写真家 阿部 秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る「マルタで料理写真」第5回

タムロンのワイドズーム10-24mm F3.5-4.5Di ll VC HLD (Model B023)は、日常の記録写真を撮るのにも最適です。旅行の楽しみのひとつに食事があります。スマホが一般化してからレストランで料理の写真を撮っている人を見かけることが多くなりましたが、カメラならもっと美味しそうに撮ることができます。しかも10-24mmは手ブレ補正のVCを備えています。レストランは暗いところも多いので、手ブレ補正はぜひともほしい機能です。

マルタ島にはマルタ料理もあり、代表はうさぎの煮込みです。うさぎも美味しいですが、えー!うさぎ、と思われる方はイタリアンがおススメです。イタリアは近いのでマルタへ移り住んだ人も多く、美味しいイタリアンがたくさんあります。Bugibbaという街に気に入って2度行ったAcqua Marinaというレストランがあるので、その店の料理を見てください。

料理を撮るのには何mmで撮るのがいいでしょう。10-24mmは画角変化が大きいレンズだと第1回目に書きましたが、実は10mmでも24mmでも撮れます。より立体感があるように周囲まで含めて写したければ10mm側、料理だけをあっさり撮りたければ24mm側を使うといった使い分けです。

一枚目の写真( 焦点距離:11mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:200)

この写真は11mmです。パンにざく切りのトマトとオリーブオイル、ニンニクなどを絡めて載せたイタリアの前菜です。11mmなので画角が広くテーブル全体をカバーできています。トマトがキラキラ光って見えるのは、この日は天気がよく外光が溢れるように入っていたからです。

焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/20秒 ISO感度:800

同じ料理ですが、別の日に24mmで撮りました。この写真の方がサラッとしたイメージです。この日は奥のテーブルへ座ってしまったので外光があまり届きませんでした。トマトがキラキラしないのはそのためです。料理の撮影では座る場所は大切です。

焦点距離:13mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:800

Acqua Marinaの店内から外へ向かって写した写真です。焦点距離は13mmです。歪み(ディストーション)が抑えられているので嫌味がなく写されています。料理だけでなく店内も撮っておきましょう。

焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/13秒 ISO感度:800

ファインダーをのぞくとシャッター速度は1/13秒です。手ブレ補正機構「VC」のおかげでブレずに撮れました。ところで、なにを料理したものでしょうか。いまひとつわかりませんね。そうなんです。和えた料理はわかりにくいときが多いのです。オリーブのような丸いものがいくつか入っていて、味付けはトマトらしいことはわかります。

焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/10秒 ISO感度:800

こんなときはお皿を回してみましょう。素材の特長的な部分が見えてくることもあります。ほら、タコの吸盤が現れました。外国ではタコを食べないと思われがちですが、イタリア、スペイン、ポルトガルではタコを食べます。マルタもタコが獲れるのでタコの煮込みはマルタ料理です。

焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/6秒 ISO感度:800

メインが運ばれてきました。手前はフライの盛り合わせです。イカとイワシのような小魚です。奥の料理までピントが合っていません。これは広角であってもアップにするとピントが合う奥行きが浅くなってしまうからです。ピントの合う奥行きを深くするには絞り込めばいいのですが、今の撮影条件はISO感度800で、シャッター速度は 1/6秒と遅いです。VCを備えていても、これ以上は手ブレを考慮すると絞り込めないのです。

焦点距離:11mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:320

慌てることはありません。1枚に収めようとせずに2枚に分けたらよいのです。奥の料理の丸く平べったいのはラビオリです。普通のラビオリよりかなり大き目です。これはマルタ料理です。シーフードもたくさん載っています。素晴らしい美味しさでAcqua Marinaの看板料理です。

焦点距離:11mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:500

10-24mmの最短撮影距離は0.24mと短いのでもっと近寄ることもできます。近寄ればそれだけ迫力は出ます。好みに応じて撮影距離を決めてください。ですが、あまり近寄り過ぎてうっかりレンズが料理に付かないように気をつけてください。防汚コートを採用しているのでオリーブオイルも綺麗に拭き取ることができますが、レンズは汚さないことが一番です。

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:180

帰るときにAcqua Marinaのご主人Carloさんが店の前まで見送ってくれました。優しい笑顔です。人柄の良さが料理に反映されています。美味しいのもうなづけます。24mmはこんなシーンでもピッタリの画角です。

レストランで料理を撮るときに心がけたいことは、ほかのお客さんへの気配りです。席から立ち上がって写したり、ストロボを何度も発光させるのは控えたいものです。そもそも料理の写真を撮るのにストロボは必要ありません。昼間なら窓際の席へ。夜なら照明のしっかり当たっている席に座りましょう。

【連載】写真家 阿部秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る全6回

写真家プロフィール

阿部 秀之 Hideyuki Abe

東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。タムロン宣伝課を経て、86年よりフリー。ヨーロッパの風景、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フリーになると同時にカメラ専門誌にも執筆をはじめる。カメラグランプリ選考委員を87年より歴任。

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