写真家 阿部 秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る「超広角ズームでもVCはありがたい」第3回

「望遠は手ブレしやすく、広角は手ブレしにくい」古くからそういわれています。そして多くの人がそう信じていると思います。でも、本当はちょっと違うのです。実際には望遠でも広角でも手ブレは同じように起きています。ただ、望遠よりも広角の方が、手ブレが目立ちにくいだけです。大きく拡大すれば広角だって手ブレしているのが明らかになります。
手ブレしにくいシャッター速度の目安として、焦点距離分の1秒(1/焦点距離 秒)があります。10-24㎜なら10㎜側は1/10秒、24㎜側は1/24秒が分岐点で、シャッター速度がそれより速ければブレない、遅ければブレるという基準点です。ただし、この値は35㎜サイズなので、APS-Cの場合は焦点距離を1.6倍に換算する必要があります。10mm側は1/16秒、24㎜側は1/38秒になります。でもタムロン10-24mmは手ブレ補正のVC機能を搭載しているので、シャッター速度で2~3段程度は遅くなってもカバーしてくれます。もっともカメラをしっかり構えて自らが手ブレしないようにすることは大切です。
一枚目の写真( 焦点距離:10mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:1800)
ヨーロッパを旅行すると大きな教会や寺院に遭遇します。ストロボを使わなければ内部の撮影をしてOKというところも多いです。マルタ島ヴァレッタにも聖ヨハネ准司教座聖堂という豪華絢爛な聖堂があります。なんとカラヴァッジョの絵が2点も展示されています。さすがにカラヴァッジョは撮影禁止なのですが、それ以外はストロボを使わなければ撮影できます。とても広いので10mm側が役に立ちます。シャッター速度は1/15秒です。
焦点距離:10mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:1800
これは上記を拡大した写真です。どうですか? 少しもブレていなくクッキリ写っているでしょう。手ブレ補正機構VCのおかげでキリッと写っています。ISO感度は1800です。最新の一眼レフは高感度ノイズが少ないので大伸ばしにも心強いです。
焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:7200
同じく聖ヨハネ准司教座聖堂です。天井や壁の装飾が見事なので、つい上ばかり見上げてしまいますが、床にも注目しましょう。象嵌(ぞうがん)細工といって色のちがう石を組み合わせて絵や文字を表しています。これも素晴らしいで
焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:125
こちらはヴァレッタのカトリック教会です。ここのドームもとても広く美しいです。静かで荘厳な雰囲気です。通常は祭壇を中心にフレーミングすると思います。写真を撮っている人はたくさんいます。教会なので入場料は必要ありません。なので私は撮らせてもらったお礼のつもりで少しお布施をおいていくようにしています。
焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:200
ドームを中心にも撮っておきました。天井のタイルひとつひとつが鮮明に写っています。やはりシャッター速度は1/15秒です。VCが効いていますから心強いです。
焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/15秒 ISO感度:1400
ヴァレッタにある国立考古学博物館です。いくつかの展示品を除いて内部の撮影が許可されています。タムロン10-24㎜はディストーション(歪み)がないので、室内の撮影でも得意です。大聖堂、教会、博物館といえば広く歪まないで写せ、手ブレ補正機構VCが効くタムロン10-24㎜で決まりです。
焦点距離:17mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/25秒 ISO感度:8000
さて、夜の街に繰り出してみましょう。以前は夜景を撮るといったら三脚の使用が絶対でした。三脚を持っての移動は大変です。タムロンのVCがあれば夜でも気軽にスナップ撮影ができるのです。
焦点距離:24mm 絞り:F/4.5 シャッタースピード:1/20秒 ISO感度:800
繁華街を離れた住宅街の教会です。讃美歌が聴こえたので半分開いたドアから中を覗くとミサが開かれていました。レンズを24㎜にして、邪魔にならないように静かにシャッターボタンをレリーズしました。ホワイトバランスをマニュアルの晴天にして赤味が強く出るように設定しています。
いかがでしたか? タムロンのワイドズーム10-24㎜と高感度ノイズが少ないデジタル一眼レフがあれば、旅先で撮影できる場所も時間もグーンと広がります。
重たい三脚は星を写すような長時間露光用にとっておいて、気軽にスナップ撮影を楽しみましょう。
- 第6回「ワイドズーム、その魅力」(最終回)
- 第5回「マルタで料理写真」
- 第4回「マルタの猫」
- 第3回「超広角ズームでもVCはありがたい」
- 第2回「超広角ズームで撮りたい被写体と画面構成」
- 第1回「10mmと18mmの違い、10mmと24mmの使い分け」
写真家プロフィール

阿部 秀之 Hideyuki Abe
東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。タムロン宣伝課を経て、86年よりフリー。ヨーロッパの風景、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フリーになると同時にカメラ専門誌にも執筆をはじめる。カメラグランプリ選考委員を87年より歴任。