写真家 長瀬 正太氏が超望遠ズームレンズ タムロン SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2 (Model A022)で撮る超望遠マクロ

私が写真に夢中となったキッカケは草花のマクロ撮影でした。しかも、最初に手にしたマクロレンズは伝説のマクロレンズとも言えるタムキュー(Model 272E)。当時も菜の花や桜の撮影をしては「まさか自分の身近にこんなにも美しい世界があったとは」と驚き、それからは勤め先のお休みの度に出掛けては小さなお花の前で寝っ転がって写真を楽しんでいました。

そんなタムロンのマクロレンズをキッカケに写真家として活動している私にとって一際目を惹いたレンズがTAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2(Model A022)

600mmというと、野鳥や鉄道や飛行機、モータースポーツなどの撮影に使用されることが多い焦点域です。今回は描写性能と超望遠ならではの背景ボケをうまく生かし、花の撮影に使ってみようと思います。元々、200mm~400mmほどの焦点域での超望遠レンズでのマクロ表現に取り組んでいましたが、この600mmという未体験の焦点域ではどのような世界を見せてくれるのか、本当にワクワクとした気持ちで手にしました。

※TAMRONでは「撮影倍率1:1」の等倍レンズのことをマクロレンズと定義しています。ですので今回のご提案は「望遠レンズを使ったマクロ的な写真」になります。

一枚目の写真( 焦点距離:600mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度400

1枚目の写真は道路の隅に咲いていた春紫菀(ハルジオン)。背景には雑草が生い茂り、決してきれいとは言えません。それでもこのレンズのシャープさとボケの両面が見事に発揮されまるで咲く歓びを全身で表しているかのような一つの世界観を与えてくれました。

焦点距離:600mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度400

2枚目も春紫菀ですが、こちらは少し特徴的な草の葉っぱ(春紫菀以外の植物)のボケを生かしています。ツンツンとした尖った印象の葉を画面に入れることで、まるっとした春紫菀の花の可愛らしさを引き立てています。

焦点距離:600mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度100

そして、こちらがさっそく600mmを持ってウキウキしながら撮影した菜の花。とにかくこのレンズであれば前ボケも後ろボケも入れ放題なのですが、ボケを全体に入れる場合はなるべく同系色で画面内を満たすように撮影しています。優しい黄色に包まれた世界観はまるで夢の中のよう。

焦点距離:600mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度100

次は菜の花のほど近くに咲いていたバラです。こちらはご近所さんのフェンスに連なって咲いているのを以前から散歩中にチラチラとチェックしておりました。私はこのように連なっている状態(フラワーパークやお花畑にも多い)を探し、なおかつ、その中でも一輪、もしくは一つの群れが飛びでている状態を探します。そうすることで主役は際立ち、さらに前後に繋がる同系の花ボケが「この世界がどこまでも続いていくのではないか。」というような奥深さを感じさせてくれるのです。

そしてこちらが撮影現場です。閑静な住宅街の裏手にある川沿いの散歩道。ジョギングをしている人と挨拶を交わしたり、川のせせらぎを聞きながらの探索は心癒される時間です。

また実際にはこの道は側溝があるので自由に位置取りは出来ないのですが、このレンズの最短撮影距離は2.2m。この「2.2mの位置が最もボケやすい」というメリットを使うことで側溝を挟んでも思ったとおりの位置取りをすることが出来ました。そう考えると最短撮影距離が短い通常のマクロレンズでは届かないような、離れた場所にある被写体を背景を大きくボカして撮影できることは時に非常に大きなメリットになってくれます。

焦点距離:600mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度400

こちらはまた別の散歩道に咲いていた菜の花。人が通るあぜ道は空間として抜けやすいのでよく利用します。(画面左側1/3の位置辺り)。その抜けた場所に飛び出た花を配置し、前後を同系の花でサンドイッチしてあげると「こっちだよ!」と顔をひょっこりと出して手を振っているような可愛らしい1枚に。

焦点距離:400mm 絞り:F/6.0 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度400

ほぼ同じ場所でこちらは縦構図にて。カメラを縦にするとただでさえブレやすい超望遠域で主役の子を右下に配置するだけでも困難。でも、そんな時も強力な手振れ補正機構VCのお陰でじっくり取り組めました。通り道の先の葉が作る緑ボケの上に主役の黄色を乗せ、色の対比で際立たせています。また、主役の視線の先(画面左上)に背景となる菜の花の黄色と抜けた空間を配置することで「その先の世界への憧れ」といった感情を盛り込んでいます。

焦点距離:600mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度200

この黄色のツツジは和的で優しいとても繊細な色なので直射日光での強烈なコントラストがでないよう曇りの日を狙いました。ただし、曇っていても太陽のいる方向には陰影が出ますのでやはり少し飛びでている花を狙うのがコツです。左下から出ている茎の茶色い線と画面右上にいる花の視線を繋いだ先が写真の右上角へと抜けていくように撮影しています。このような対角線構図は花の視線の先を想像させることで「少し遠くを見ているような儚い美しさ」が表現できると思います。

焦点距離:550mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度400

こちらは枝垂れ桜です。枝垂れている前後(この場合は上下)にある花も枝もボケていて非常に幻想的ではないでしょうか。上を向いて空を背景にしてもコントラストが強くなりすぎないのは、曇天から差し込む非常に柔らかい太陽の光で見せているからです。

TAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2(Model A022)を使用してみて

今回、超望遠ズームレンズ「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2」を使ってみて私が感じたことは、何より超望遠600mmは「今までに見たことのない世界を見せてくれるレンズ」だ、ということでした。超望遠ならではの背景の溶かし込みだけでなく、ピントの合った部分はきちんとシャープに、お花の凛とした部分を表現してくれていて、そのバランスがとても心地よかったです。また、90mmのマクロレンズではとらえることが難しい、木に咲く花々の撮影では、600mm、最短撮影距離2.2mが最も生かされたと思います。ぜひともこのブログを読んで下さっているタムロンファンの皆さんにも超望遠レンズを使って新たな写真表現にチャレンジしていただきたいです。

写真家プロフィール

長瀬 正太 Shota Nagase

群馬在住の写真家。1975年大阪生まれ。草花のマクロの世界に惹き込まれたのをキッカケに写真にのめり込み、現在はWEB記事執筆、ワークショップ・撮影会・セミナー講師などを務める。その優しく柔らかな世界観が人気。日本写真協会会員、写真WEBマガジンXICO 講師、NiSi Filters OfficialAdviser

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