写真家 並木 隆氏がタムロン150-500mm F5-6.7 (Model A057)で写し撮る、超望遠ズームならではの花撮影

写真家の並木隆です。タムロンから新しく発売されたフルサイズミラーレス用の超望遠ズーム、TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)を使って花を撮影してみました。
超望遠レンズは“近づくことのできない遠くの被写体を大きく写すためのレンズ”というイメージが強く、花撮影とは結びつかないレンズだと思う方もいることでしょう。なぜなら、人が立ち入らないよう保護されている、または湿原や池などに咲く花以外であれば、近付いて撮影することができるので、超のつく望遠レンズは必要ない場合が多いからです。しかし、500mmの焦点距離でなければ狙えない被写体や効果がありますし、今回使用したTAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)は150mm側で60cmというマクロレンズ並の最短撮影距離を実現するなど、長い焦点距離に特化しただけではないレンズとなっています。
一枚目の写真( 焦点距離:150mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:640 使用カメラ:ソニー α7R IV)
150mm側の最短付近で撮影しました。この焦点距離で最短撮影距離60cmは未知の世界。ワーキングディスタンスは30cmくらい(レンズの先端から被写体までの距離)ですが、どのくらい離れたところの被写体にピントが合うのかを把握しておくと被写体探しが楽になります。AFでは最短撮影距離よりも近づくといつまで経ってもピントは合わず、そこから離れて最短撮影距離付近を把握するのは難しいので、MFで最短撮影距離までピントリングを回してから身体の前後移動でピント合わせを行うと、手軽に最短撮影距離で撮影が楽しめます。このとき、カメラのピーキング機能をオンにしておくと、MF時のピント合わせが劇的に楽になります。
TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)
ソニー Eマウント (フルサイズミラーレス一眼カメラ用レンズ)
タムロン150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)は、望遠側の焦点距離500mmを確保しながら、手持ち撮影も可能な小型化を実現。高画質な描写性能はそのままに、超望遠500mmの世界を手軽にお楽しみいただけます。追従性に優れた高速・高精度AFと、手ブレ補正機構VCの搭載により、超望遠域での手持ち撮影をサポートします。
超望遠ズームでとらえる花撮影の表現
焦点距離:500mm 絞り:F/13 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:4000 使用カメラ:ソニー α7R
木の幹の上部に絡みついたテイカカズラを見つけました。30mほど離れた場所からしか撮影できない状況でしたが、500mmという焦点距離のおかげでここまで引き寄せることができました。しかし、このように前ボケを入れる場合は注意が必要です。焦点距離が長いほどボケ過ぎて前ボケが大きく薄くなってしまうので、絞り込んでボケ具合を調整するのが基本となります。3mくらい離れたアジサイを前ボケに入れましたが、開放絞りでは薄いボケにしかならないので、F13まで絞り込んでボケ具合を調整しました。当然シャッタースピードが遅くなるので、ISO感度アップは必須となります。
焦点距離:150mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:4000 使用カメラ:ソニー α7R IV
1センチほどのハギの花を150mm側の最短撮影距離で撮るとこのくらいの大きさになります。開放では木漏れ日のボケが大き過ぎたので、F8まで絞り込んでボケ具合を調整しました。何気なく撮っていましたが、撮影した画像を見るとここまで寄っても収差が目立たず、ピント面はシャープ。解像力も高く、柔らかいボケと美しい画質には驚きました。
焦点距離:500mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:1600 使用カメラ:ソニー α7R IV
斜面に咲き乱れるアジサイを50m以上離れたところから狙ってみました。同じ範囲を焦点距離の短いレンズで近づいて撮影すると、目一杯絞り込んでも画面全体にピントを合わせるだけの被写界深度が得られないことがあります。ところが、今回の超望遠ズーム150-500mmでは、無限遠の撮影距離範囲の被写体で画面を構成すれば、理論上は開放でも全体にピントが合います。超望遠というと遠くの被写体を離れた場所から大きく写すイメージが強いと思いますが、無限遠の撮影距離で得られる深い被写界深度を得るという使い方もあります。
自然なボケ味と、高い解像力や逆行耐性から得られる安心感
焦点距離:500mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:500 使用カメラ:ソニー α7R IV
ピントを合わせたネモフィラを拡大すると、解像力の高さがハッキリとわかりました。単にその部分だけを追求しているのではなく、花や葉の柔らかい質感を残しながらバランスのとれた画質が絶妙です。これがタムロンらしさであり、このレンズにもしっかり継承されています。
焦点距離:500mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:1600 使用カメラ:ソニー α7R IV
中心部分の解像力が高いのは今の時代当たり前。ちょっと意地悪ですが、あえて画面の隅に被写体を配置してどの程度の実力があるのか試してみましたが、良い意味で期待を裏切られる結果となりました。ここまで端に配置しても、花びらの質感や細かな部分までしっかり解像しています。
焦点距離:150mm 絞り:F/5 シャッタースピード:1/3200秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7R IV
太陽が写り込む緩やかな流れのある水面を背景に撮影。逆光にどのくらい耐性があるのかを確かめたのですが、全てのカットでフレアは確認できず、コントラストの低下も見られませんでした。コーティングはもちろん、レンズの内部など見えない部分の逆光対策もしっかり施されているのを実感しました。逆光で撮影することの多い花撮影では安心感を得られる大切な部分です。
焦点距離:150mm 絞り:F/5 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:3200 使用カメラ:ソニー α7R IV
