【.Frame】Vol.10 総集編 TAMRONポートレート×大村 祐里子、黒田 明臣、鈴木 悠介

写真家とタムロンレンズをつなぐギャラリー型の連載コンテンツ「.Frame」全9回が公開され、約半年間にわたってお送りしてまいりましたポートレート編は終了となります。撮影・執筆を担当いただきました3名のフォトグラファーに、今回の企画を振り返り、本編サイドストーリーとしてインタビューした内容をまとめました。撮影中のオフショットを交えながら、3名のフォトグラファーがタムロンレンズを通じて表現する世界観について語っていただきました。

今回のポートレート連載企画を振り返って

大村:
ポートレートで連載をすることがあまりなく、1回きりで完結するものが多かったので企画自体が新鮮で、撮影時にその後のことも考えながら撮影することも新鮮でした。ずっとひとりのモデルさんを撮影してきたので、最初と最後でまた違った空気感を出すことができたのではないかと思います。撮り続けることで見えるものもあるんだなということを今回の企画で改めて感じました。3本の記事を「トーキョーグラデーション」というタイトルでくくりましたが、季節感が出ないかなと思いましたが、意外と見過ごしている東京の季節感に触れることができてよかったです。

黒田:
今回の連載企画にあたり、事前に3つテーマを組み、どんな作品にするかなどある程度決めてから臨みました。レンズメーカーのコンテンツではありましたが比較的自由に撮影できたこともよかったです。「作品として」掲載するという趣旨が非常にやりやすく、今回の撮影では自分的にも納得度の高い作品も撮れました。他ではあまりない取り組みでしたので、連載を見ている方々にこの撮影の「自由度」がどのように映っているのか、反応が非常に気になりますね。

鈴木:
私自身、普段の作品からするとレンズの作例などには全く向いてない写真ばかりだと思っています(汗)今回レンズメーカーさんの仕事は初めてだったので、担当者の方とは作品の方向性について何度か話し合う場もありました。そんな中、レンズのことを考えて本来の企画の趣旨からはずれて作例っぽくなっていくのも嫌だなと思い、メーカーサイトのコンテンツに掲載する作品として挑み続けてきました。よいチャレンジだったと思います。自分の作品にタムロンのレンズを使い、どのように落とし込んで作品として仕上げているのかを見てもらって、レンズ選びの参考にしてもらえたら嬉しいなと思います。

今回の連載では1つの記事に10~15枚の写真で構成されています。組み写真として見せる構成で気にしている部分はどんなところですか?

大村:
写真の構成に関しては普段から組で考えているので、今回の企画自体はやりやすかったです。事前に写真の構成を考え、写真をみていくリズムやモデルさんの顔の向きなどを考えています。特に今回のモデルさんは左右で顔が全然違うので、15枚同じ向きというのはつまらないと思い、寄り引きがある中でワンパターンにならないように気を付けました。グラデーションというタイトルをつけたこともあり、1つの記事で最低3か所の撮影地を巡り、時間の経過なども意識した構成にしました。

黒田:
写真の構成や流れは普段からあまり考えないのですが、今回は事前に何を撮るか考えをまとめていたのに、撮るときには全部忘れていました・・・(笑)
すべての撮影が初めてのロケーションだったので、行き当たりばったりで、決めていたのは衣装と情景くらいだったのですが、振り返ってみると事前に決めた通りになっていて、深層心理というか人類の神秘を感じました・・・・・・(皆、苦笑)

鈴木:
僕もあまり構成などは決めないタイプですが、ストーリーのある写真で流れをつくるのが好きなので、15枚構成は楽しかったですね。今回は事前に「夏から冬にかけて季節をまたいで移り変わりを表現する」というテーマのある撮影だったのでモデルさんにもそのイメージを共有し、構成しやすかったです。テキストも内面というかストーリーの世界を表現するような文章だったので(うん、ミステリアス(大村)、あの感じを1枚で表現するのはちょっと難しかったと思います。15枚ぐらいあって、ちょうどよかったと思います。

「フレーム」というタイトルにちなんで、フレーミング・構図で気にしている部分はどんなところですか?

