバー
「星空撮影でおすすめの焦点距離は?」と聞かれると「20mmよりも広角」と答えています。この17-28mm F/2.8 はその基準を満たす超広角17mmから始まり、標準的な画角で使いやすい28mmまでをカバーしています。星空撮影だけでなく、普段使いにも最適な焦点距離です。
焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:15秒 ISO感度:8000 AWB、画像処理なし
焦点距離:28mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:15秒 ISO感度:8000 AWB、画像処理なし
空一面に広がる星空だけでなく、「星空の一部を切り取るような望遠側が欲しいな・・・」という方にはTAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)という、これまた評価の高いレンズが用意されています。こうした着実なステップを踏めるようにラインナップをそろえている点も初心者ユーザーには安心できるポイントではないでしょうか。
TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)
タムロン 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)
ミラーレスに新たな風を。これまでにない美しさとやわらかなボケ味。目指したのは高画質と小型軽量の両立。世界を鮮やかに写す、フルサイズミラーレス対応、F/2.8大口径標準ズームレンズ。
星空撮影を意識した細かい配慮
私がこのレンズに対して好感を持てたポイントとして、細かいことなのですが「ピントリングの位置」があります。
星景写真では高湿度・低温で撮影する状況が多く、レンズの結露防止のためにレンズヒーターを巻きます。このレンズヒーター、レンズフード付近に巻いて前玉を温めることで最も効果を高められるのですが、多くのレンズがフード付近にピントリングがあるため、レンズヒーターを巻くとピントリングが隠れてしまい、気づいたらピントがずれていたとか、湿度が変化してピントを合わせ直したいときに一度レンズヒーターを外さなければならないなど、いろいろと面倒なことが起こるのです。
ですが17-28mm F2.8はピントリングが手前の位置にあるため、レンズヒーターを巻いた際にピントリングが隠れません。実は星景写真の定番レンズとして名高いTAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)も同じ仕様になっていて、非常に細かい部分ではありますが、実際に星空撮影をする立場から見て好印象な設計です。
余談ですが、レンズが結露するのは気温が低いからではなく、湿度が高いことが一番の要因です(眼鏡をかけたままお風呂に入ると眼鏡が曇るのと同じです)。星空写真は湿度との戦いです。特に温暖化が進む中で、ここ数年の夏場の湿度は非常に高く、髪の毛がびしょぬれになるほどです。あまりの湿度の高さにレンズヒーターを2個巻いた経験もあります。気温が20度を超えるあたりからカメラの熱ノイズは増えますし、高感度・長秒露出のためレンズは結露し、カメラにとっては非常にタフな環境での撮影となります。
実際の画像を検証してみましょう。
前置きが長くなってしまいましたが、実際に17-28mm F2.8で撮影した写真を見て頂きたいと思います。梅雨の時期でなんとなくもんやりしていて晴れ間が少ない中での撮影でしたが、なんとか星空を撮影することができました。
焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:5秒 ISO感度:6400 AWB、画像処理なし
しっかりと星像を確認するために、まずは日周運動の影響が少ない北側の星空を撮影しました。JPEG一発撮りです。次に、この画像の中央、左上隅、右上隅を拡大して星像の平坦性をチェックしてみましょう。
中央を拡大。
左上隅を拡大。
同じく右上隅を拡大。
どうでしょうか?カメラが1200万画素程度なのでもっと高画素なカメラを使うと違ってくるかもしれませんが、目立って星像が崩れている感じはありません。ダメなパターンだといろいろな収差で星が点にならないのですが、この結果はなかなか凄いと思いました。前玉の小さいレンズで小型・軽量、そして10万円程度という比較的安価な超広角ズームレンズにも拘わらず、これだけ平坦性が出せるのはやはり「ミラーレス専用設計」の恩恵なのでしょう。しかも、この周辺減光の少なさも注目すべきポイントです。「こんなに小さくて大丈夫かな?」という不安はここですべて払拭され、「これならイケる!」という確信に変わりました。
さて、前編はここまでです。星空撮影に17-28mm F2.8 (Model A046)が最適なポイントを中心に紹介させて頂きました。後編は、実写した作例に加え、より魅力的な星景写真を撮るための撮影テクニックなども合わせてお伝えします。
写真家プロフィール

成澤 広幸 Hiroyuki Narisawa
1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスフォトグラファー・映像作家。公益社団法人日本写真家協会(JPS)正会員。富士フイルムFPS会員・アカデミーX講師、ニコンNPS会員。星景写真・天体写真・タイムラプス撮影を得意とし、全国各地のカメラ専門店・量販店で星空撮影セミナーを多数開催。カメラ雑誌・webマガジンなどで連載を担当。ミュージシャンとしての一面も持ち、自身のタイムラプスムービー作品には自らが作曲・演奏・制作した音楽で動画を演出している。Youtubeでの活動を本格的にスタートし、星空撮影・タイムラプス撮影、天文情報など、さまざまな情報発信に努めている
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