茎など細長い被写体のボケが汚いと、線が増えたりして被写体の輪郭が失われてしまうことがありますが、150-500mm F5-6.7は背景の葉のボケの線を残しつつも両側に向かってじわじわと滑らかにボケています。遠くの葉でもその傾向は変わらず、ムラのない滑らかで自然なボケ具合を持ったレンズということが実感できます。ちなみにこのときは、日陰の薄暗い場所だったのと弱い風で葉が小刻みに揺れていたので、ISO感度を3200まで上げてシャッタースピードを稼ぎ被写体ブレを防ぎました。
焦点距離:500mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:500 使用カメラ:ソニー α7R IV
このルピナスは1mほどの間隔を空けて咲いていて、見た目にはスカスカ。こういうときに望遠レンズが持つ圧縮効果を使うと密度の濃い花畑に変貌させることができます。通常は遠近感により手前の被写体ほど大きく、遠くほど小さく見えるのですが、距離に差があっても被写体の大きさの違いが少なくなるので、結果として差が縮まっているように見えます。望遠端500mmのズームレンズだからこそ、1mの間隔を感じず、これだけ密集して咲いているように見える作品が撮影できました。
TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)を使用してみて
150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057) は、500mm側のレンズ繰り出し量がわずかなので、150mm側とのホールディングバランスにほとんど違いがないことに好感を得ました。焦点距離が長くなるほど、最短撮影距離付近での手ブレの心配が出てきますが、安定したホールディングと手ブレ補正機構VCのおかげでかなり軽減されました。作品のコメントでも述べているように、ピント面の解像力は高く、ボケも素直で滑らか。色のりは強めではあるもののしつこさはまったくありません。濃い色はほんのり濃いめに、淡い色は透明感が出るという絶妙なセッティングです。
超望遠というと動体撮影向きというイメージが強いと思いますが、花撮影では、150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXDと、この焦点距離域でなければ撮影できない世界が存在します。是非、お試しください。
写真家プロフィール

並木 隆 Takashi Namiki
1971年生まれ。高校生時代、写真家・丸林正則氏と出会い、写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。花や自然をモチーフに各種雑誌誌面での作品発表。公益社団法人 日本写真家協会、公益社団法人 日本写真協会、日本自然科学写真協会会員。
記事で紹介された製品はこちら
TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)
ソニー Eマウント (フルサイズミラーレス一眼カメラ用レンズ)
タムロン150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)は、望遠側の焦点距離500mmを確保しながら、手持ち撮影も可能な小型化を実現。高画質な描写性能はそのままに、超望遠500mmの世界を手軽にお楽しみいただけます。追従性に優れた高速・高精度AFと、手ブレ補正機構VCの搭載により、超望遠域での手持ち撮影をサポートします。
タムロン150-500mm 野鳥/飛行機/鉄道スペシャルギャラリーのご紹介
タムロン公式サイトにて、150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)で撮影した、3名の写真家によるスペシャルギャラリーを公開中です。スペシャルギャラリーに掲載しているすべての作品を等倍にてご覧いただくことができます。
【タムロン 150-500mmで撮る日本の野鳥】
野鳥写真家の山田芳文氏によるスペシャルギャラリーです。野鳥撮影に適したレンズの特長やおすすめポイントを作品とともにご紹介します。
【タムロン 150-500mmで撮る飛行機写真】
航空写真家の佐々木豊氏によるスペシャルギャラリーです。超望遠500mmで撮影された迫力ある飛行機写真とともに、レンズの特長やおすすめポイントをご紹介します。
【タムロン 150-500mmで撮る鉄道写真】
鉄道写真家の山下大祐氏によるスペシャルギャラリーです。鉄道写真に最適なAF性能を兼ね備え、高い描写力でとらえた作品とともにレンズの特長やおすすめポイントをご紹介します。
TAMRON MAG 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)の記事一覧
鉄道写真家 山下 大祐氏が、タムロン150-500mm F5-6.7 (Model A057)で撮影する鉄道写真の魅力、全9作品を公開
鉄道写真家の山下 大祐氏による、フルサイズミラーレス一眼カメラ対応のソニーEマウント用 TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)の作品をご紹介します。鉄道写真を様々な表現でとらえた魅力あふれる9作品をご覧ください。
写真家 Shannon Wild氏が、新発売となる超望遠ズーム、タムロン150-500mm F5-6.7 (Model A057)で野生動物を撮影、全11作品を公開
写真家のShannon Wild氏による、超望遠ズームとしてコンパクトな、フルサイズミラーレス一眼カメラ対応のソニーEマウント用 TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)の作品をご紹介します。南アフリカの自然をバックにチーターをとらえた全11カットをご覧ください。
写真家 山田 芳文氏が、新発売となる超望遠ズーム、タムロン150-500mm F5-6.7 (Model A057)で野鳥を撮影、全9作品を公開
写真家の山田 芳文氏が、手持ち撮影も可能な、フルサイズミラーレス専用設計ソニーEマウント用の超望遠ズームレンズ TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)で野鳥を撮影しました。全9カットをご覧ください。
スポーツフォトグラファー 水谷 たかひと氏がタムロン150-500mm F5-6.7 (Model A057)でロードレースを狙う
スポーツフォトグラファー 水谷 たかひと氏が、新発売となるフルサイズミラーレス一眼カメラ対応のソニーEマウント用超望遠ズームレンズ TAMRON 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD(Model A057)でロードレースのライダーを撮影。優れたAF追従と描写力による作品を是非ご覧ください。