写真家 阿部 秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る「マルタの猫」第4回

マルタ島は日本ではそれほど有名ではありません。ただ、ここ数年で一部の人に知られるようになりました。長年に渡って英国領だったのできちっとした英語を話す方が多く治安も良いので、日本の女子大生の間では留学先として人気が出てきました。

またマルタの猫と聞いたらどうでしょう?「はっ!」と思い浮かんだ方もいるのでは。

写真家の新美敬子さんが同名の写真展を開催し、写真集も出されています。そうです。マルタはノラ猫で有名な島なのです。ノラ猫を見に来るのがマルタへ来る目的だという人も多いようです。私は特に猫好きというわけではありませんが、散策中に撮れた写真を見ていただきたいと思います。

一枚目の写真( 焦点距離:24mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100)

海岸通りを歩くと目に留まる大きな猫のオブジェがあります。よく見ると右目は怪我をしています。そうです。ノラ猫のオブジェなのです。ここは公園になっていていくつものノラ猫の住処があり、その多くはボランティアの人たちによって管理されています。

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:100

中にはとても可愛らしい家のようなデザインのものもあります。犬小屋ならぬ猫小屋です。中をのぞいてみましたが、残念ながら外出中でした。マルタ島のあちこちにこうした猫小屋があります。

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/50秒 ISO感度:100

猫は島中のどこにでもいますが、やはり海辺の方が多いように思います。海岸近くの道を散策していると一匹の猫がドアの中に入りたそうにしていました。この家の飼い猫かなと思いましたが、首輪もしていないのでノラ猫でしょう。

焦点距離:22mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/60秒 ISO感度:100

「中に入りたいの? 入れないねぇ」と声をかけるとひっくり返って甘えて見せます。マルタの猫はまるで自分たちが観光資源のひとつに含まれているように感じているのかもしれません。そうでなければこんなに愛想よくできないでしょう(笑)

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/50秒 ISO感度:100

カメラを近づけるといきなり立ち上がりました。タムロン10-24㎜のAFは速いので急な猫の動きにも対応できました。ノラ猫にしては毛並みもよく美しいです。毛の質感がよく表れています。もしかしたら飼い猫なのかもしれません。

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:100

いきなりレンズをめがけて足早で近寄ってきました。後ずさりをしながらシャッターを切りました。撮影距離が短く猫も私も動いているので手ブレしてしまうところですが、手ブレ補正機構VCのおかげでギリギリ写し止めることができました。

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/80秒 ISO感度:100

近くに寄ってきてもモデル代がもらえないとわかると、猫はクルッときびすを返して走り去っていきました。少しも振り返らないところに潔さを感じます。

焦点距離:12mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:100

泊まっていたホテルの近くの小さなスーパーマーケットにもノラ猫が2~3匹住み着いていました。買い物に行く度に会えるのを楽しみにしていました。逃げることもなく床で寝ていることが多かったです。この写真はクッキリと写しだされた猫の影が気に入っています。耳のところが可愛らしいです。

焦点距離:24mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/40秒 ISO感度:3200

スーパーマーケットの猫は夜になると門番のようにも見えました。ノラ猫ですから番などするわけはなく、友達の猫が来るのを待っていたようです。一眼レフの高感度ISO3200とタムロンの手ブレ補正VCがあれば夜のスナップも楽しいです。

焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/160秒 ISO感度:100

おまけです。マルタの犬です。ご存知でしょうか。マルチーズはマルタ島が原産の犬なのです。しかしマルタでマルチーズはあまり見かけませんでした。写真は10mmで思い切って近づいて撮っています。超広角では被写体を大きく写しつつも背景を広く取り入れることができます。被写体だけでなくその場の様子も細かに見せることができるのが魅力です。

【連載】写真家 阿部秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る全6回

写真家プロフィール

阿部 秀之 Hideyuki Abe

東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。タムロン宣伝課を経て、86年よりフリー。ヨーロッパの風景、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フリーになると同時にカメラ専門誌にも執筆をはじめる。カメラグランプリ選考委員を87年より歴任。

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