写真家 藤村 大介氏がSP 15-30mm F2.8 G2 (Model A041)で撮るバルト三国の旅 街並み編

バルト三国なんて聞いたことはあるけど実はよく知らない、という人が多いのではないでしょうか。今回はそんなバルト三国の町並みを、景観撮影に最適なズームレンズ、それも超広角ズームTAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)を持って旅してみました。海外の撮影旅行は、信頼する機材をできるだけ少ない量で持って行く、これは鉄則ですね。

一枚目の写真( 焦点距離:15mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:64

どうですか、この街並み!美しく可愛らしく、どことなくメルヘンチックな御伽の国のような街並み。ここはラトビアのリガ。私はこの景観に憧れて、ずっと行きたい国の上位にありました。思い切ったワイドで可愛らしい建物や街並みを、全部引っくるめてみました。

ラトビアを歩く

バルト海に面したこの街は、近代は激動の歴史を繰り返してきました。日本人の多くはバルト三国というとロシアの一部であったとの認識の方が多いのではないかと思いますが、もともと三国共に独立国家だったのです。しかし17世紀頃からスウェーデン、ポーランド、ロシア帝国に支配され、第一次世界大戦後に独立しました。しかしその後ソビエト連邦に併合されます。第二次世界大戦の時はナチス・ドイツに支配されますが、大戦末期にはまたソ連が占領します。現在の体制になったのは1990年と最近の事なのです。

焦点距離:17mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:64

レンガのアーチと石畳の路地を歩く老人です。遠近感と構図による視点誘導、これらが上手く活用できるのは広角レンズの特徴です。日の丸構図が面白い構図に見えるように、石畳を手前までハッキリと入れています。クリアながらトーンの再現性に優れたレンズだからこそ、このような輝度差の激しい場所でも表現が可能になります。

焦点距離:30mm 絞り:F/5 シャッタースピード:1/20秒 ISO感度:64

ラトビアは世界一美しい国とも言われています。歴史的な建造物や街並み、特に歴史地区は世界遺産にも認定されており、どこを見ても感動の収まる事がありません。初秋の黄葉と優しい光を狙いました。高速フォーカスで、一瞬のタイミングを逃さず撮影できました。

焦点距離:15mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:64

ユーゲントシュティール建築群は、いわゆるアール・ヌーヴォーです。よく見ると無表情の人の顔や動植物など、とても不思議な空間を作り上げた建築群です。狭い路地にひしめき合うように建てられた大きなビルは同じ物が無いデザインで、とても個性的な唯一無二の建築です。

焦点距離:15mm 絞り:F/22 シャッタースピード:1秒 ISO感度:32

ユーゲントシュティール建築群は普通に住居やオフィスとして利用されています。不思議な空間の演出のために思い切ってスローシャッターに。抜群の手ブレ補正能力で手持ち撮影でも1秒というスローシャッターで撮影できました。

焦点距離:17mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:64

広場の周りには可愛い色使いの建物が並び、レストランやお店が入っています。広角で見上げている為にパースが付き、遠近感が強調されています。広角レンズを使う時の構図は、余分な物が入っていない事がコツです。

焦点距離:焦点距離:15mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1.3秒 ISO感度:64

夜景が最も美しく輝く時間帯。それはトワイライトの頃ですね。通常なら三脚を使用するところですが、最新VC機構を信じ手持ちでチャレンジ!1.3秒というスローシャッターでも見事にブレずに撮影できました。

リトアニアを歩く

リトアニアの首都ヴィリニュスです。ドイツやオランダなどの西ヨーロッパの古い街並みとは違い、多くの建物は石造りです。飾り気の無い路地裏にも風情を感じられるのは、この国の風土がシンプルで素朴ながら放置されたような粗雑さが無いところかも知れないですね。クリアでトーンの描写が良いSP 15-30mm F/2.8 G2だから、質感を求めて石の街の雰囲気を表現しました。

焦点距離:15mm 絞り:F/11 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:64

路地裏に射し込む夕方の光。お洒落な飾りに伸びる影。超高画質レンズならではの石壁の質感が感じられます。窓に光る太陽の反射も美しい光芒が出ました。AXコーティングのお陰でフレアやゴーストの心配も無く、安心して撮影できました。

