写真家 阿部 秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る「画角のちがい、使い分け」第1回

タムロンの最新ワイドズーム10-24mm F3.5-4.5Di ll VC HLD (Model B023)を持ってマルタ島へ行ってきました。マルタ島は世界史に出てきたマルタ騎士団が有名ですが、あまり馴染みにない国です。地中海に浮かぶとても小さな島ですが、いまは日本人の旅行者も増えつつあります。前にも24-70mm(Model A007)を持って訪れたことがあって、つぎに来るときに超広角レンズを持ってきたいと思っていました。

APS-Cの一眼レフで使われている標準ズーム18-55mmは、焦点距離は37mmも変わりますが、画角の変化量は対角線で47.1°です。これに対して10-24mmは焦点距離は14mmしか変わりませんが、画角の変化量は対角線で48.4°で、とても大きいのです。この画角変化量の差が超広角ズームの魅力です。

一枚目の写真( 焦点距離:10mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:100)

さぁ、これから6回にわたってマルタ島を探索してみましょう。

10mmと18mmのちがい、10mmと24mmの使い分け

焦点距離:18mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:100

まずは10mm(最初の写真)と18mm(この写真)の印象のちがいを見比べてください。焦点距離はわずか8mmしかちがいませんが、画角は33.2°もちがうのです。この差が10mmの迫力を生み出します。マルタ島の海はとても綺麗です。このグリーンの海を撮りたかったのです。

焦点距離:11mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100

街を離れて小一時間ほどバスに揺られてみましょう。街よりもさらに綺麗な海と空が広がります。超広角があれば、海と空と雲だけでも写真が撮れます。僕が若いころに憧れていたある写真家は「海と空があって雲が少し芸をしてくれたらいいんだよ」と言っていました。まさにこれなんです。

焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:100

超広角だからといって特別な被写体を探すことはありません。目の前にある光景をそのまま撮ればいいのです。網を手直しする人もいれば、語り合う人たちもいます。その向こうに綺麗な海。10mmの広い画角はそのすべてを1枚に収められます。

焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:100

焦点距離:24mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100

ただし超広角10mm側ばかりを使うわけではありません。画角が広いということは、ひとつひとつのものが小さく写って伝わりにくくなるということでもあるのです。そんなとき助けてくれるのが24mm側です。

写真は首都ヴァレッタから客船埠頭越しにその奥へ続くスリーシティーズの街を写したものです。10mmでは奥の街のようすは小さくてよくわかりませんが 、24mmでは奥の街が大きく写るのでようすがよくわかります。


太陽がよくあたっているとき

焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:100


日陰になったとき

焦点距離:10mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/400秒 ISO感度:100

超広角の楽しさが伝わってきたでしょうか。縁遠いと思われがちな超広角ですが、ズームだととても使いやすくなります。

ところでビギナーが超広角で撮るときに気をつけたいことがあります。それは太陽の光です。順光、半逆光、逆光とどんな光でも楽しめますが、雲が多い日はポイントが日陰になっているときもあります。広く写せてカッコイイ!と感激していると光線が変わったのに気が付かないことあります。写真は太陽がよくあたっているときと、雲に入って日陰になったときです。ぜんぜん違いますよね。

【連載】写真家 阿部秀之が超広角ズームレンズ10-24mmでマルタ島を撮る全6回

写真家プロフィール

阿部 秀之 Hideyuki Abe

東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。タムロン宣伝課を経て、86年よりフリー。ヨーロッパの風景、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フリーになると同時にカメラ専門誌にも執筆をはじめる。カメラグランプリ選考委員を87年より歴任。

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