【.Frame】special-05 総集編 ハービー・山口×TAMRONスナップポートレート

写真家とタムロンレンズをつなぐギャラリー型の連載コンテンツ「.Frame」第二弾、写真家ハービー・山口氏によるスナップポートレート編、全4回が終了となります。撮影・執筆を担当いただきましたハービー・山口氏に、今回の連載を振り返り、本編サイドストーリーとしてインタビューした内容をまとめました。撮影中のオフショットを交えながら、ハービー・山口氏がタムロンレンズを通じて表現する、あたたかな光を集めたモノクロの世界を語っていただきました。

今回の連載「.Frame」を振り返って

写真というのは35mm、2:3、とカメラによって違いますが、いろいろな「フレーム」があります。あえて「フレーム」というのは意識していませんが、どう切り取るかによってテーマが決まります。例えば題材がレストランだとすると室内全体を撮るのか、窓も入れて特徴のある風景を撮るのか、お客さんの表情を撮るのかというところでも違ってきます。

写真を撮るときに単焦点レンズにしろ、ズームレンズにしろ、撮りたいタイミングで最適なレンズをつけていて、かつ自分の立ち位置もよい必要があり、スナップ写真はそういう意味で難しいです。その瞬間がない時もあるので、運もあります。フレームという意味で共通しているのは、歩道で人物を撮るときは必ず向こうまで見えていること。見通しが良い道や川、樹木の列など長く続いているモチーフに希望を感じることができると思っています。写真家によって背景は白バックで撮影して、その人物の人格をすべて写そうという考え方もありますが、私は川や道が続いていることで、希望や明日へ続いていることを連想させているんです。

人物を撮影する際に靴まで入れるとリアリティが出ると思っています。ポートレートの場合、靴なんて誰も見ないだろう、だから何でも構わないと思う人と、見えないところこそに気を配るという人と性格が分かれます。テレビを見ていて、ある俳優が子役時代にTVへ出演していたとき、現場スタッフを見極めていびっていたというエピソードを披露していました。どうやって見分けていたのかという問いに、「きれいな靴を履いている人は選ばず、黒く汚れた靴でかかとを踏んでいる人を選んでいた」と答えていたんです。それが全く自分と同じ考えで、自分だけではなかったんだと思いました。

写真には横位置・縦位置とありますが、横位置の場合、隣の人や電車も入るので状況を写す、縦位置の場合は背景が入らないので本人の本質を写すというのを持論にしています。もちろん、例外はありますが。そうやって撮影することで、自分の希望にもつながっている、というのが自分のフレーミングに対する考えです。偶然性のある写真は面白く、ふとした写り込みやラフな構図など、撮影するときに厳格なことを意識しない方がいいのかもしれないと思います。自分の写真を振り返ってみると持論を体現していることが分かります。

瞬間を切り取るハービーさんのスナップポートレートとは

我々が一番人に会ってうれしいと思うのは、真心が感じられたと思ったときや本音を知れたとき、また、それが出た瞬間です。モデルさんの造り笑顔でも写真は撮れますが、造り笑いは表面上のものです。それに悲しい顔よりは明るい顔の方が心は動くと思っています。例外的に、自分が撮影した3.11の写真は泣いている人も写していますが、それはその悲しみを乗り越えていってほしいという思いを込めているからです。表情というのは写真家が料理をすることでポジティブな方向に誘導することができる。3.11の涙を流した表情ですら、頑張るんだよ、だって生きているんだからと、ポジティブな方向に引っ張っているんです。

私は寺山修司さんのポートレートを撮影してきましたが、彼の笑顔を写せたのは自分だけではなかったかと思っています。寺山さんにロンドンの写真を見せた際に、こんな写真がとれるならプロになれるよと声をかけてもらったことを覚えています。寺山さんとロンドンの街を歩きながら役者の表情について話したときのことです。「劇はリハーサルと本番があり、どんないい役者でもリハーサルの方がいい演技をする。それは一回幕が開くと観客席の田舎から出てきた母親や恋人を意識して、頑張って良いところを見せすぎようとしてしまうから。リハーサルはそれがないので役者の調子がいい。役者もプロのため、本番でそれを隠そうとするのが見えてしまう。でも、その差は筋肉1本か2本の差なんだ。」と言っていたんです。そこで、寺山氏に「筋肉1本の差なんて私には到底見分けがつきませんよ。」というと、「君の写真はそこが写っているからいいんじゃないの。」と言ってくれたんです。これは人物写真を撮る者としては誉め言葉で、自分自身がそこを意識してシャッターを切っていたんだと初めて感じた瞬間でした。

タムロンレンズを使用してみて

私が使うのは主に単焦点が多いですが、今回使ったのはズームレンズのTAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)。使ってみると、とっさの時の対応力がよく、また、「寄る」ということで撮影範囲が広がって、ミスショットが少なくなったと思います。単焦点の際は、被写体をフレーミングする際に自分が動かなれければならないので、時間のロスはどうしてもあるんですね。28-75mm F/2.8は機動力が高く、軽量でありながら解像力もある。昔は「安いものにいいものはない」という考えもありましたが、タムロンレンズは使いやすい製品を出しているということを強く感じました。ソニーカメラとのこのレンズの組み合わせもとてもよかったです。

今後について

撮影テーマとしては、海外も含め幅広い人間を撮って、少しでもその写真を広げていきたいと考えています。より説得力のある強い写真を撮ることで、人の生きる喜びにつなげたいと思います。今まで若者からお年寄りまでたくさんの写真を撮ってきましたが、今後は新しい淋しさ、新しい時代への取り残され感、戦争がないからこその平和ボケ、若者群像など、新しい発見をこれからもしていきたいです。皆さんの心の中を観察したい…堅すぎたでしょうか?笑

最後に、人間の表現力は多い方が良いと思っていて、言葉だけでなく、表情というのも表現の一つで、いろいろな表現を重ねています。写真もその表現の一つとして捉えていて、高度な表現になるほどよいと思っています。そのために、写真に関係ないこともどんどん写真に取り込みたいと思っていて、写真を知っている人だけに届くものではなく、そうでない人たちにも響く写真を撮りつづけたいと考えています。
人それぞれに得手不得手があり、自分にとっての表現を見つけて幅広く、ステップアップしていきながら撮り続けられたらいいですよね。

.Frame ハービー・山口氏のスナップポートレートページ

まとめ

写真家とタムロンレンズをつなぐギャラリー型の連載コンテンツ「.Frame」スナップポートレートの総集編をお届けしました。ハービー・山口氏のフレーミングで意識していること、写真で表現したいことなどを知り、もう一度各連載を読み返すと違った見方となるかもしれません。次回の連載もどうぞお楽しみに。

写真家プロフィール

ハービー・山口 Herbie Yamaguchi

写真家 1950年東京出身。大学卒業後ロンドンに渡り10年を過ごす。その間劇団の役者を経て写真家になる。アーティストから市井の人々を被写体とし、常に希望あふれるスナップポートレイト撮影をしている。瑞々しい作風を好むファンは多く、最も親しまれている写真家の一人である。写真の他、エッセイ執筆、ラジオDなど活動は多岐にわたる。2011年度日本写真協会賞作家賞受賞。

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28-75mm F/2.8 Di III RXD(Model A036)

ミラーレスに新たな風を。これまでにない美しさとやわらかなボケ味。目指したのは高画質と小型軽量の両立。世界を鮮やかに写す、フルサイズミラーレス対応、F/2.8大口径標準ズームレンズ。