黒田:
これを言語化するのは非常に難しいですね。日の丸構図とか三分割構図といった良いとされる構図はけっきょく最大公約数的な最適解というだけで、人類の知恵みたいなものじゃないですか。我々も撮っていて、その最適解が心地よいと思うケースは非常に多いと思いますけど、それ前提に語るのはナンセンスだという気がしています。

大村:
べたな話に聞こえるかもしれませんが、縦と横を同じぐらいの比率で撮ろうと決めていました。WEBの仕事だと横位置が多く、雑誌などでは見開きがあるので日の丸構図は避けたり、左に人を寄せたりとしていました。ですが、.Frameではそこも自由に、縦位置も日の丸構図も入れています。

それと、今回24-70㎜を使ったので、どうしても普段からの癖でワイド端・テレ端ばかりになりがちなので中間を使おうと意識していました。60㎜とか!ズームの面白さって間の焦点距離だと思うので、そこを使おうと意識していました。構図というか画角の話かもしれません。

鈴木:
僕は逆に単焦点を使っていたので、普段使っている単焦点をタムロンレンズに置き換えて自然に撮っていました。画角という点では、普段は作品撮りが中心なので、今回のお仕事ではバナーの写真には「余白が足りません…」みたいなことがありましたけどね…。意識しすぎずに撮影していた気がします。

作品制作をするにあたって、レンズをどのように選びますか?

大村:
気分ですね。動きたくない気分の時もあるし、切れ味がほしい時もある。カビだらけのレンズを使いたい時もあります、綺麗に撮れるとかではなく表現としてハイライトがば~っと滲んですごくきれいなんです。なので、その時の気分によって使い分けています。洋服とちょっと似ているかもしれませんね。仕事じゃなかったらそんな感じで気分でレンズを選んでいます。昔からそうやって写真を楽しんできていたので。レンズはその時の心情を表せるものですね。

黒田:
自分も一緒ですね、気分の割合は大きいです。言葉の問題かもしれませんが、レンズは「何を撮るのか決めるもの」だったり一言でいえば「スタイル」に近いのかなと思います。
このレンズはこんな特徴だということは把握できている前提ですが、そうすると撮れるものはレンズである程度決まってしまう。単純な話、焦点距離とか。ただ実際の撮影は撮るものを決めている上で、このレンズを使おうという順序になりますよね。結局それっていくつかの選択肢の中から気分が決めているということなのかなと思います。あとは、あえてレンズに使われるというのも好きですね。

大村:
私もレンズに使われるの好きですね。
それで新しい発見があったり、普段撮らないものに出会えるのが楽しいです。

黒田:
そうそう、結構面白いですよね。身を任せるというか。逆光に強いと言われたら、普段は撮らないけど敢えて逆光で撮ってみようという気になったり。それがスタイルというか、その時々でのスタイル(気分?)
レンズで何が撮れるか決まるので、どこまで能動的に選ぶか、身を任せるかだと思いますね。レンズはボディよりも撮影には重要な要素だと思います。
最近はボディもユニークなものが出てきていて、たとえば瞳AFなど、その機能を使うために合うレンズを使うということもありますが。レンズありきでもないし、作品ありきでもない。

鈴木:
レンズは気分というか自分の中でブームみたいなものがありますね。この時期これ使っていて楽しいとか、飽きちゃったからこれにしようかなとか。解像度がいいのはこのレンズとわかっててもあえて違うものを使ったり。マニュアルで合わせたつもりが合ってなかったりするのも良かったり。そんな感じで選んでいます。

タムロンレンズをつかってみて

大村
今回はSP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2を使いました。私が持つとだいたいのレンズが大きくみえてしまうのですが、70mm側まで伸ばすとやはり重心もあってぶれやすいです。なので、VCがついているところがすごくお勧めです。VCがなかったら、暗いシーンや室内などは避け、シチュエーションも限られていたと思います。2回目のお祭りのシーンとなども手持ちで撮影に行けました。それと、ズームレンズは単焦点に比べて画質が劣るというイメージがありますが、SPレンズに関しては満足できるものでした。ポートレートを撮影するにあたってはカリカリ過ぎない描写とボケのバランスが好きでした。

あとは、なんといっても防汚コートですね。第一回目が雨の撮影だったのですが、じゃんじゃん降っていて、その日に限ってクロスを忘れてしまったんです。普通ハンドタオルなどで拭くと拭きムラができてしまいますが、このレンズはサっと拭けてムラができないんです。以前TAMRONMAGで雪の撮影をしたのですが、その時もフードの中に雪が積もるくらいの撮影だったのですがさっと拭けて本当に助かりました。女性の方がアグレッシブな使い方することも多いと思うので、この防汚コートの便利さはもっとアピールすべきだと思います!