焦点距離:15mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:64

通常、超広角レンズはボケ味を楽しむという撮り方をしないものですが、このレンズは最短撮影距離がズーム全域で28センチと短く、広角接写の技法が容易に使えるのです。接写をすれば背景はボケ易くなるのですが、円形絞りの採用により非常に滑らかで優しくボケてくれます。背景に表情を持たせたい作品にはとても嬉しい性能です。

焦点距離:15mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/600秒 ISO感度:64

イメージを印象的に見せるのに、モノトーンは効果的です。当然ですが、色は白・黒と単色しかなく、コントラストと階調が写真の良し悪しを左右します。このような極端な逆光とシルエットの場合、多くはディストーションやフレアによるコントラストの低下や階調が潰れてしまうなど、レンズの性能による画像の劣化が見られます。その点、新しいSP 15-30mm F/2.8 G2は安心して作品づくりに集中できますね。

焦点距離:22mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/4秒 ISO感度:64

左右で対象でありながら非対称な窓。不思議な造りですね。正面から真っ直ぐに狙ってみました。広角レンズに有りがちな歪みも少なく解像度は高く、建築撮影には最適の広角レンズです。

焦点距離:30mm 絞り:F/7.1 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:64

窓ガラスに反射しているのでしょうか、光が可愛いバイクに当たり、標識も可愛らしさの演出に役立っています。

焦点距離:30mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:5秒 ISO感度:64

良い街並みは絵になります。もちろん夜もシャッターチャンスです!

焦点距離:15mm 絞り:F/8 シャッタースピード:20秒 ISO感度:64

強い点光源の多い夜景撮影ではレンズの描写力が大きく影響します。フレアやゴースト、滲みや歪み、収差など、あらゆるレンズの弱点は夜景の時に分かりやすく現れます。しかしSP 15-30mmに目立った弱点は見つけられませんでした。

焦点距離:30mm 絞り:F/9 シャッタースピード:5秒 ISO感度:64

大都市での夜景は色に注意し鮮やかさや輝きを求めますが、趣のある古い街では思い切ってモノクロ夜景も印象的になります。点光源に圧倒的に強いAXコーティングが施されており、夜景撮影時における街灯などの強い光にもゴーストが出にくいので、夜景愛好家にはもってこいのレンズですね。夜の街歩きが楽しくなります。

焦点距離:15mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:64

超広角ならではの撮影技法として、パンフォーカスを使うという事も考えられます。極端な至近距離から遠景まで、全ての風景にピントを合わせる事も、広角レンズならではの作風ですね。さらに周辺までディストーションのないクリアな画像が得られるのは、撮り直しが出来ず時間の限られた旅写真ではとても有利です。

エストニアを歩く

首都、タリンです。古い街には教会があり、多くは登れます。ここにもそんな展望ポイントがあります。旧市街は赤茶色い屋根で情緒に溢れ、雨上がりの空は濡れた屋根を反射させます。秋を感じ始めたこの季節の風は心地よく、バルト海から吹き流れる風を受け、塔の上でも時間を忘れてしまう素晴らしい光景が広がります。

焦点距離:15mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:64

さすがにキツいか!と思えるような鋭い逆光。しかしSP 15-30mm F/2.8 G2はそんな心配はご無用だった。通常このような逆光ではゴーストが当たり前のように出る為に、ズームや絞りなどを駆使しながらゴーストの目立たない位置を探ります。結構それが時間のかかる作業になり、シャッターチャンスを逃すこともあるのですが、今回は問題なく雲間からの一瞬の突き刺さるような光を捉えられました。

焦点距離:15mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/30秒 ISO感度:64

短い夏が終わり枯葉舞う路地裏を散策していると、何気無く置かれた自転車までもがアート作品に感じられます。超広角は、超広角と感じさせない撮り方が出来ると、遠近感が心地良くなりますね。


