星空写真家 小林 幹也氏によるタムロンSP 15-30mm G2と17-35mmでつくる星景タイムラプス

星空写真家・タイムラプサーの小林 幹也です。これまで、SNSで星景タイムラプスを100本以上公開してきました。今回は、星空撮影で生きる圧倒的な解像力をもつTAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)と軽量で機動性を生かせるTAMRON 17-35mm F/2.8-4 Di OSD (Model A037)を使って星景タイムラプスを制作してみました。
一枚目の写真( 使用レンズ:Model A041 焦点距離:15mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:6400 )
使用レンズ:Model A041 焦点距離:16mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:6400
フィルター:Lee soft no.1 撮影場所:長野県東御市 撮影日:2018年12月31日
星景タイムラプスは、連続して撮影した星景写真をパラパラ漫画のように早送りで再生して、アニメーション化したものです。作品のクオリティーは、一枚一枚の写真に大きく依存します。クオリティーの高い作品作りには、レベルの高い星景写真を素材に使用しなければなりません。そのためには、周辺まで良像が得られる解像度の高いレンズを使用しなければなりません。
開放で周辺でも良像のレンズ タムロンSP 15-30mm F/2.8 G2
私が4年間使用してきた先代のSP 15-30mm F/2.8は、SNSでの作品公開当初から「神レンズを超えたレンズ」と評するコメントをいただいていました。この2代目のレンズに期待しないわけがありません。今回の撮影で、期待通りの描写はもちろんのこと、使い勝手の向上もあり、今後の私のメインレンズの1本となると思いました。
今回の撮影は、固定撮影です。20秒も露出する星空の撮影では、移動する星々が長く伸びて写ってしまいます。南東側を撮影する場合、天の赤道にあたる右上隅が大きくその影響を受けます。しかし、天の北極に近い左上隅は、その影響が少なく、レンズ本来の星像を見ることができます。
今回、開放値で撮影した映像でも、サジタルコマフレアは見られず、周辺まで高い解像性能が発揮されています。また、キヤノン(EFマウント)用に用意されたリアフィルターホルダーにより、レンズ後部にソフトフィルターを取り付けることができます。超広角レンズでは、レンズ前に無理にソフトフィルターを使用すると周辺で大きく作用してしまい、惑星などの明るい星が見苦しいほど大きな星像になってしまいます。このリアフィルターホルダーにより、ソフトフィルターをレンズ後部に装着することができ、効果が画面全体に均一に働き、より自然に近い美しい星空を撮影することができました。
使用レンズ:Model A041 焦点距離:15mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:6400
フィルター:Lee soft no.2 撮影場所:静岡県富士宮市朝霧高原 撮影日:2018年12月30日
富士山を中心に据えて、そこからのぼる冬の星座「オリオン座」を撮影しました。富士山の右側の雲が、星空だけでは単調になる映像を生き生きとした自然の営みを演出してくれました。撮影はカメラ三脚を使用した固定撮影ですが、映像編集で3:2の画像を16:9の映像サイズ変換する際に、パン移動の演出をしています。
使用レンズ:Model A041 焦点距離:15mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:6400
フィルター:Lee soft no.1 撮影場所:群馬県嬬恋村 撮影日:2019年1月3日
群馬県嬬恋村での撮影です。初めの2シーンは、ポータブル赤道儀を使用して「オリオン座」の動きに合わせて水平パン移動での撮影です。遠く見える山が浅間山です。レンズ後部に前回より効果を少し落したソフトフィルターを装着しています。最後のシーンの画面上に、星景写真としては明るい光源がありますが、ゴーストやフレアは出ませんでした。
TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2を使用してみて
開放でもコマ収差が無く使える「超神レンズ」です。今回の撮影でも、天文雑誌のコンテスト等で、他社の広角ズームレンズを抑えて、このレンズが入選作品の多くを占めているのがうなずけます。以下は、3か所での撮影をまとめて星景タイムラプス映像として編集したデモ作品です。
軽量で周辺星像のよい使えるレンズ タムロン17-35mm F/2.8-4
今回の撮影にSP 15-30mm G2と共に携行した17-35mm。SP 15-30mm G2と同じカメラボディ、場所、日時の撮影なので、両者の比較ができると思います。SP 15-30mm G2より、広角側が1mm長くなっていますが、画質はSP 15-30mm G2と比べて遜色ありません。広角側を多く使用するのであれば、むしろその軽さによる携帯性が武器となり、装備を軽くしたい山岳星景撮影などでは、大変重宝することでしょう。
使用レンズ:Model A037 焦点距離:19mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:6400
撮影場所:静岡県富士宮市朝霧高原 撮影日:2018年12月30日
良星像が生かせるように最後のシーンはポータブル赤道儀で恒星追尾して撮影してみました。恒星追尾撮影することで、星の日周運動による流れがなくなり、このレンズで撮影した画面のどの部分も素晴らしい星像であることがわかります。
使用レンズ:Model A037 焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード: 20秒 ISO感度:6400
撮影場所:長野県東御市 撮影日:2018年12月31日
長野県東御市での撮影です。航空障害灯や街灯などの星景写真としては明るい光源が多数ありますが、ゴーストやフレアは見当たりません。
使用レンズ:Model A037 焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:6400
撮影場所:群馬県嬬恋村 撮影日:2019年1月3日
群馬県嬬恋村での撮影です。後半の2シーンでは、レンズ前にソフトフィルターを装着してみました。レンズ前であれば、インターバル撮影の途中に装着することも可能です。星の色が強調され明るい星の存在感が増して、肉眼で見える星空に近くなりました。
TAMRON 17-35mm F/2.8-4 Di OSDを使用してみて
17-35mm F/2.8-4は、軽くて開放でも良像が得られる「使えるレンズ」です。一番広角側の17mmは、F/2.8という明るさで使用できます。あえてF/2.8通しをするために重量化しないこの軽さには十分な意義があります。機材が多くて少しでも軽量にしたい場合、山行への携行にできるだけ装備を軽くしたい場合、普段から持ち歩きたい場合などでもしっかりとした性能を求めて選ぶレンズだと思います。これからは、普段からリュックに入れて同行させたいと思いました。こちらも同じ3か所での撮影をまとめて星景タイムラプス映像として編集したデモ作品です。
写真家プロフィール

小林 幹也 Mikiya Kobayashi
1958年さいたま市(旧大宮市)生まれ。学生時代から、天体写真を趣味にして、ハレー彗星接近の際に埼玉県皆野町に天体ドームを自作。YouTubeにspitzchuのネームで100本を超える星景タイムラプスを公開中。
・2016年秋のフジテレビ月9ドラマ「カインとアベル」のオープニングとエンディングでの映像提供 ・科学番組、デジタル教科書、科学系Webページ等に画像や映像を提供中・「月刊 天文ガイド」2018年8月号読者の天体写真月例コンテスト「最優秀作品賞」・2019年1月EIZOガレリア銀座にて作品展「写真とタイムラプスで見る星空風景」開催・Facebook「星景写真部」管理人
【写真家サイト】
- Instagram:https://www.instagram.com/spitzchu/
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- BLOG:http://m45.jp/spitzchu/