黒田:
今回のレンズだけでなくタムロンレンズはニュートラルなところ、コントラストがきれなところ、現像がしやすいところがいいですね。面白いのはカメラのせいなのか、ISOを上げると普通は色が落ちちゃうんですけど、800~1600まで上げても全然平気です。

ほかのレンズだとそうはいかないこともあります。髪の毛とかシャドウになりがちな部分が結構困るぐらいはっきり出ます。僕の2回目の記事は髪の毛に直射光が当たっていてチリチリしているんですけど、シャープネスをかけているわけではないんです。いい意味でコントラストが出ているんだと思います。

僕よりも鈴木さんの写真をみると、レンズの違いでいつもとはまた別の表現になっていると思います。光を忠実にとらえているというか、解像感の高いレンズだとパキっとしすぎてしまうのですが、いい感じですね。鈴木さんの2回目のブログでは暗いシーンが多かったのですが、すごくきれいに出ていてあれはむしろタムロンさんらしいですよね。

大村:
たしかにそうですね、単焦点のいい力がすごく出ていましたよね。

黒田:
僕の3回目のブログはISO800とかだったのですが、すごくフラットに色もしっかり出ていますね。いろんな意味でオールマイティーに使えるレンズだなと思いました。

鈴木:
今回の企画で初めてタムロンレンズを使いましたが、これまでの撮影同様違和感なく、自分が表現したい世界観が出せるレンズでした。35mm、45mm、85mmとそれぞれの特徴をつかみつつ、45㎜と85mmの出番が多かったように思います。レンズ全般、イメージ通りというかニュートラルでありながら少し癖もあって、それはそれでよかったように思います。3回目の時はハイライトやシャドー部などグラデーション幅の大きい写真が多かったのですが、きちんと階調のなだらかさが出ていたように思います。

カメラのダイナミックレンジもありますが、今回はレンズのおかげで階調の豊かさを表現できたかなと思います。また自分のように普段50㎜付近を使うことに慣れている人にとっては、45㎜をぱっと覗いた時の新鮮さはよかったですね。レンズを変えると見える世界が変わる、そんなところがよかったと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?3名のフォトグラファーによる写真家とタムロンレンズをつなぐギャラリー型の連載コンテンツ「.Frame」総集編、それぞれの作品作りに対する拘りや、レンズの捉え方、選び方など本編の中では公開されていないフォトグラファーの内面まで掘り下げてみました。総集編を読み終えてからそれぞれの作品をみるとまた違った印象になるかと思います。

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写真家プロフィール

大村 祐里子 Yuriko Omura

写真家。1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。有限会社ハーベストタイム所属。雑誌・書籍での執筆やアーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。

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黒田 明臣 Akiomi Kuroda

広告・雑誌・企業のビジネス写真を中心に活動する傍ら、セミナー・ワークショップ講師としても活動中。独学で学んだ撮影技法・RAW現像・ライティングに関するテクニックを、カメラ誌・書籍・ウェブメディアにも執筆中。2017年より商業写真家として活動開始。写真と前職のウェブエンジニアリング、両方のスキルを活かしてSNS時代に何か寄与できないかと模索している。

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鈴木 悠介 Yusuke Suzuki

ポートレートを中心とした独自の世界観を持つ写真家「MONOCOLORS」を展開、四季の移り変わり、今を過ごす営みの尊さ、そのどちらにも冷静に存在する美しさに魅せられ創作活動を続けている。作家性を活かした広告撮影やカメラ誌・書籍での執筆も行なっている。

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