焦点距離:15mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/5秒 ISO感度:64

雨で濡れた石畳と煉瓦造りの建物を、カラーとモノクロで撮影しました。石は乾いている時と濡れた時では全く見え方が違います。カラーは石の質感や濡れた艶やかさをよく表現し、モノクロは白黒グレーのみの表現になりますが、とても印象的な作品に仕上げてくれました。

焦点距離:30mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:64

初秋の木漏れ日は柔らかくて素敵でした。街そのものが芸術作品のように美しく、木漏れ日一つが良いアクセントになりメルヘンの世界に導いてくれそうです。ここではあまり広角にし過ぎず、通りの雰囲気を大切にしました。

焦点距離:27mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:64

石造りの街は、カラフルな壁や可愛い看板、ただの看板や門扉でさえお洒落に見えてしまいます。

焦点距離:15mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:64

旅の途中で見かけると必ず撮ってしまう物の一つ。読めない標識。

焦点距離:15mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/13秒 ISO感度:64

お国柄や特徴がよく分かるのも標識の面白さです。これは暗い室内の階段にあった物ですが、強力な手ブレ補正機構「VC」でミス無く撮れました。

焦点距離:15mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:64

広角接写の魅力は背景の表現が豊かにできるという事でしょう。鳥のアップのみを撮影しても、状況が分からなければ日本でも外国でも同じ。このシチュエーションで!?という驚きを感じさせる事ができるのは、大きなメリットだと思います。最短撮影距離が28cmと短いので広角接写が簡単にでき、撮影の幅がグッと広がりますね。

TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)を使用してみて

初めてこのレンズを持った時は、初代と同じく「重い!大きい!」という印象。しかし撮影を始めるとフルサイズ一眼レフを使う私のカメラとはバランスが良く、かえって安心感が湧いてきていました。撮影時に機材への信頼や安心して使えるかどうかというのは、プロにとっては最も重要です。ミラーレスが主流になりつつある現代において、このような硬派な機材は貴重です。未だにミラーレスを主力にしていない私にとって、とても頼もしい右腕になりました。

画質に関しては文句無しでしょう。フレア、ゴースト、解像感、色抜け、階調、絞り解放からの画質、歪み、すべて合格点以上の素晴らしい仕上がりになっています。純正レンズ信者の方は、一度使ってみると良いでしょう。きっと驚きますよ!

広角レンズにおいて一般的に考えられているマイナス要素は、「ボケない」「歪む」「絞り解放で使えない」などだと思うのですが、それらは全てクリアされているのがこのレンズなのです。正直驚きました。しかも超強力な手ブレ補正まで付いているじゃないですか!

これから高性能な超広角レンズ、広角ズームを考えている方は、絶対に候補に入れるべきだと思いました。タムロンの本気、体験してみてはいかがでしょうか。

写真家プロフィール

藤村 大介 Daisuke Fujimura

写真家。1970年香川県生まれ。誕生日が6月1日写真の日で、まさに写真の申し子!と言われることも。日本写真芸術専門学校卒。有限会社フォトグローブ(植村正春写真事務所)でのアシスタントを経て独立。世界500都市以上を取材し、世界遺産や街並み、名所旧跡、夜景などを撮影。「Simple & Positive」がモットー。

世界の夜景撮影においては第一人者。2002年に大手のギャラリーでは日本初となる世界の夜景のみでの個展を開催し夜景ブームを引き起こす。2018年8月には世界最大級となる夜景の個展を香川県坂出美術館にて開催し、大きな話題を生んだ。作品は欧米でも展示され、評価が高い。作品創作に力を注ぐ傍ら日本の写真文化発展のために、全国で講演やセミナー、写真教室などを通じ、撮影技法や処理だけではなくマナーや考え方、権利など、写真に関する心構えなども教えている。著書に「世界のまがとき、カメラ旅/日本写真企画」。
(公社)日本写真家協会、日本旅行写真家協会 正会員
日本大学藝術学部写真学科講師
玉川学園講師
ニコンカレッジ、アカデミーX講師
ウィステリアフォトクラブ主宰

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高画質の頂きを求めて。生まれ変わる渾身のフラッグシップ。